第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本予防理学療法学会 一般演題口述
(予防)08

Fri. May 27, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:杉本諭(東京医療学院大学)

[O-YB-08-1] 同種造血幹細胞移植前後の身体機能の変化とその影響因子の検討

米永悠佑 (独立行政法人国立病院機構九州医療センター)

Keywords:同種造血幹細胞移植, 身体機能, ステロイド

【はじめに,目的】

造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植(以下移植)では移植前処置による有害事象や移植後の様々な合併症の影響で重度の廃用症候群を招きやすいとされている。これまで移植前後の身体機能の変化に関して,活動性の低下やステロイドの影響について報告されているが,いずれも移植後数週間での検討であり,長期的な変化について検討した報告は少ない。そこで,移植前から3カ月後までの身体機能変化とその影響因子について検証したので報告する。

【方法】

対象は造血器腫瘍に対して同種移植を施行された血液腫瘍患者で,移植前及び移植後3カ月時に身体機能評価が可能であった12名。身体機能の指標として握力,等尺性膝伸展筋力(以下下肢筋力),Performance status(PS)を用い,栄養状態の指標としてBody Mass Index(BMI)・Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いた。また電子カルテより医学的情報を抽出した。統計処理は,移植前後での握力・下肢筋力の変化については一元配置分散分析を用いて検討した。さらに目的変数を握力・下肢筋力の変化量,説明変数を年齢,生着までの日数,移植後在院日数,移植後3カ月のPS・BMI・GNRI,PSL投与量(mg/kg)及び投与期間,熱発(38℃以上)日数とした重回帰分析のステップワイズ法(変数増減法)を用いて,握力・下肢筋力の変化に影響する因子を抽出した。統計解析にはJMP Pro 11を使用し,有意水準を5%とした。

【結果】

対象の内訳は,年齢;54.41±14.08歳,性別;男性5名/女性7名,原疾患;AML1名/ALL4名/ATL2名/ML2名/MM1名/MDS2名,移植種類;骨髄移植5名/末梢血幹細胞移植4名/臍帯血移植3名であった。握力・下肢筋力の移植前・3カ月後の変化に関してはいずれも有意差を認めなかった。握力変化の因子として,生着までの日数,PSL total dose(mg/kg),移植後3カ月時のGNRIが,下肢筋力変化の因子として,移植後在院日数,移植後3カ月時のPSL dose(mg/kg/day)が抽出された。

【結論】

握力・下肢筋力に関しては移植後3カ月の時点で統計的に移植前と有意差がない程度までの回復を認めたが,いずれも3ヶ月の時点では移植前より低い傾向を示し,移植後3カ月間では回復が十分ではないことを示した。移植後の握力・下肢筋力の回復には移植後生着までの期間や移植後在院日数だけでなく,ステロイド投与量,栄養状態が影響している可能性が示唆された。移植後において,ステロイド投与量や栄養状態に合わせた運動療法の指摘強度については明らかになっていないため,移植後の身体機能回復の促進,QOL向上のために,今後ステロイド投与量や栄養状態に応じた運動負荷の検証が必要である。