第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)07

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:備酒伸彦(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)

[O-TK-07-1] 当院における65歳未満在宅脳卒中片麻痺者の生活空間に関連する要因の検討

粟飯原里美, 鹿島恵理, 松田直樹, 稲田亨 (進和会旭川リハビリテーション病院リハビリテーション部)

キーワード:生活空間, 在宅脳卒中片麻痺者, Life Space Assessment

【目的】現在,通院されている脳卒中者の内,約23%は65歳未満が占める(平成25年度国民生活基礎調査)。この比較的若い世代の脳卒中者が後遺症を抱えつつも,活力ある地域生活を継続するためには,高齢者以上に行動範囲,すなわち生活空間の狭小化の予防が重要である。生活空間の代表的な評価であるLife Space Assessment(LSA)は,活動量の頻度・自立度・活動範囲の定量化が可能な質問紙である。在宅脳卒中者におけるLSAに関連する要因は,これまでいくつか検討されている(田代ら,2014.福尾ら,2014)が,対象者は65歳以上の者となっており65歳未満の者を対象とした報告はない。よって,本研究では,65歳未満の在宅脳卒中片麻痺者と65歳以上の在宅脳卒中片麻痺者において,それぞれの生活空間に関連する要因を抽出し,65歳未満特有の要因を検討する事を目的とした。




【方法】対象は当院外来リハビリテーションに通院し,屋内歩行が自立している脳卒中片麻痺者69名とした。その内,65歳未満の者を若年群,65歳以上の者を高齢群に割り付けた。評価は1)LSA,2)快適歩行速度,3)Functional Reach Test(FRT),4)6分間歩行距離(6MD),5)modified-Gait Efficacy Scale(mGES),6)リハ・福祉サービス利用目的の外出頻度(リハ等外出頻度),7)運動習慣の有無,8)趣味活動の有無,9)車の運転の有無,10)就労の有無とした。統計学的解析は,若年群・高齢群それぞれ1)LSAと2~6)の項目でSpearmanの順位相関係数を算出した。また,7~10)は実施の有無でさらに2群に割付け,2群間のLSAスコアに対し,対応のないt検定を行った。LSAスコアを従属変数,独立変数をLSAスコアと相関を認めた項目および実施の有無による群間比較で有意な差を認めた項目とし,ステップワイズ法による重回帰分析を若年群・高齢群それぞれ実施した。有意水準は5%とした。




【結果】若年群は38名(年齢52.1歳±10.8歳),高齢群は31名(年齢70.8±4.4歳)であった。若年群ではLSAスコアと快適歩行速度,FRT,6MD,mGESとの間に有意な正の相関を示し,リハ等外出頻度との間には有意な負の相関を示した。車の運転の有無では運転実施群のLSAスコアが有意に高かった。また,若年群のLSAスコアに関連する要因としてmGES,車の運転の有無が抽出された。高齢群ではLSAスコアと快適歩行速度,FRT,6MD,mGESとの間に正の相関を示し,LSAスコアに関連する要因として快適歩行速度が抽出された。



【結論】若年群は高齢群と比較して,身体機能よりも歩行の自己効力感や車の運転の有無といった要因が生活空間に強く関与することが示された。また,若年群において車の運転の有無が生活空間に強く関与したことは,本研究実施地域の特徴であると考えられる。