第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本予防理学療法学会 一般演題口述
(予防)06

Fri. May 27, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:高倉保幸(埼玉医科大学 保健医療学部)

[O-YB-06-4] 当院の消化器癌患者における周術期リハビリテーションの現状

井上知哉1, 上原光司1, 山下真人1, 飯塚崇仁1, 岡本悠佑1, 瀧川和子1, 欅篤2 (1.高槻病院技術部リハビリテーション科, 2.高槻病院診療部リハビリテーション科)

Keywords:周術期リハビリテーション, 消化器癌, 早期離床

【はじめに,目的】

当院の消化器癌患者は,術後初回離床を理学療法士が実施し,順次運動療法へ移行している。さらに,2014年11月よりICUへ理学療法士を配置し,ICUからの術後早期離床を図っている。今回,消化器癌患者の当院の取り組みについて,術後の経過と合わせて報告する。

【方法】

当院の消化器癌患者に対する周術期リハビリテーションの取り組みは,術前に呼吸指導や運動機能評価(筋力測定,6分間歩行試験),術後運動療法の説明を実施し,術後ICU管理の患者は,術後1日目ICUにて専任理学療法士が離床,転室後に担当理学療法士が再度離床を図っている。術後2日目以降は監視下の運動療法を病棟と連携を図りながら必要に応じて数回実施し,再評価可能な例は術後10日前後に再度運動機能評価を実施している。今回,2014年11月~2015年5月の間に予定手術を施行された消化器癌患者のうち,術後ICU管理となった56名をA群,比較対象としてICU専任以前の2013年11月~2014年10月の間に術後ICU管理となった23名をB群とし,術後経過から理学療法士の介入効果を検証した。また,A群における術後運動機能経過や,術式・術創部別の術後経過の差異も比較検討した。

【結果】

A群とB群では,術後座位開始時間(24.9±7.4時間VS30.4±7.3時間),術後歩行開始時間(34.9±14.5時間VS46.1±15.8時間),バルンカテーテル抜去日(1.6±0.9日VS2.6±1.3日),術後在院日数(14.5±6.4日VS21.5±12.0日)で有意差を認めた。A群とB群間で術式や,術創部別の比率,術後合併症の発生率は有意差を認めなかった。A群における術後運動機能に関して,有意差を認めなかったものの,開腹例は術後運動耐容能の回復率が良好な例で離床が早い傾向にあった。術式による術後経過の差異は認めなかったが,術創部別では上腹部手術例が下腹部と比して術後歩行開始時間は有意に遅延していた。中でも肝臓手術例は他の部位と比して,術後歩行開始時間とバルンカテーテル抜去日が有意に遅延していた。肝臓手術例では,全体の83%が術後1日目の歩行が困難であり,その理由としては起立性低血圧(33%),創部痛(25%),起立性低血圧+創部痛(25%)であった。しかし,術後在院日数で有意差は認めなかった。

【結論】

ICUからの理学療法士の介入は,早期歩行開始を可能にした。しかし,早期離床が術後運動耐容能の回復に与える効果は確認されなかった。早期離床は術後合併症予防には重要であるが,運動耐容能回復においては術後の活動時間・量が影響している可能性が考えられた。また術創部別では上腹部,特に肝臓手術例で離床が遅延する傾向にあった。しかし,密な病棟連携で疼痛コントロールを図り,循環動態も安定してくる術後2~3日目にも数回離床機会を持ったことが,術後在院日数の遅延防止に寄与している可能性が示唆された。