第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)04

Sat. May 28, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:長野雅江(帝塚山リハビリテーション病院 リハビリテーション部)

[O-TK-04-5] 通所介護事業において,明確な目標設定の有無による介護度・利用料金の変化についての報告

磯谷隆介, 西啓太郎, 輪違弘樹 (株式会社エバーウォーク)

Keywords:目標設定, 介護度, 利用料金

【はじめに,目的】

介護保険制度の基本理念は,「自立支援」である。すなわち,高齢者が自らの意思に基づき,自らの有する能力を最大限生かして,自立した質の高い生活を送ることができるように支援することである。厚生労働省は日常生活に着目した利用者主体の目標設定を推奨しており,通所介護事業において自立支援に向けて目標設定を行っている。今回,目標を明確化することで介護度の変化・利用料金の削減が図れたため比較検討した。


【方法】

対象は,介護保険制度下における通所介護事業所において,介護認定の更新,目標を達成し自立された利用者よりH25.10-H26.9に通所されていた目標設定を明確にしなかった群(以下,目標不明確群)43名(男性13名,女性30名,79.5±7.8歳)とH26.10-H27.9に通所されていた目標設定を明確にした群(以下,目標明確群)48名(男性17名,女性31名,78.6±7.6歳)で介護度・利用料金の差を介護認定の更新前後で比較した。なお通所開始より3ヶ月以内に介護保険認定の更新があった者は対象から除外した。目標設定を明確にするためにSMARTの法則を用い,具体的かつ測定可能であり,達成可能であること,成果を重視して明確な期限設定にて目標を設定した。情報収集には情報伝達の基礎である5W1Hにて行った。利用料金の差は一ヶ月にかかるサービス利用料金として,各群間の更新前後の介護度,利用回数,利用料金の差をKruskal Wallis検定後,Steel-Dwass法にて多重比較検定を行った。


【結果】

介護保険更新前後の変化について,介護度は目標不明確群が改善17名(39.5%),維持10名(23.3%),悪化16名(37.2%),目標明確群は改善14名(29.2%),維持29名(60.4%),悪化5名(10.4%)となったが各群に有意な差が見られなかった(p>0.05)。利用回数は目標不明確群の更新前よりも目標明確群の更新後で有意な差が見られ(p<0.05),目標不明確群0.39±5.2(回/月)の減少,目標明確群1.84±3.18(回/月)の減少となった。利用料金は目標設定不明確群の更新前,更新後よりも目標設定明確群の更新後の方が有意に低く(p<0.05),目標不明確群3,517(円/月/人)の減額,目標明確群6,037(円/月/人)の減額となった。


【結論】

目標設定はSMARTの法則に則って明確に行うことにより統計学上介護度の改善が見られなかったものの目標を明確に行うことにより悪化の防止,介護度の維持改善の傾向がみられた。また,利用回数・利用料金の軽減につながった。これは,生活期において明確に目標設定を行うことが利用者様のQOL,負担料金の軽減につながると共に,介護保険制度が開始してから増大し続けている介護保険費の削減につながることが示唆された。