[O-YB-02-1] 地域在住高齢者の主観的疲労感と転倒との関連
Keywords:転倒, 疲労感, 高齢者
【はじめに,目的】
転倒は,高齢者の要介護状態をもたらす主な要因の1つであり,社会において切実な問題である。一方,疲労感もフレイルの構成要素にも含まれるなど高齢者にとって重要な健康指標と言える。近年,この疲労感が転倒に関連する可能性が指摘されている。しかしながら,80歳未満の高齢者や男性ではその関連性が明らかではなく,一般高齢者全体における疲労感と転倒の関連性は不明である。そこで,本研究では,地域在住の一般高齢者を対象に,疲労感の重症度と転倒との関連性について検討することとした。
【方法】
研究デザインはコホート研究である。本研究では,Locomotive Syndrome and Health Outcome in Aizu Cohort Study(LOHAS)に2008-2010年を通じて参加した,地域在住の60歳以上の者を対象とした。
疲労感の測定には,SF-36の下位尺度の1つ,Vitality(活力)のスコアを用いた。100点満点の下位尺度スコアを算出し,四分位で疲労感の重症度をLowest群,Low群,High群,Highest群にカテゴリー化した。また副次的な要因として,Vitalityの4項目の質問のうち直接疲労感について聴取している2項目のみを用いたスコア(2項目スコア)を算出し,同様に4つのカテゴリーに分類した。転倒に関しては,1年後・2年後の各調査時点のいずれかで,過去1年間での転倒が報告された場合に「転倒あり」と判定した。
なお,交絡因子として,年齢,性別の他,睡眠障害の有無,うつ症状の程度,併存疾患数,転倒の既往の有無,身体活動量(1週間当たりの平均代謝当量),運動機能(握力,片脚立位),Body Mass Index(BMI)を測定した。統計解析にはアウトカムを転倒の有無,要因を疲労感としたロジスティック回帰分析を用いた。Lowest群をReferenceとし,前掲の交絡因子で調整したオッズ比と95%信頼区間を算出した。またカテゴリー間の傾向性の確認を行った。副次的な解析として,2項目スコアに基づく疲労感を要因として同様の解析を行った。
【結果】
解析対象となった751名中2年間で転倒した者は236名(31.4%)であった。なお,疲労感重症度ごとの転倒発生割合は,Lowest群21.6%,Low群28.4%,High群36.0%,Highest群38.3%であった。
ロジスティック回帰分析の結果,疲労感Lowest群に対するLow群,High群,および,Highest群の調整後オッズ比[95%信頼区間]はそれぞれ,1.60[0.94-2.74],1.86[1.12-3.11],および,2.15[1.23-3.76](p for trend=0.01)であった。また2項目スコアを用いた場合は1.73[1.06-2.86],2.20[1.39-3.48],および,3.10[1.58-6.09](p for trend<0.001)であった。
【結論】
本研究から,地域在住高齢者において疲労感の重症度と転倒発生との関連性が認められた。疲労感は適切な量や強度の運動を処方することで改善可能であることが報告されており,その対処には我々の専門性が十分に発揮される。その点からも疲労感を転倒の予測因子の1つとして明らかにした意義は大きいと考える。
転倒は,高齢者の要介護状態をもたらす主な要因の1つであり,社会において切実な問題である。一方,疲労感もフレイルの構成要素にも含まれるなど高齢者にとって重要な健康指標と言える。近年,この疲労感が転倒に関連する可能性が指摘されている。しかしながら,80歳未満の高齢者や男性ではその関連性が明らかではなく,一般高齢者全体における疲労感と転倒の関連性は不明である。そこで,本研究では,地域在住の一般高齢者を対象に,疲労感の重症度と転倒との関連性について検討することとした。
【方法】
研究デザインはコホート研究である。本研究では,Locomotive Syndrome and Health Outcome in Aizu Cohort Study(LOHAS)に2008-2010年を通じて参加した,地域在住の60歳以上の者を対象とした。
疲労感の測定には,SF-36の下位尺度の1つ,Vitality(活力)のスコアを用いた。100点満点の下位尺度スコアを算出し,四分位で疲労感の重症度をLowest群,Low群,High群,Highest群にカテゴリー化した。また副次的な要因として,Vitalityの4項目の質問のうち直接疲労感について聴取している2項目のみを用いたスコア(2項目スコア)を算出し,同様に4つのカテゴリーに分類した。転倒に関しては,1年後・2年後の各調査時点のいずれかで,過去1年間での転倒が報告された場合に「転倒あり」と判定した。
なお,交絡因子として,年齢,性別の他,睡眠障害の有無,うつ症状の程度,併存疾患数,転倒の既往の有無,身体活動量(1週間当たりの平均代謝当量),運動機能(握力,片脚立位),Body Mass Index(BMI)を測定した。統計解析にはアウトカムを転倒の有無,要因を疲労感としたロジスティック回帰分析を用いた。Lowest群をReferenceとし,前掲の交絡因子で調整したオッズ比と95%信頼区間を算出した。またカテゴリー間の傾向性の確認を行った。副次的な解析として,2項目スコアに基づく疲労感を要因として同様の解析を行った。
【結果】
解析対象となった751名中2年間で転倒した者は236名(31.4%)であった。なお,疲労感重症度ごとの転倒発生割合は,Lowest群21.6%,Low群28.4%,High群36.0%,Highest群38.3%であった。
ロジスティック回帰分析の結果,疲労感Lowest群に対するLow群,High群,および,Highest群の調整後オッズ比[95%信頼区間]はそれぞれ,1.60[0.94-2.74],1.86[1.12-3.11],および,2.15[1.23-3.76](p for trend=0.01)であった。また2項目スコアを用いた場合は1.73[1.06-2.86],2.20[1.39-3.48],および,3.10[1.58-6.09](p for trend<0.001)であった。
【結論】
本研究から,地域在住高齢者において疲労感の重症度と転倒発生との関連性が認められた。疲労感は適切な量や強度の運動を処方することで改善可能であることが報告されており,その対処には我々の専門性が十分に発揮される。その点からも疲労感を転倒の予測因子の1つとして明らかにした意義は大きいと考える。