[O-YB-01-4] Walking Stroop Carpetによる認知機能評価の有用性
―自治体事業における地域在住高齢者を対象とした検討―
キーワード:Walking Stroop Carpet, 認知機能, 高齢者
【目的】認知機能を多面的に評価する神経心理学的検査法は,これまで数多く報告されている。しかし,大規模コホートを対象として認知機能検査を実施する場合,検査環境確保や時間的制約などの理由から困難な状況である。近年,Perrochonら(2013)は,Walking Stroop Carpet(WSC)という二重課題下での歩行能力評価により,軽度認知障害(MCI)の早期発見が可能であることを報告した。WSCは,本来机上で行われるストループテストを歩行路に模したもので,指示された文字や色のターゲットを踏み分けながら歩行するテストである。今回,本邦における自治体事業等においてもWSCが認知機能障害のスクリーニング検査として有用であることが確認されれば,上記の課題解決の一助となることから本研究を実施した。
【方法】対象は,高知県香南市にて2015年10月に実施された運動啓発事業に参加した地域在住高齢者63名(平均76.2±7.1歳)である。対象者には認知機能検査としてMMSE(Mini-Mental State Examination日本語版)とともに,WSC課題および一般的な歩行能力評価法として10m歩行時間を計測した。WSCは,幅1m×長さ5mの歩行路に「赤色」「青色」「黄色」「緑色」と書かれたターゲットを横4列×縦10列に配置したものである。また,ターゲットの文字は異なる色彩で印刷されており,文字と色彩は一致しない(例えば「青色」という文字が赤で印刷されている)。WSC課題は,WSC上の指示した文字のみを踏んでいく(例えば「赤色」と書かれた文字のみを選択する)文字条件,指示した色彩のみを踏んでいく(例えば黄色で印刷された文字のみを選択する)色条件,また文字をモノクロ印刷したWSCを用いて,指示した文字のみを踏んでいく白黒条件の合計3条件で構成し,要した時間を計測した。統計解析は,MMSE得点を目的変数,WSC課題3条件と10m歩行の計測時間を説明変数とした重回帰分析にて有意な説明変数を抽出した。続いて,抽出された説明変数を用いてMMSE 23/24点(森ら,1985)をカットオフポイントとしたROC曲線により,認知機能障害の判別性能を確認するためにROC曲線下面積(AUC)とカットオフ値を求めた。
【結果】重回帰分析の結果,決定係数R2=0.49であり,有意な説明変数としてWSC課題(文字条件)のみが選択された(標準偏回帰係数=-0.40,p<0.01)。続いて,WSC課題(文字条件)についてROC曲線を作成したところ,ROC曲線下面積(AUC):0.87,カットオフ値:21.5秒,オッズ比:59.5,感度:77.8%,特異度:94.4%,正診率:92.1%であった。
【結論】WSC課題(文字条件)は,認知機能障害の判別性能が高かったことから,認知機能の簡便な初期スクリーニング検査として活用できる可能性がある。今後は,自治体事業や大規模コホート調査などでの活用が期待される。
【方法】対象は,高知県香南市にて2015年10月に実施された運動啓発事業に参加した地域在住高齢者63名(平均76.2±7.1歳)である。対象者には認知機能検査としてMMSE(Mini-Mental State Examination日本語版)とともに,WSC課題および一般的な歩行能力評価法として10m歩行時間を計測した。WSCは,幅1m×長さ5mの歩行路に「赤色」「青色」「黄色」「緑色」と書かれたターゲットを横4列×縦10列に配置したものである。また,ターゲットの文字は異なる色彩で印刷されており,文字と色彩は一致しない(例えば「青色」という文字が赤で印刷されている)。WSC課題は,WSC上の指示した文字のみを踏んでいく(例えば「赤色」と書かれた文字のみを選択する)文字条件,指示した色彩のみを踏んでいく(例えば黄色で印刷された文字のみを選択する)色条件,また文字をモノクロ印刷したWSCを用いて,指示した文字のみを踏んでいく白黒条件の合計3条件で構成し,要した時間を計測した。統計解析は,MMSE得点を目的変数,WSC課題3条件と10m歩行の計測時間を説明変数とした重回帰分析にて有意な説明変数を抽出した。続いて,抽出された説明変数を用いてMMSE 23/24点(森ら,1985)をカットオフポイントとしたROC曲線により,認知機能障害の判別性能を確認するためにROC曲線下面積(AUC)とカットオフ値を求めた。
【結果】重回帰分析の結果,決定係数R2=0.49であり,有意な説明変数としてWSC課題(文字条件)のみが選択された(標準偏回帰係数=-0.40,p<0.01)。続いて,WSC課題(文字条件)についてROC曲線を作成したところ,ROC曲線下面積(AUC):0.87,カットオフ値:21.5秒,オッズ比:59.5,感度:77.8%,特異度:94.4%,正診率:92.1%であった。
【結論】WSC課題(文字条件)は,認知機能障害の判別性能が高かったことから,認知機能の簡便な初期スクリーニング検査として活用できる可能性がある。今後は,自治体事業や大規模コホート調査などでの活用が期待される。