第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)05

Sat. May 28, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:小泉幸毅(小倉リハビリテーション病院 臨床サービス部)

[O-TK-05-1] 地域在住要支援高齢者におけるサルコペニア発生と骨格筋量との関連要因について

永井良治, 中原雅美, 下田武良, 松田憲亮, 高野吉朗 (国際医療福祉大学福岡保健医療学部)

Keywords:要支援高齢者, 骨格筋量, BMI

【はじめに,目的】サルコペニアの報告は地域在住健常高齢者に関するものが多く,要支援高齢者を対象とした報告は少ない。本研究は地域在住要支援高齢者のサルコペニア発生と骨格筋量との関連要因について検討することを目的とした。

【方法】6施設の協力を得て実施した。デイケアを利用している70歳から89歳までの要支援高齢者71名の内,57名(女性41名,男性16名),平均年齢79.9±5.2歳を対象とした。運動機能評価はSPPB,握力,膝伸展筋力,TUG,5m歩行速度を計測した。生活活動量の評価はLSAを計測した。栄養状態の評価はMNA-SFを用いた。身体組成測定はIn Body 720を用いて骨格筋量,体脂肪量,BMIを測定した。骨格筋指数は骨格筋量を身長の二乗で除したSMI(kg/m2)を算出した。サルコペニアの判断アルゴリズムはEWGSOPの基準を採用した。歩行速度を測定し,0.8 m/s以下であればSMIを測定した。SMIの減少があればサルコペニアと判断した。一方,歩行速度が0.8 m/s以上では握力測定を行い,握力低下があればSMIを測定した。SMIは眞田らのサルコペニア参照値より男性6.87 kg/m2以下,女性5.46 kg/m2以下とし,予備群は男性7.77 kg/m2以下,女性6.12 kg/m2以下とした。サルコペニア(予備群を含む)の測定値は,男女別に平均値と標準偏差(SD)より±2SD範囲外の項目について検討した。また全対象者のSMIと各測定値の関係を把握するためピアソンの相関係数,スピアマンの順位相関係数を算出した。さらにSMIと相関係数が高い項目を独立変数としてステップワイズ法により標準偏回帰係数ならびに決定係数を算出した。有意水準は5%未満とした。

【結果】サルコペニアと判断されたのは女性41名中2名(4.8%),男性16名中1名(6.2%)であった。男女別に平均値が-2SD以下の項目は,女性はSMIとMNA-SFであり,男性はSMIとBMIであった。BMI,LSA,MNA-SF,握力,膝伸展筋力を独立変数とした重回帰分析では,決定係数0.72であり,BMI,LSA,握力,膝伸展筋力が抽出された。

【結論】サルコペニアと判断された女性は,MNF-SFの平均値が2SD以下で低栄養状態であり,男性はBMIの平均値が2SD以下であることより,栄養性の二次性サルコペニアの可能性が高い。本研究における地域在住要支援高齢者のサルコペニアは少なく,SMIの平均値は男女とも基準値よりも高値を示したが,身体機能の低下は明らかであった。二次性サルコペニア予防のためには,SMIと相関関係がある筋力や生活活動量の向上を図るとともに,BMIを適切に評価する必要がある。本研究では,対象者が少なかったため,今後は対象者を増やし縦断的調査もおこない検討していく必要性がある。