第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本予防理学療法学会 一般演題口述
(予防)07

Fri. May 27, 2016 5:10 PM - 6:10 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:廣滋恵一(九州栄養福祉大学 リハビリテーション学部)

[O-YB-07-3] 上肢及び下肢運動時の循環動態反応の比較~CAVIを用いた検討~

久保宏紀1,2, 浅井剛3, 福元喜啓3, 岡智大1,4, 春藤久人3 (1.神戸学院大学総合リハビリテーション学研究科, 2.伊丹恒生脳神経外科病院リハビリテーション部, 3.神戸学院大学総合リハビリテーション学部, 4.あんしん病院リハビリテーション科)

Keywords:上肢運動, 血管拡張反応, 循環動態

【はじめに,目的】ヒトの健康を維持・増進する運動として,歩行をはじめとする有酸素運動が推奨されている。歩行やエルゴメーターを用いる下肢の有酸素運動は,安全で,心疾患等の予防にも効果的であることが確認されている。一方で,高齢や疾病によって下肢の運動を行えない者も存在している。そのような者に対する運動として上肢の運動が挙げられる。しかし,上肢の有酸素運動は下肢の有酸素運動に比べ,安全性や効果に関する報告が少ないのが現状である。本研究の目的は上肢及び下肢運動による動脈拡張反応を含めた循環動態反応を比較することである。

【方法】対象は若年者15名(男性7名,女性8名,平均年齢20.5±0.5歳)とした。各被験者に対し自転車エルゴメーターを用いた上肢および下肢運動をランダムに行い,運動前・後の心拍数,収縮期血圧,拡張期血圧,血管拡張反応,自律神経活動を測定した。また目標運動強度での運動中の心拍数と自律神経活動を測定した。各運動の測定は1週間以上空けて行った。動脈拡張反応は血圧脈波計測装置を用いて心臓足首血管指数(Cardio-Ankle Vascular Index:CAVI)を測定した。心拍数は心拍センサーを用い測定し,得られた心拍から心拍変動解析により自律神経活動である交感神経活動と副交感神経活動を評価した。各運動は3分間のwarm up後,目標運動強度まで漸増し,目標運動強度に達した時点から10分間運動を継続した。運動強度はborg scaleを用いて設定し,上肢および下肢の自覚的運動強度が4~5(ややきつい~きつい)となる強度を目標運動強度とした。統計学的解析は反復測定一元配置分散分析を用いて行い,各測定項目の運動効果を検討した。有意水準は5%とした。多重比較検定には,ボンフェローニ補正を行った有意水準を用い,対応のあるt検定あるいはMann-Whitney検定を行った。

【結果】心拍数は上肢・下肢運動ともに運動前に比較して運動中に有意に増加した(上肢運動;運動前63.5±10.0,運動中103.8±8.5,下肢運動;運動前65.8±12.4,運動中121.4±15.8)。交感神経活動は上肢・下肢運動ともに運動前と比較して運動中に有意に上昇し,副交感神経活動は上肢・下肢運動ともに運動前に比較して運動中に有意に低下した。収縮期・拡張期血圧は運動前後で差を認めなかった。CAVIは上肢運動の運動前・後で差は認めなかったが(運動前6.1±0.5,運動後6.1±0.6),下肢運動では運動後に有意に低値を示し(運動前6.0±0.6,運動後5.4±0.8),下肢運動のみ血管拡張反応が認められた。

【結論】上肢と下肢の自覚的運動強度を同等にした運動を行い循環動態の反応を比較した。心拍数,交感神経活動,副交感神経活動は上肢・下肢運動ともに同様の傾向を示した。一方,血管拡張反応は異なる傾向を示した。運動中の心拍数の上昇は上肢・下肢運動で異なっていたため,血管への物理的な刺激の違いが血管拡張反応の違いに関与している可能性がある。