[O-YB-04-5] 地域在住高齢者の最大歩行速度における臨床的に意義のある最小差の検討
Keywords:地域在住高齢者, 最大歩行速度, 臨床的に意義のある最小差
【はじめに,目的】
歩行速度は多様な身体機能の中で,最も重要な機能であると報告されており(Shimada, et al., 2009),最大歩行速度の低下は将来の能力障害の発生や生存予後に関連する事が報告されている(Shinkai, et al., 2000,杉浦 他., 1998)。よってそれらを改善するための介入試験が数多く行われているが,それらの効果判定はアウトカム測定値を統計学的に解析した結果を基に行われてきた。しかし対象者数の多い介入研究では,統計学的な結果のみでは不十分であり,臨床的に意義のある最小差(Minimal clinically important difference:MCID)を用いることが推奨されている。先行研究では地域在住高齢者における歩行速度のMCIDは0.05m/sであると報告されているが(Perera, et al., 2006),これらは通常歩行速度をアウトカムと設定したものであり,地域在住高齢者における最大歩行速度のMCIDは未だ明らかにされていない。したがって,本研究は地域在住高齢者における最大歩行速度のMCIDを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は市が開催する介護予防教室に参加した地域在住高齢者33名(男性3名,女性30名,年齢76.2±5.8歳)とした。MCID推定の外的指標にはLangら(2008)の用いた7件法のGlobal rating of change scale(GRC)を用いた。GRCの内容はスコア3「かなり大きく歩行速度が向上した」,スコア2「大きく歩行速度が向上した」,スコア1「少し歩行速度が向上した」,スコア0「変化なし」,スコア-1「少し歩行速度が低下した」,スコア-2「大きく歩行速度が低下した」,スコア-3「かなり大きく歩行速度が低下した」とした。GRCの調査は半年間の介護予防教室実施後に測定した最大歩行速度測定の直後に行った。最大歩行速度について,教室後から教室前の値を差分することでGRC各スコアにおけるMWS変化量を算出した。次にHollandら(2010)の方法を参考にスコア1とスコア-1を「small change」群とし,その最大歩行速度変化量の平均値をMCIDとした。この平均値を算出する際にスコア-1と報告した者の最大歩行速度変化量については絶対値を用いた。また,GRCスコアと最大歩行速度変化量との関係についてSpearmanの順位相関係数を求めた。統計解析はR2.8.1を使用し,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
GRC各スコアでの報告者数と最大歩行速度変化量の平均値はスコア3で2名(0.65),スコア2で5名(0.17),スコア1で13名(0.11),スコア0で9名(0.05),スコア-1で4名(0.26)であった。スコア3,-2,-3と報告した者は0名であった。MCIDと規定した「small change」群の最大歩行速度変化量の平均値は0.14m/sであった。また,GRCスコアと最大歩行速度変化量の間には有意な正の相関(ρ=0.47)を認めた。
【結論】
本研究の結果より,地域在住高齢者における最大歩行速度のMCIDは0.14m/sである事が明らかになった。
歩行速度は多様な身体機能の中で,最も重要な機能であると報告されており(Shimada, et al., 2009),最大歩行速度の低下は将来の能力障害の発生や生存予後に関連する事が報告されている(Shinkai, et al., 2000,杉浦 他., 1998)。よってそれらを改善するための介入試験が数多く行われているが,それらの効果判定はアウトカム測定値を統計学的に解析した結果を基に行われてきた。しかし対象者数の多い介入研究では,統計学的な結果のみでは不十分であり,臨床的に意義のある最小差(Minimal clinically important difference:MCID)を用いることが推奨されている。先行研究では地域在住高齢者における歩行速度のMCIDは0.05m/sであると報告されているが(Perera, et al., 2006),これらは通常歩行速度をアウトカムと設定したものであり,地域在住高齢者における最大歩行速度のMCIDは未だ明らかにされていない。したがって,本研究は地域在住高齢者における最大歩行速度のMCIDを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は市が開催する介護予防教室に参加した地域在住高齢者33名(男性3名,女性30名,年齢76.2±5.8歳)とした。MCID推定の外的指標にはLangら(2008)の用いた7件法のGlobal rating of change scale(GRC)を用いた。GRCの内容はスコア3「かなり大きく歩行速度が向上した」,スコア2「大きく歩行速度が向上した」,スコア1「少し歩行速度が向上した」,スコア0「変化なし」,スコア-1「少し歩行速度が低下した」,スコア-2「大きく歩行速度が低下した」,スコア-3「かなり大きく歩行速度が低下した」とした。GRCの調査は半年間の介護予防教室実施後に測定した最大歩行速度測定の直後に行った。最大歩行速度について,教室後から教室前の値を差分することでGRC各スコアにおけるMWS変化量を算出した。次にHollandら(2010)の方法を参考にスコア1とスコア-1を「small change」群とし,その最大歩行速度変化量の平均値をMCIDとした。この平均値を算出する際にスコア-1と報告した者の最大歩行速度変化量については絶対値を用いた。また,GRCスコアと最大歩行速度変化量との関係についてSpearmanの順位相関係数を求めた。統計解析はR2.8.1を使用し,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
GRC各スコアでの報告者数と最大歩行速度変化量の平均値はスコア3で2名(0.65),スコア2で5名(0.17),スコア1で13名(0.11),スコア0で9名(0.05),スコア-1で4名(0.26)であった。スコア3,-2,-3と報告した者は0名であった。MCIDと規定した「small change」群の最大歩行速度変化量の平均値は0.14m/sであった。また,GRCスコアと最大歩行速度変化量の間には有意な正の相関(ρ=0.47)を認めた。
【結論】
本研究の結果より,地域在住高齢者における最大歩行速度のMCIDは0.14m/sである事が明らかになった。