[O-YB-01-2] 積雪寒冷地域に住む後期高齢者の冬期間の身体活動量低下がその後3年間の認知機能の変化に及ぼす影響
地域在住後期高齢者の冬期間の身体活動量低下がその後3年間の認知機能の変化に及ぼす影響
キーワード:身体活動, 認知機能, 寒冷積雪地域
【はじめに,目的】
高齢期における身体活動量の維持は,健康増進や介護予防において重要な役割を果たす。その中でも中強度(3METs)以上の身体活動は,身体機能や疾病リスクとの関連の強さから特に推奨されている。身体活動量に影響する因子の一つである季節変化について,寒冷積雪地域では冬期間に身体活動量が低下しやすいことや,冬期間の身体活動量低下が将来の運動機能に悪影響を及ぼすことが先行研究において報告されている。しかしながら,冬期間の身体活動量低下がその後の認知機能の変化にどのような影響を与えるのかについては明らかにされていない。
そこで本研究では,積雪寒冷地域に住む後期高齢者を対象とし,冬期間の身体活動量低下がその後3年間の認知機能の変化に及ぼす影響について縦断的に検討した。
【方法】
対象は,2012年11月(初冬:第1回調査)と2013年2月(晩冬:第2回調査),2015年9月(第3回調査)の全3回の調査に参加した,積雪寒冷地域に住む75歳以上の高齢者93名(平均年齢79.5±3.3歳,男性41名/女性52名)とした。調査項目は,握力,快適歩行速度,全般的認知機能(Mini Mental State Examination:MMSE),外出頻度,活動セルフエフィカシー,中強度以上の身体活動時間とした。なお,中強度以上の身体活動時間は生活習慣記録機(ライフコーダ,スズケン社)を用いて測定し,装着1週間における1日あたりの平均活動時間を算出した。
統計解析として,冬期間(第1回調査~第2回調査)における対象者全体の各変数の変化の有無を検討した。また,冬期間における中強度以上の身体活動時間低下の有無により対象者を2群化(維持向上群/低下群)した上で,年齢と性別を共変量とした二元配置分散分析を用い,その後3年間における各変数の変化を群間で比較した。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
対象者全体における冬期間の変化として,外出頻度(p<0.01)および快適歩行速度(p<0.01)に有意な低下が認められた。身体活動時間の維持向上群は41名(44.1%),低下群は52名(55.9%)であり,群間で年齢と性別に有意差はなかった。分散分析の結果,MMSE得点(p<0.01)および中強度以上の身体活動時間(p<0.01)において群と時期による交互作用が認められ,冬期間に身体活動時間が低下した者はその後3年間において全般的な認知機能と身体活動時間が低下しやすいことが明らかになった。
【結論】
生活環境が大きく変化する冬期間において身体活動量を維持できない者は,その後の認知機能や身体活動量の長期的な低下を招くリスクが高いことが明らかとなり,冬期間に身体活動量を確保することの重要性が示された。また,身体活動量の低下と同時に認知機能の低下が生じていたことから,高齢者の身体活動を維持する上で認知機能を評価することの重要性が改めて確認されたと考える。
高齢期における身体活動量の維持は,健康増進や介護予防において重要な役割を果たす。その中でも中強度(3METs)以上の身体活動は,身体機能や疾病リスクとの関連の強さから特に推奨されている。身体活動量に影響する因子の一つである季節変化について,寒冷積雪地域では冬期間に身体活動量が低下しやすいことや,冬期間の身体活動量低下が将来の運動機能に悪影響を及ぼすことが先行研究において報告されている。しかしながら,冬期間の身体活動量低下がその後の認知機能の変化にどのような影響を与えるのかについては明らかにされていない。
そこで本研究では,積雪寒冷地域に住む後期高齢者を対象とし,冬期間の身体活動量低下がその後3年間の認知機能の変化に及ぼす影響について縦断的に検討した。
【方法】
対象は,2012年11月(初冬:第1回調査)と2013年2月(晩冬:第2回調査),2015年9月(第3回調査)の全3回の調査に参加した,積雪寒冷地域に住む75歳以上の高齢者93名(平均年齢79.5±3.3歳,男性41名/女性52名)とした。調査項目は,握力,快適歩行速度,全般的認知機能(Mini Mental State Examination:MMSE),外出頻度,活動セルフエフィカシー,中強度以上の身体活動時間とした。なお,中強度以上の身体活動時間は生活習慣記録機(ライフコーダ,スズケン社)を用いて測定し,装着1週間における1日あたりの平均活動時間を算出した。
統計解析として,冬期間(第1回調査~第2回調査)における対象者全体の各変数の変化の有無を検討した。また,冬期間における中強度以上の身体活動時間低下の有無により対象者を2群化(維持向上群/低下群)した上で,年齢と性別を共変量とした二元配置分散分析を用い,その後3年間における各変数の変化を群間で比較した。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
対象者全体における冬期間の変化として,外出頻度(p<0.01)および快適歩行速度(p<0.01)に有意な低下が認められた。身体活動時間の維持向上群は41名(44.1%),低下群は52名(55.9%)であり,群間で年齢と性別に有意差はなかった。分散分析の結果,MMSE得点(p<0.01)および中強度以上の身体活動時間(p<0.01)において群と時期による交互作用が認められ,冬期間に身体活動時間が低下した者はその後3年間において全般的な認知機能と身体活動時間が低下しやすいことが明らかになった。
【結論】
生活環境が大きく変化する冬期間において身体活動量を維持できない者は,その後の認知機能や身体活動量の長期的な低下を招くリスクが高いことが明らかとなり,冬期間に身体活動量を確保することの重要性が示された。また,身体活動量の低下と同時に認知機能の低下が生じていたことから,高齢者の身体活動を維持する上で認知機能を評価することの重要性が改めて確認されたと考える。