第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本予防理学療法学会 一般演題口述
(予防)05

2016年5月27日(金) 14:50 〜 15:50 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:武藤久司(水戸メディカルカレッジ 理学療法学科)

[O-YB-05-4] 積雪寒冷地域における非冬期の転倒は後期高齢者の運動機能低下を顕在化

山口亨1, 井平光2, 牧野圭太郎1,3, 木原由里子1,4, 石田豊朗1, 志水宏太郎1, 伊藤一成1, 牧迫飛雄馬3, 島田裕之3, 古名丈人2 (1.札幌医科大学大学院保健医療学研究科, 2.札幌医科大学保健医療学部理学療法学科, 3.国立長寿医療研究センター, 4.日本福祉リハビリテーション学院理学療法学科)

キーワード:積雪寒冷地域, 転倒時期, 身体機能

【はじめに,目的】

高齢者の転倒はしばしば重篤な障害を引き起こしQOLの低下につながる。転倒に関する要因は様々報告されているが,環境などの外的要因は転倒を引き起こす重要な要因の一つと考えられている。しかしながら,積雪寒冷地域において,転倒に関連する環境要因は冬期と非冬期で大きく異なる。そのため冬期に発生する転倒と非冬期に発生する転倒を同一のモデルで検討することは適切ではないと考えられる。そこで本研究では,積雪寒冷地域在住の後期高齢者を対象に,転倒時期の違いによる身体的特徴を縦断的調査によって明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は,2012年11月から2013年11月のベースライン調査と2015年9月のフォローアップ調査に参加した積雪寒冷地域在住の75歳以上の高齢者186名(平均年齢80.6±4.3歳,男性17名/女性23名)とした。調査項目は,基本情報の他に,転倒に関する情報と運動機能を測定した。転倒に関しては転倒回数と転倒時期を聴取した。運動機能は,最大歩行速度,TUG,坐骨歩き,握力,および膝伸展筋力を測定した。

統計解析として,ベースライン調査における転倒の有無および時期により対象者を3群化(非転倒群,非冬期転倒群,冬期転倒群)した上で,群と調査時期を要因とする二元配置分散分析を用い,その後3年間における運動機能の変化を群間で比較した。なお,統計解析にはIBM SPSS Statics 21を用い,有意水準は5%とした。


【結果】

186名の後期高齢者のうち,BLの転倒経験者は54名(29.0%)であった。「非転倒群」に属したのが132名(71.0%),「非冬期転倒群」に属したのが35名(18.8%),「冬期転倒群」に属したのが19名(10.2%)であり,群間で年齢と性別に有意な差は認められなかった。分散分析の結果,有意な交互作用は認められなかった。膝伸展筋力(p<0.01)に群および時期の主効果が認められ,最大歩行速度(p<0.01),TUG(p<0.01),坐骨歩き(p<0.01),握力(p<0.01)に群の主効果が認められた。


【結論】

本研究の結果から,ベースラインのみならず,その後3年間においても冬期以外に転倒を経験した後期高齢者はその他の高齢者と比較していくつかの運動機能が低下していることが明らかになった。積雪寒冷地域において,冬期は積雪や路面凍結といった環境の影響が大きく,そのような環境制約のない非冬期に転倒した高齢者は運動機能の低下が顕在化したものと推察される。また,虚弱高齢者をスクリーニングする上で,非冬期の転倒の有無は重要な因子であると考えられる。