第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)07

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:備酒伸彦(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)

[O-TK-07-5] 終末期がん患者における訪問リハビリテーションの関わり

本人Hopeの実現に向けて

引間万貴, 江部晃史, 藤森大吾 (医療法人社団緑成会横浜総合病院リハビリテーション科)

Keywords:がん, 終末期, 訪問リハビリテーション

【はじめに,目的】今回,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)にて右大腿骨内顆の骨転移の治療後,病的骨折や転倒のリスクを軽減して屋外歩行の実施に至った一症例を経験したので報告する。

【方法】症例紹介 80代男性。体重68kg。要介護3(週1回の訪問リハ・介護ベッド・車いす)。妻と2人暮。本人Hope「一人で,杖で外を歩けるように。」,家族Hope「本人の後悔のないよう,今の生活を維持して欲しい。」,趣味はウォーキング。既往歴は肺浸潤・左胸膜腫瘍摘出術・左顎下腺腫瘍摘出術・右膝OA。現病歴はX年10月右膝関節痛増強,車いす中心の生活へ。当院でOAope予定も,腫瘍像有。他院にて精査,右大腿骨内顆の骨転移(肺腺がん原発)発覚。同年12月化学療法開始,放射線治療3週実施。X+1年1月膝関節後面の血管に血栓有,安静指示も許可なく歩行。同年3月血栓縮小,医師より歩行許可有。同年4月訪問リハ開始。他部門情報 医師より右大腿骨内顆の腫瘍は縮小。放射線治療後,約2~3か月で骨の強度が回復するため漸増的な荷重許可有(家族に依頼し確認)。理学療法評価(X+1年4月)全体像:病的骨折リスクの認識は低く,再三の指導が必要。HDS-R:23点。視診・触診:右膝関節内側周囲に軽度熱感。右下肢中心に軽度浮腫,両側内側広筋萎縮。ROM:著明な制限なし。MMT(右/左):股関節周囲3/4膝関節周囲4/5。膝伸展筋力(右/左,kgf/kg):0.24/0.30。荷重検査:最大右45kg荷重時痛無。基本動作:自立。移動:屋内歩行器自立・屋外車いす介助。FIM:116点(運動項目82点・認知項目34点)。介入内容 医師の指示に基づき,右膝関節周囲の腫脹・熱感・疼痛や炎症値(月1の血液検査)を確認しながら漸増的に荷重。骨転移部へのストレス軽減のため,歩行補助具を使用,膝関節バンドを装着し離床。筋力強化練習,起立練習,歩行練習,階段昇降練習,動作指導を実施。

【結果】介入6週で屋外杖歩行の実施に至ったが,7週には背部痛の出現や食事量の低下により入院され,訪問リハ中止。自宅退院後,肝臓への転移が発覚。介入11週で永眠された。

【結論】今回,肺腺がんを原発とした右大腿骨内顆の骨転移の治療後,在宅療養されていた症例を担当させて頂いた。全6回の介入で,屋外歩行を実施でき,本症例とその家族は喜ばれていた。しかし,主治医に直接連絡を行うなど連携を取り,早期に病態を把握することで本人と家族の要望により多く応えられたのではないかと考える。終末期のがんリハビリテーションは,患者・家族の要望を尊重しながら,QOLを維持・向上することが求められている。本症例を経験しHopeの実現に至ったが,尊厳ある終末期を迎えるためには本人に関わる職種が密に連携する必要があると考察する。