[O-YB-04-6] 在宅脳卒中障がい者と介護者の睡眠覚醒リズムに関する研究
3次元加速度センサーActigraphを用いて
Keywords:Actigraph, 睡眠, 介護負担
【はじめに】Actigraphを用いた在宅介護の研究の大多数は,介護者か被介護者の一方に装着したものである。両者に装着した睡眠覚醒リズムの解析は,非常に少ない。本研究の目的は,在宅脳卒中障がい者と介護者の睡眠覚醒リズムの相違を明らかにする事である。
【方法】対象は,在宅脳卒中障がい者8名(被介護者とする)とその配偶者(介護者とする)8名の16名である。被介護者の平均年齢が66.0歳で,介護者の平均年齢は64.8歳であった。被介護者と介護者の両者に,睡眠覚醒リズムを測定するため3次元加速度センサーActigraphを1週間装着した。その他,介護者の介護負担感は,日本語版Zarits介護負担尺度短縮版(JZBI-8とする)を使用した。被介護者のADL評価は,Barthel Index(BI)を使用した。データの分析について,睡眠パラメーターの算出は,AW2法を用いた。被介護者と介護者の睡眠パラメーター(睡眠時間,睡眠効率,入眠潜時など)の比較は,マンホイットニーのU検定を用いた。また,介護者の睡眠パラメーターとJZBI-8に関しては,相関分析を行った。いずれも有意水準を5%とした。
【結果】1.介護者が被介護者と同室で就寝しているか否かで,介護者間での睡眠パラメーターに差はなかった。2.被介護者と介護者間で,年齢に差はなかった。被介護者と介護者間における睡眠パラメーターは,睡眠効率(被介護者vs介護者)84.5±9.7%vs92.9±4.1%,活動指数49.4±12.3%vs37.2±11.4%,中途覚醒数13.3±4.2回vs6.7±3.0回,5分以上の中途覚醒数6.7±3.7回vs3.2±1.6回に有意の差が認められた。睡眠時間452.6±68.6分vs397.2±61.6分と入眠潜時43.4±33.8分vs30.7±27.8分に関しては差がなかった。3.被介護者のBIは,60±16点であった。介護者のJZBI-8は,8.8±6.4点であった。これらと介護者の睡眠パラメーターの相関は認められなかった。
【考察】1.介護者の就寝時,被介護者と同室か否かで,睡眠パラメーターに差がなかった点は予想外であった。おそらく,夜間のおむつ交換やトイレ介助などがなく,睡眠を分断する条件がなかった事が影響しているものと考える。2.被介護者の睡眠時間は,介護者より長かったが,脳卒中者を対象とした報告(高橋2011)と同様であった。しかし,被介護者の睡眠の質は,睡眠効率低下・活動指数増加が著しく,安眠していない事が推測された。特に,中途覚醒数の増加は,他疾患の報告(藤兼1994・Kondo2006・野村2009)より多く,脳卒中後の特異的影響が示唆された。また,介護者においても,安眠状態ではないことが推測された。3.介護者の介護負担感が著しく高い者がいたが,標本数が少ないため,睡眠との関連性は継続課題である。
今後,脳卒中障がい者の睡眠の特異性や介護者と双方から得られる睡眠データを解析し,介護負担や疲労との関連性を検討していきたい。
【方法】対象は,在宅脳卒中障がい者8名(被介護者とする)とその配偶者(介護者とする)8名の16名である。被介護者の平均年齢が66.0歳で,介護者の平均年齢は64.8歳であった。被介護者と介護者の両者に,睡眠覚醒リズムを測定するため3次元加速度センサーActigraphを1週間装着した。その他,介護者の介護負担感は,日本語版Zarits介護負担尺度短縮版(JZBI-8とする)を使用した。被介護者のADL評価は,Barthel Index(BI)を使用した。データの分析について,睡眠パラメーターの算出は,AW2法を用いた。被介護者と介護者の睡眠パラメーター(睡眠時間,睡眠効率,入眠潜時など)の比較は,マンホイットニーのU検定を用いた。また,介護者の睡眠パラメーターとJZBI-8に関しては,相関分析を行った。いずれも有意水準を5%とした。
【結果】1.介護者が被介護者と同室で就寝しているか否かで,介護者間での睡眠パラメーターに差はなかった。2.被介護者と介護者間で,年齢に差はなかった。被介護者と介護者間における睡眠パラメーターは,睡眠効率(被介護者vs介護者)84.5±9.7%vs92.9±4.1%,活動指数49.4±12.3%vs37.2±11.4%,中途覚醒数13.3±4.2回vs6.7±3.0回,5分以上の中途覚醒数6.7±3.7回vs3.2±1.6回に有意の差が認められた。睡眠時間452.6±68.6分vs397.2±61.6分と入眠潜時43.4±33.8分vs30.7±27.8分に関しては差がなかった。3.被介護者のBIは,60±16点であった。介護者のJZBI-8は,8.8±6.4点であった。これらと介護者の睡眠パラメーターの相関は認められなかった。
【考察】1.介護者の就寝時,被介護者と同室か否かで,睡眠パラメーターに差がなかった点は予想外であった。おそらく,夜間のおむつ交換やトイレ介助などがなく,睡眠を分断する条件がなかった事が影響しているものと考える。2.被介護者の睡眠時間は,介護者より長かったが,脳卒中者を対象とした報告(高橋2011)と同様であった。しかし,被介護者の睡眠の質は,睡眠効率低下・活動指数増加が著しく,安眠していない事が推測された。特に,中途覚醒数の増加は,他疾患の報告(藤兼1994・Kondo2006・野村2009)より多く,脳卒中後の特異的影響が示唆された。また,介護者においても,安眠状態ではないことが推測された。3.介護者の介護負担感が著しく高い者がいたが,標本数が少ないため,睡眠との関連性は継続課題である。
今後,脳卒中障がい者の睡眠の特異性や介護者と双方から得られる睡眠データを解析し,介護負担や疲労との関連性を検討していきたい。