第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本予防理学療法学会 一般演題口述
(予防)07

2016年5月27日(金) 17:10 〜 18:10 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:廣滋恵一(九州栄養福祉大学 リハビリテーション学部)

[O-YB-07-5] 高齢者が自ら運動を実践・継続するための効果的方略

―運動効果の実感と運動継続率との関連―

有田真己1,5, 岩井浩一2, 万行里佳3, 森田英隆4, 遠藤敦盛4 (1.つくば国際大学医療保健学部理学療法学科, 2.茨城県立医療大学人間科学センター, 3.目白大学保健医療学部理学療法学科, 4.いちはら病院, 5.茨城県立医療大学大学院保健医療科学研究科)

キーワード:運動効果の実感, 運動継続率, セルフ・エフィカシー

【はじめに,目的】

健康でいきいきとした高齢期を迎えるために,高齢者は自ら積極的に健康・体力づくりや介護予防に取り組む必要性が高まっている。理学療法士のアプローチは,対象者が自ら進んで運動を実践・継続するための動機づけへの働きかけが必須といえる。これまでに我々は,運動を継続する要因の一つが運動効果を実感することであることを明らかにした。運動効果の実感は,セルフ・エフィカシー(SE)を高める4つの情報源の一つである生理的・情動的喚起に相当する。これは,身近な変化の感覚を得ることであり,自ら運動を継続するためには,運動を通じた変化の感覚をいかにして獲得するかがカギとなる。

そこで本研究は,運動効果の実感を強調したフィードバックが在宅運動の継続率向上に有効であるか,および運動効果を実感する程度とSEとの関連も含めて縦断的に明らかにする。

【方法】

要支援,要介護者44名(介入群21名,統制群23名;平均78.6±6.1歳)を対象とした。通所サービスを利用する曜日ごとに介入群および統制群へ割り付けし,初期(T1),ベースライン(1ヵ月後;T2),介入期(1ヵ月後;T3),フォローアップ期(1ヵ月後;T4)の計4点に各評価項目を実施した。介入群には,運動効果の実感の評価結果を強調するフィードバックを実施し,統制群には,身体機能評価の客観的数値のみをフィードバックした。評価項目は,基本的属性(年齢,性別,主疾患),身体機能評価(開眼片脚立ち,TUG,階段昇降時間,5m最大歩行速度,5m通常歩行速度,SS-5),在宅運動バリア・SE(HEBS),運動効果の実感については,身体機能評価それぞれに対し,効果を実感する程度について1.かなり悪くなったと感じる,から7.かなり良くなったと感じる,までの7件法により解答を求め,平均得点を算出した。在宅運動の継続率は,セルフチェックシートを用いて実施した運動量の合計得点を算出した。

【結果】

T4における在宅運動継続率は,統制群と比較し介入群が有意に高い結果となった。さらに,介入群は統制群と比較し,T4における運動効果を実感する程度,およびHEBSの得点が有意に高い値を示した。また,効果を実感する時期は,フォローアップ期(3ヵ月経過時点)であった。

【結論】

運動効果の実感を強調したフィードバックは,在宅運動の継続率を高める手段として有効であることが明らかとなった。また,実感を強調したことから,生理的・情動的喚起の促進につながりHEBSの得点を向上させたと考える。身体機能評価にとどまらず,主観的な実感も併せて評価し,フィードバックすることが運動効果の実感を高め,SEが高まり,最終的に在宅運動の継続率につながったと考えられる。さらに,効果を実感する程度に群間差が生じる時期は,運動開始3ヵ月後であり,この時期から運動効果の実感に目を向けさせることが,その後の運動の継続率向上につながると示唆される。