[O-YB-02-5] 地域在住⾼齢者における歩⾏安定性と静的⽴位安定性との関連性
キーワード:歩行安定性, 静止立位, 高齢者
【はじめに,目的】
加齢に伴い,歩行の安定性や静止立位時の安定性は低下し,転倒発生要因の一つになるとされている。一般的に,静的立位安定性の向上が歩行安定性の向上に繋がると考えられていおり,歩行能力向上を目的に静的バランス練習や歩行練習を組み合わせて理学療法プログラムを組むことが多い。しかし,この静的安定性と歩行安定性にどの程度関連性があるかは未だ十分明らかにされていない。そこで,本研究の目的は,地域在住高齢者を対象に,三軸加速度計から測定できる歩行安定性と,静止立位での重心動揺性がどの程度関連するかを検討することである。
【方法】
対象は新聞広告やデイサービスなどへの被検者募集に対して応募のあった60歳以上の地域在住高齢者107名のうち,下記のすべての評価が実施可能であった93名を対象とした。平均年齢68.0±5.6歳,男性44名,女性49名であった。まず,ここ一年間の転倒既往の有無,バランス機能としてBerg Balance Scale(BBS)を評価した。歩行安定性は3軸加速度計を有する小型無線多機能センサ(ATR-Promotions株式会社製)を用いて評価した。加速度センサは第三腰椎棘突起部付近にベルトにて固定し,自由歩行中の左右成分,前後成分,垂直成分の加速度をサンプリング周波数20Hzで測定した。山田ら(2006)の報告を参考に,滑らかさの指標としてパワースペクトラム解析(以下,PS),動揺性の指標としてRoot mean square解析(以下,RMS),左右対称性と規則性の指標として自己相関分析(以下,AC)を算出した。静止立位の安定性は,足圧分布測定器(ニッタ株式会社製)を用いて評価した。30秒間の開眼閉脚立位及び30秒間の閉眼閉脚立位中の足圧中心位置の変化から,総軌跡長及び外周面積を算出した。また,望月ら(2000)の報告を参考に姿勢安定度評価指標(IPS)を算出した。統計処理では,評価した歩行安定性と静的安定性の各指標を,Pearsonの相関係数にて解析し,有意水準は5%とした。
【結果】
転倒の既往を有したのは20名(21.5%)で,転倒回数は1回から3回の範囲であった。BBSは平均54.8±2.2点であり,最低41点であった。歩行安定性の指標であるPSは前後成分,側方成分,垂直成分がそれぞれ0.50±0.07,0.52±0.07,0.46±0.09であり,RMSは前後成分,側方成分,垂直成分がそれぞれ1.83±1.15,1.07±0.74,1.72±0.90であり,ACは前後成分,側方成分,垂直成分がそれぞれ0.76±0.14,0.42±0.13,0.67±0.15であった。静止立位安定性である開眼及び閉眼の総軌跡長,外周面積及びIPSと,歩行安定性の指標であるPS,RMS,ACとの間で有意に相関関係を有する項目はなかった。
【結論】
本研究の結果より,地域在住高齢者においては,静的重心動揺性と歩行安定性との間に有意な関連性を有する項目はなく,静止立位における重心コントロールの機能向上が歩行の安定性に繋がるかどうかは今後検討していく必要があると考えられた。
加齢に伴い,歩行の安定性や静止立位時の安定性は低下し,転倒発生要因の一つになるとされている。一般的に,静的立位安定性の向上が歩行安定性の向上に繋がると考えられていおり,歩行能力向上を目的に静的バランス練習や歩行練習を組み合わせて理学療法プログラムを組むことが多い。しかし,この静的安定性と歩行安定性にどの程度関連性があるかは未だ十分明らかにされていない。そこで,本研究の目的は,地域在住高齢者を対象に,三軸加速度計から測定できる歩行安定性と,静止立位での重心動揺性がどの程度関連するかを検討することである。
【方法】
対象は新聞広告やデイサービスなどへの被検者募集に対して応募のあった60歳以上の地域在住高齢者107名のうち,下記のすべての評価が実施可能であった93名を対象とした。平均年齢68.0±5.6歳,男性44名,女性49名であった。まず,ここ一年間の転倒既往の有無,バランス機能としてBerg Balance Scale(BBS)を評価した。歩行安定性は3軸加速度計を有する小型無線多機能センサ(ATR-Promotions株式会社製)を用いて評価した。加速度センサは第三腰椎棘突起部付近にベルトにて固定し,自由歩行中の左右成分,前後成分,垂直成分の加速度をサンプリング周波数20Hzで測定した。山田ら(2006)の報告を参考に,滑らかさの指標としてパワースペクトラム解析(以下,PS),動揺性の指標としてRoot mean square解析(以下,RMS),左右対称性と規則性の指標として自己相関分析(以下,AC)を算出した。静止立位の安定性は,足圧分布測定器(ニッタ株式会社製)を用いて評価した。30秒間の開眼閉脚立位及び30秒間の閉眼閉脚立位中の足圧中心位置の変化から,総軌跡長及び外周面積を算出した。また,望月ら(2000)の報告を参考に姿勢安定度評価指標(IPS)を算出した。統計処理では,評価した歩行安定性と静的安定性の各指標を,Pearsonの相関係数にて解析し,有意水準は5%とした。
【結果】
転倒の既往を有したのは20名(21.5%)で,転倒回数は1回から3回の範囲であった。BBSは平均54.8±2.2点であり,最低41点であった。歩行安定性の指標であるPSは前後成分,側方成分,垂直成分がそれぞれ0.50±0.07,0.52±0.07,0.46±0.09であり,RMSは前後成分,側方成分,垂直成分がそれぞれ1.83±1.15,1.07±0.74,1.72±0.90であり,ACは前後成分,側方成分,垂直成分がそれぞれ0.76±0.14,0.42±0.13,0.67±0.15であった。静止立位安定性である開眼及び閉眼の総軌跡長,外周面積及びIPSと,歩行安定性の指標であるPS,RMS,ACとの間で有意に相関関係を有する項目はなかった。
【結論】
本研究の結果より,地域在住高齢者においては,静的重心動揺性と歩行安定性との間に有意な関連性を有する項目はなく,静止立位における重心コントロールの機能向上が歩行の安定性に繋がるかどうかは今後検討していく必要があると考えられた。