第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)03

2016年5月28日(土) 10:00 〜 11:00 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:堀秀昭(福井医療短期大学 リハビリテーション学科理学療法学専攻)

[O-TK-03-6] 地域住民が運営する互助活動における介護予防の現状と課題

アンケート調査結果からの考察

高井逸史1, 黒田研二2 (1.大阪物療大学保健医療学部, 2.関西大学人間健康学部)

キーワード:地域住民, 互助活動, 介護予防

【はじめに,目的】多くの市町村では,現在のところ「介護予防・日常生活支援総合事業」の実施に向け準備を進めている。特に市町村が中心となり住民同士の支え合いの体制づくりを進め,住民自らが担い手となる地域の互助の力を高める取組みが喫緊の課題となっている。さらに介護保険制度のリハビリ関連サービスが終了後,要介護高齢者が孤立せず住み慣れた地域で自分らしく生きがいをもって暮らすには,互助活動といった地域の受け皿の整備が重要となる。今年4月より実施されている「地域リハビリテーション活動支援事業」の内容には,地域の介護予防を強化するために,住民運営の通いの場等にリハビリ専門職の関与を促進することが記されている。そのためにも理学療法士らは,自治会単位で行われている校区福祉委員活動(以下,校区活動と略する)といった互助活動を把握することが求められる。そこで本研究では校区活動のアンケートを実施し,介護予防の現状を把握し,課題を抽出することを目的とした。

【方法】本対象地域は大阪府堺市M区とした。M区は平成25年現在,人口15万3千人,65歳以上4万3千人(高齢化率28.1%)と,堺市内で最も高齢化が進んでいる区域である。M区には小学校区が19校区あり,それぞれに校区福祉委員会が組織されている。アンケート項目は,閉じこもり予防ならび介護予防に関連する「訪問活動」,「いきいきサロン」そして「地域リハビリ」について,①各取組みの担い手,②従事する人数,③対象者数(参加数),④課題・問題点などの回答を求めた。さらに「いきいきサロン」と「地域リハビリ」については,開催場所や実施頻度,実施内容,「地域リハビリ」では理学療法士による運動指導の派遣希望をたずねた。

【結果】19校区のうち16校区に回答が得られた(回答率84.2%)。「訪問活動」の担い手は,そのほとんどが民生委員で14校区,従事する人数は5~80名,対称者数は14~261名であった。「いきいきサロン」の課題・問題点については,「後継者がいない」が11校区,「参加者の固定」が9校区などであった(複数回答)。開催場所は校区内にある地域会館,開催頻度は毎月1~9回,開催内容は食事会,音楽会,お誕生会などであった。「地域リハビリ」に従事する人数は2~12名,対象者は8~60名,開催頻度は年間4回~毎月4回,回答のあった校区すべてが行政が委託する健康増進団体をはじめ,保健センターから講師派遣を要請していた。理学療法士による運動指導の派遣は,費用負担がなければ希望する結果となった。

【結論】校区活動アンケートの結果,各校区の取り組みにばらつきが大きいことが判明した。「地域リハビリ」については,外部から保健師など講師を招き住民同士が支え合う仕組みになっていないことが示唆される。今後理学療法士らは,住民ら同士が互いに健康増進を高められるよう,互助による介護予防をサポートすることが求められる。