[O-YB-06-2] 食道がん切除再建術後患者の生存期間に影響を及ぼす因子の検討―手術後におけるQOL,身体機能改善への後追試的研究―
Keywords:食道がん, アルブミン, 生存期間
【はじめに,目的】
がんは長年,本邦の死亡原因第1位であり,現在も罹患数・死亡数は上昇し続けている。しかし診断・治療技術の進歩により,診断後の5年生存率も改善してきている。生存率が改善してきているが,QOLが改善していないことや,食道がん患者では身体機能や栄養状態の改善が得られていないとの報告があるものの,それらに対し有効な介入方法が確立されていないのが現状である。また,がん患者の生存期間はQOLと関連する。そこで,食道がん患者の外科術後におけるQOL・身体機能改善に対する介入方法の検討のために,本研究では食道がん切除再建術を施行された者の生存期間に関与する因子を明確にすることを目的とし調査した。
【方法】
対象は2006年12月~2013年12月の間に食道がん切除再建術を施行された者より,電子カルテにて情報抽出可能であった36名とした(生存者で生存日数が5年未満の者は除外)。カルテより基本情報(手術時年齢,性別,手術前身長・体重),手術前の医学的情報(がんの進行度;TNM分類,%肺活量,1秒率,アルブミン(Alb)値,C反応性たんぱく(CRP)値),手術後の医学的情報(手術日,術式,手術時間,手術時出血量,人工呼吸器挿管日数,集中治療室入室日数,入院日数,Alb値,CRP値,合併症の有無,再入院日,死亡日)を後方視的に抽出。対象者を手術時より5年生存群(以下A群,n=18),死亡群(以下D群,n=18)に分類。2群間における各項目の比較をMann-WhitneyのU検定,TNM分類の比較はχ二乗検定を用いた。A,D群の生存期間と各項目の関係はSpearmanの相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
Alb値(A群;3.9±0.6 g/dl,D群;3.9±0.5 g/dl)は手術前では群間に差を認めなかったが,手術後1年時でA群(4.3±0.2g/dl)がD群(3.5±0.7g/dl)より有意に高値となった。TNM分類はA群にてT1,N 0が有意に多く,D群でT3が有意に多かった。D群の生存期間は手術後1年時のAlb値と正の相関(r=0.71),両群の1年時のAlb値とTNM分類Tで負の相関(r=-0.53)が認められた。D群の生存期間は721.8±439.9日であり,死亡原因は再発や他臓器・リンパ節転移が多かった(78%)。
【結論】
手術後1年時のAlb値がD群で有意に低く,生存期間と相関することが明らかとなった。これより食道がん術後1年時のAlb値が生存期間を予測する因子となる可能性が示唆された。D群では手術前のがんの進行度が重症であり,死亡原因は再発や転移が多かった。根治術を施行した者においても手術前の進行度が重症であれば,再発・転移の可能性が高く,予後も不良である可能性がある。理学療法介入において生存期間を予測できることは有用である。身体機能に加え,栄養状態も考慮した介入・指導,また進行度を考慮し,QOL向上を目指した理学療法実施が重要となると考える。今後は,身体機能・QOL向上に対する介入方法を明確にし,さらに有効な理学療法を確立していきたい。
がんは長年,本邦の死亡原因第1位であり,現在も罹患数・死亡数は上昇し続けている。しかし診断・治療技術の進歩により,診断後の5年生存率も改善してきている。生存率が改善してきているが,QOLが改善していないことや,食道がん患者では身体機能や栄養状態の改善が得られていないとの報告があるものの,それらに対し有効な介入方法が確立されていないのが現状である。また,がん患者の生存期間はQOLと関連する。そこで,食道がん患者の外科術後におけるQOL・身体機能改善に対する介入方法の検討のために,本研究では食道がん切除再建術を施行された者の生存期間に関与する因子を明確にすることを目的とし調査した。
【方法】
対象は2006年12月~2013年12月の間に食道がん切除再建術を施行された者より,電子カルテにて情報抽出可能であった36名とした(生存者で生存日数が5年未満の者は除外)。カルテより基本情報(手術時年齢,性別,手術前身長・体重),手術前の医学的情報(がんの進行度;TNM分類,%肺活量,1秒率,アルブミン(Alb)値,C反応性たんぱく(CRP)値),手術後の医学的情報(手術日,術式,手術時間,手術時出血量,人工呼吸器挿管日数,集中治療室入室日数,入院日数,Alb値,CRP値,合併症の有無,再入院日,死亡日)を後方視的に抽出。対象者を手術時より5年生存群(以下A群,n=18),死亡群(以下D群,n=18)に分類。2群間における各項目の比較をMann-WhitneyのU検定,TNM分類の比較はχ二乗検定を用いた。A,D群の生存期間と各項目の関係はSpearmanの相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
Alb値(A群;3.9±0.6 g/dl,D群;3.9±0.5 g/dl)は手術前では群間に差を認めなかったが,手術後1年時でA群(4.3±0.2g/dl)がD群(3.5±0.7g/dl)より有意に高値となった。TNM分類はA群にてT1,N 0が有意に多く,D群でT3が有意に多かった。D群の生存期間は手術後1年時のAlb値と正の相関(r=0.71),両群の1年時のAlb値とTNM分類Tで負の相関(r=-0.53)が認められた。D群の生存期間は721.8±439.9日であり,死亡原因は再発や他臓器・リンパ節転移が多かった(78%)。
【結論】
手術後1年時のAlb値がD群で有意に低く,生存期間と相関することが明らかとなった。これより食道がん術後1年時のAlb値が生存期間を予測する因子となる可能性が示唆された。D群では手術前のがんの進行度が重症であり,死亡原因は再発や転移が多かった。根治術を施行した者においても手術前の進行度が重症であれば,再発・転移の可能性が高く,予後も不良である可能性がある。理学療法介入において生存期間を予測できることは有用である。身体機能に加え,栄養状態も考慮した介入・指導,また進行度を考慮し,QOL向上を目指した理学療法実施が重要となると考える。今後は,身体機能・QOL向上に対する介入方法を明確にし,さらに有効な理学療法を確立していきたい。