[O-YB-06-5] 外来化学療法を施行中の進行性がん患者に対する理学療法介入の効果検証
ランダム化比較試験
Keywords:がんリハビリテーション, カヘキシー, EORTC QLQ-C30
【はじめに,目的】
がんの早期発見と治療技術の向上により,がん治療後の患者に対する医療の充実や生活の質(Quality of Life;QOL)の向上が急務の課題となっている。がん治療のなかでも,近年,在宅での生活やQOL向上を目的とした外来化学療法を主体とする治療が増加している。しかしながら,がんと理学療法に関する研究のなかでは,体力向上や副作用軽減を目的とした介入研究は少ない。本研究では外来化学療法施行中の進行性がん患者に対して,在宅で実施可能な理学療法介入が身体機能およびQOLに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,2014年7月~2015年7月までに札幌医科大学附属病院で外来化学療法を施行した進行性がん患者24名とした。24名のがん患者は介入群12名と対照群12名にランダムに割り付けられ,ベースライン時と3ヵ月後に機能評価が実施された。ベースライン評価として,握力,膝伸展筋力,および開眼片脚立位時間を実測し,がん患者に対するQOL評価としてEORTC QLQ-C30による質問紙調査を実施した。本研究で実施した理学療法介入は,在宅での筋力増強運動と活動量モニタリングから構成された。筋力増強運動は,ブリッジ運動やスクワットなどを直接指導し,パンフレットを配布することで在宅での実施を促した。活動量モニタリングについては,活動記録器ライフコーダGS(スズケン社)を貸与し,毎日の歩数を運動実施カレンダーに記載させた。外来化学療法の実施ごとに,理学療法士が運動実施カレンダーを通して筋力増強運動と活動量モニタリングの実施状況を確認し,身体活動を促した。統計学的分析は,反復測定の二元配置分散分析を実施し,それぞれの評価項目について群(介入群-対照群)と期間(ベースライン-3ヵ月後)の交互作用を確認した。統計処理にはSPSS22.0を用い,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
年齢,性別,および癌種について介入群(平均年齢63.6±11.2歳,男性7名)と対照群(平均年齢62.3±13.9歳,男性9名)の間に有意な差は認められなかった。介入群と対照群の運動機能をベースラインと3ヵ月後で比較したところ,握力,膝伸展トルク,および開眼片脚立位時間に有意な交互作用は認められなかった。一方で,がん患者のQOL指標であるEORTC QLQ-C30では,身体機能,疲労感,および食欲不振の項目について群と期間の有意な交互作用が認められた(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果から,筋力増強運動と活動量モニタリングを含む理学療法介入が,実測された運動機能に効果的であったことを示す知見を得ることは出来なかった。しかしながら,質問紙評価による身体機能や疲労感については,3ヵ月後の介入群で良好な値を示した。したがって,本研究の理学療法介入は,直接的には運動機能に影響を与えなかったが,主観的な身体機能や疲労感など一部の機能に対しては良好な影響を及ぼした可能性が示唆された。
がんの早期発見と治療技術の向上により,がん治療後の患者に対する医療の充実や生活の質(Quality of Life;QOL)の向上が急務の課題となっている。がん治療のなかでも,近年,在宅での生活やQOL向上を目的とした外来化学療法を主体とする治療が増加している。しかしながら,がんと理学療法に関する研究のなかでは,体力向上や副作用軽減を目的とした介入研究は少ない。本研究では外来化学療法施行中の進行性がん患者に対して,在宅で実施可能な理学療法介入が身体機能およびQOLに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,2014年7月~2015年7月までに札幌医科大学附属病院で外来化学療法を施行した進行性がん患者24名とした。24名のがん患者は介入群12名と対照群12名にランダムに割り付けられ,ベースライン時と3ヵ月後に機能評価が実施された。ベースライン評価として,握力,膝伸展筋力,および開眼片脚立位時間を実測し,がん患者に対するQOL評価としてEORTC QLQ-C30による質問紙調査を実施した。本研究で実施した理学療法介入は,在宅での筋力増強運動と活動量モニタリングから構成された。筋力増強運動は,ブリッジ運動やスクワットなどを直接指導し,パンフレットを配布することで在宅での実施を促した。活動量モニタリングについては,活動記録器ライフコーダGS(スズケン社)を貸与し,毎日の歩数を運動実施カレンダーに記載させた。外来化学療法の実施ごとに,理学療法士が運動実施カレンダーを通して筋力増強運動と活動量モニタリングの実施状況を確認し,身体活動を促した。統計学的分析は,反復測定の二元配置分散分析を実施し,それぞれの評価項目について群(介入群-対照群)と期間(ベースライン-3ヵ月後)の交互作用を確認した。統計処理にはSPSS22.0を用い,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
年齢,性別,および癌種について介入群(平均年齢63.6±11.2歳,男性7名)と対照群(平均年齢62.3±13.9歳,男性9名)の間に有意な差は認められなかった。介入群と対照群の運動機能をベースラインと3ヵ月後で比較したところ,握力,膝伸展トルク,および開眼片脚立位時間に有意な交互作用は認められなかった。一方で,がん患者のQOL指標であるEORTC QLQ-C30では,身体機能,疲労感,および食欲不振の項目について群と期間の有意な交互作用が認められた(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果から,筋力増強運動と活動量モニタリングを含む理学療法介入が,実測された運動機能に効果的であったことを示す知見を得ることは出来なかった。しかしながら,質問紙評価による身体機能や疲労感については,3ヵ月後の介入群で良好な値を示した。したがって,本研究の理学療法介入は,直接的には運動機能に影響を与えなかったが,主観的な身体機能や疲労感など一部の機能に対しては良好な影響を及ぼした可能性が示唆された。