[O-YB-05-6] 地域在住高齢者の社会的サポート低下を予測する因子の検討
Keywords:地域在住高齢者, 社会的支援, 縦断研究
【はじめに,目的】
高齢者の健康と関連する要因はこれまで多数報告されているが,そのなかでも近年,社会的サポートが注目されている。社会的サポートとは,人間同士がやり取りをする支援のことであり,情緒的側面と,手段的側面に分けられる。しかしながら,このような二つの側面から高齢期の社会的サポートと健康関連要因との関連性を検討した報告は少ない。本研究では,情緒的側面と手段的側面からみた社会的サポートの変化が,どのような要因に影響されるのかを縦断的調査によって明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は調査測定会に参加した75歳以上の積雪地域に在住の高齢者であり,2013年11月までのベースライン調査(BL)に参加した411人のうち,2015年9月のフォローアップ調査(FU)に参加した188人のデータを用いた。調査内容は,基本属性,社会的サポートなどからなる自記式質問紙調査と筋力,バランス能力,Timed Up and Go test(TUG)などの運動機能調査であった。社会的サポートは,「家族や友達の相談に乗ることがあるか」と「困ったときの相談相手がいるか」の二つの質問項目を情緒的側面の指標とし,「病人を見舞うことができるか」と「寝込んだとき身のまわりの世話をしてくれる人がいるか」の二つの質問項目を手段的側面の指標とした。この質問項目を用い,それぞれ二件式(はい;1点,いいえ;0点)にて得点化した。次に,情緒的側面,手段的側面,および社会的サポート全体のそれぞれの合計得点について,BL時とFU時を比較し,「維持・向上群」と「低下群」の2群に分類した。統計解析はSPSS ver.20を使用し,χ2検定,対応のないt検定を行った。さらに,有意な差が認められた変数と年齢,性別を独立変数,群を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
情緒的側面,手段的側面,および全体のいずれの場合も,両群間の基本属性に有意な差は認められなかった。全体の比較において,低下群は維持・向上群に比し,BL時のTUG所要時間が有意に長く,快適歩行速度も有意に遅かった(p<0.05)。また,ロジスティック回帰分析の結果から,情緒的側面の変化で分類した2群では,WHO-5の合計点が(p<0.05,OR 1.14,CI 1.04-1.25),手段的側面の変化で分類した2群では,TUG所要時間が有意な独立変数として抽出された(p<0.05,OR 0.69,CI 0.53-0.91)。さらに,全体の得点変化で分類した2群では,年齢と性別で調整した後,有意な独立変数は抽出されなかった。
【結論】
本研究により,社会的サポートの情緒的側面の変化には主観的な幸福感が関連し,手段的側面の変化には運動機能が関連することが明らかになった。これは,社会的サポートの中でも,それぞれの側面を予測する要因は異なることを示唆しており,高齢期の社会的サポート充実していく上では,個別性のあるアプローチを考慮する必要性が改めて確認された。
高齢者の健康と関連する要因はこれまで多数報告されているが,そのなかでも近年,社会的サポートが注目されている。社会的サポートとは,人間同士がやり取りをする支援のことであり,情緒的側面と,手段的側面に分けられる。しかしながら,このような二つの側面から高齢期の社会的サポートと健康関連要因との関連性を検討した報告は少ない。本研究では,情緒的側面と手段的側面からみた社会的サポートの変化が,どのような要因に影響されるのかを縦断的調査によって明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は調査測定会に参加した75歳以上の積雪地域に在住の高齢者であり,2013年11月までのベースライン調査(BL)に参加した411人のうち,2015年9月のフォローアップ調査(FU)に参加した188人のデータを用いた。調査内容は,基本属性,社会的サポートなどからなる自記式質問紙調査と筋力,バランス能力,Timed Up and Go test(TUG)などの運動機能調査であった。社会的サポートは,「家族や友達の相談に乗ることがあるか」と「困ったときの相談相手がいるか」の二つの質問項目を情緒的側面の指標とし,「病人を見舞うことができるか」と「寝込んだとき身のまわりの世話をしてくれる人がいるか」の二つの質問項目を手段的側面の指標とした。この質問項目を用い,それぞれ二件式(はい;1点,いいえ;0点)にて得点化した。次に,情緒的側面,手段的側面,および社会的サポート全体のそれぞれの合計得点について,BL時とFU時を比較し,「維持・向上群」と「低下群」の2群に分類した。統計解析はSPSS ver.20を使用し,χ2検定,対応のないt検定を行った。さらに,有意な差が認められた変数と年齢,性別を独立変数,群を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
情緒的側面,手段的側面,および全体のいずれの場合も,両群間の基本属性に有意な差は認められなかった。全体の比較において,低下群は維持・向上群に比し,BL時のTUG所要時間が有意に長く,快適歩行速度も有意に遅かった(p<0.05)。また,ロジスティック回帰分析の結果から,情緒的側面の変化で分類した2群では,WHO-5の合計点が(p<0.05,OR 1.14,CI 1.04-1.25),手段的側面の変化で分類した2群では,TUG所要時間が有意な独立変数として抽出された(p<0.05,OR 0.69,CI 0.53-0.91)。さらに,全体の得点変化で分類した2群では,年齢と性別で調整した後,有意な独立変数は抽出されなかった。
【結論】
本研究により,社会的サポートの情緒的側面の変化には主観的な幸福感が関連し,手段的側面の変化には運動機能が関連することが明らかになった。これは,社会的サポートの中でも,それぞれの側面を予測する要因は異なることを示唆しており,高齢期の社会的サポート充実していく上では,個別性のあるアプローチを考慮する必要性が改めて確認された。