[O-TK-07-3] 居住地と移動目的地間勾配を用いた地域地形指標Community Terrain Index算出の試み
キーワード:地域地形指標, Life Space Assessment, 活動と参加
【目的】
地域在住高齢者の活動と参加に照準を絞って目標設定をする際の指標としては,身体活動量が広く用いられており,活動量計を用いた測定やLife Space Assessment(LSA)などの質問紙による評価が挙げられる。しかしながら,これらの指標には居住地域の地形に関する情報が反映されておらず,活動や参加におけるより具体的な目標設定をするためには,身体機能に加えて,移動目的地までの標高差や距離などの環境因子を考慮した指標が必要であると考えられる。そこで本研究の目的は,地域在住高齢者の身体機能に加えて,居住地と移動目的地間の標高差を用いた地域地形指標Community Terrain Index(CTI)を試験的に算出すること,また,その妥当性の検証として既存の身体活動性の指標であるLSAスコアおよび身体機能との関連性を検討することとした。
【方法】
対象は理学療法特化型通所介護施設を利用している地域在住高齢者で,通院のために徒歩および公共交通機関を利用する男性11名,女性26名とした。調査項目は,一般情報として性別,年齢,身長,体重,同居人の有無および転倒の有無,身体機能指標として歩行様式,LSA,Timed Up and Go test(以下TUG),片脚立位時間とした。CTIは身体機能指標としてTUG速度(m/sec),地形指標として居住地と移動目的地間の標高差と移動距離を用いて以下の通りに算出した(CTI=目的地間勾配(%)×{移動距離(m)/TUG速度(m/sec)})。地形指標には国土地理院ホームページ「標高がわかる地図web」(5m航空レーザー測量,測定範囲5m四方,標高精度0.3m以内)とGoogle社製Google Earthソフトウェアを使用した。本研究での移動目的地はかかりつけの医療機関とし,徒歩で向かう場合は医療機関を,公共交通機関を利用する場合は最寄りの駅もしくはバス停留所を移動目的地とした。CTIの妥当性の検証として一般情報および身体機能指標との関連性を検討した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者の平均年齢は81.1歳,要介護度の内訳は,要支援1:20名,要支援2:11名,要介護1:2名,要介護2:2名,要介護3:2名であった。CTIの平均は38.1±34.0点であった。
CTIと各指標との関連性を検討した結果,LSAと有意な負の相関(r=-0.35 p<0.05)を認め,転倒経験者は未経験者に比較してCTIが有意に高値(転倒有:56.3,転倒無:28.1 p<0.01)であった。
【結論】
本研究で算出したCTIは,目的地までの勾配や移動距離といった地理的要素に加えて,TUGの速度を移動速度に投入し,勾配の違いによる時間的要素が包含されており,高値であるほど目的地への移動を困難にするという仮説の下で算出を試みた。本研究では,CTIが高値であることが行動範囲の狭小化と関連し,さらに転倒との関連性が示された。これは地域在住高齢者の活動や参加における目標を設定する上でCTIが有用である可能性を示唆していると考えられる。
地域在住高齢者の活動と参加に照準を絞って目標設定をする際の指標としては,身体活動量が広く用いられており,活動量計を用いた測定やLife Space Assessment(LSA)などの質問紙による評価が挙げられる。しかしながら,これらの指標には居住地域の地形に関する情報が反映されておらず,活動や参加におけるより具体的な目標設定をするためには,身体機能に加えて,移動目的地までの標高差や距離などの環境因子を考慮した指標が必要であると考えられる。そこで本研究の目的は,地域在住高齢者の身体機能に加えて,居住地と移動目的地間の標高差を用いた地域地形指標Community Terrain Index(CTI)を試験的に算出すること,また,その妥当性の検証として既存の身体活動性の指標であるLSAスコアおよび身体機能との関連性を検討することとした。
【方法】
対象は理学療法特化型通所介護施設を利用している地域在住高齢者で,通院のために徒歩および公共交通機関を利用する男性11名,女性26名とした。調査項目は,一般情報として性別,年齢,身長,体重,同居人の有無および転倒の有無,身体機能指標として歩行様式,LSA,Timed Up and Go test(以下TUG),片脚立位時間とした。CTIは身体機能指標としてTUG速度(m/sec),地形指標として居住地と移動目的地間の標高差と移動距離を用いて以下の通りに算出した(CTI=目的地間勾配(%)×{移動距離(m)/TUG速度(m/sec)})。地形指標には国土地理院ホームページ「標高がわかる地図web」(5m航空レーザー測量,測定範囲5m四方,標高精度0.3m以内)とGoogle社製Google Earthソフトウェアを使用した。本研究での移動目的地はかかりつけの医療機関とし,徒歩で向かう場合は医療機関を,公共交通機関を利用する場合は最寄りの駅もしくはバス停留所を移動目的地とした。CTIの妥当性の検証として一般情報および身体機能指標との関連性を検討した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者の平均年齢は81.1歳,要介護度の内訳は,要支援1:20名,要支援2:11名,要介護1:2名,要介護2:2名,要介護3:2名であった。CTIの平均は38.1±34.0点であった。
CTIと各指標との関連性を検討した結果,LSAと有意な負の相関(r=-0.35 p<0.05)を認め,転倒経験者は未経験者に比較してCTIが有意に高値(転倒有:56.3,転倒無:28.1 p<0.01)であった。
【結論】
本研究で算出したCTIは,目的地までの勾配や移動距離といった地理的要素に加えて,TUGの速度を移動速度に投入し,勾配の違いによる時間的要素が包含されており,高値であるほど目的地への移動を困難にするという仮説の下で算出を試みた。本研究では,CTIが高値であることが行動範囲の狭小化と関連し,さらに転倒との関連性が示された。これは地域在住高齢者の活動や参加における目標を設定する上でCTIが有用である可能性を示唆していると考えられる。