[O-YB-08-2] 造血幹細胞移植後早期における体幹筋断面積および運動耐容能の変化
キーワード:造血幹細胞移植, 無菌室管理, 体幹筋断面積
【はじめに,目的】
造血幹細胞移植(以下,HSCT)は造血器関連の腫瘍性疾患・遺伝性疾患に対する治療方法であり,移植後の生存率は長期化している。HSCT治療における無菌室(以下,CR)管理期間中では安静臥床を余儀なくされるため重度の廃用症候群を呈するリスクが高い。近年,HSCT患者の下肢を中心とした抗重力筋力の低下が指摘されており,予防を図るために多くの取り組みがされている。しかしながら,同じ抗重力筋に分類される体幹筋に着目した報告は少ない。本研究の目的は,HSCT後早期における体幹筋断面積と運動耐容能の変化を検討することである。
【方法】
当院にてHSCTを施行しCR管理前後にCT検査を施行した17名(男性13名,女性4名,年齢52.32±12.11歳)を対象とした。対象者は全例移植前よりリハビリテーション介入を行っている。体幹筋断面積はCT(Aquilion64,東芝メディカルシステムズ社)にてL3椎体レベルのaxial断面で腹直筋,側腹筋群(外腹斜筋+内腹斜筋+腹横筋),脊柱起立筋,大腰筋の筋断面積を画像解析ソフト(AquariusNETver4.4.6)を用い算出した。運動耐容能の評価として,CR管理前後に6分間歩行(以下,6MWT)を測定した。統計学的処理は,同一被験者内でCR管理前後の各体幹筋断面積,6MWTの比較としてウィルコクソンの符号付順位検定を用い,各体幹筋断面積と6MWTの関連性の検討にはそれぞれの変化率〔(移植後-移植前)/移植前*100〕を算出し,スピアマン順位相関係数を用いた。統計学的有意基準はすべて5%未満とした。
【結果】
本研究の対象者のCR滞在日数は,40.4±14.7日,CR管理期間中の理学療法の実施率は70±17%であった。脊柱起立筋の筋断面積はCR管理前1857.6±428.2mm2,CR管理後1590.6±379.0mm2で,CR管理前と比較してCR管理後では有意に低い値を示した。腹直筋,側腹筋群,大腰筋ではCR管理前後で有意差を認めなかった。筋断面積の変化率は腹直筋(0%),側腹筋群(-4.9%),大腰筋(0%),脊柱起立筋(-14.4%)であり,脊柱起立筋の筋断面積の変化率が有意に低い値を示した。6MWTはCR管理前476.6±96.5m,CR管理後388.6±74.2m,変化率-18.5%と有意に低下していたが,脊柱起立筋の筋断面積と6MWTの間には有意な相関は認められなかった(r=0.2)。
【結論】
本研究よりHSCT患者のCR管理前後における体幹筋の筋断面積の変化は,筋によって異なる傾向を示し,脊柱起立筋においてのみ有意な減少を示した。脊柱起立筋は抗重力筋に分類され,臥床による影響を受けやすい筋であることが先行研究で報告されている。身体活動性の低下が脊柱起立筋の筋断面積の低下に影響している可能性があり,今後の検討課題にしていく必要がある。また,脊柱起立筋の筋断面積の低下がCR管理後の運動耐容能に影響しているのかを検討したが関連は認めず,他の因子が影響していることが示唆された。
造血幹細胞移植(以下,HSCT)は造血器関連の腫瘍性疾患・遺伝性疾患に対する治療方法であり,移植後の生存率は長期化している。HSCT治療における無菌室(以下,CR)管理期間中では安静臥床を余儀なくされるため重度の廃用症候群を呈するリスクが高い。近年,HSCT患者の下肢を中心とした抗重力筋力の低下が指摘されており,予防を図るために多くの取り組みがされている。しかしながら,同じ抗重力筋に分類される体幹筋に着目した報告は少ない。本研究の目的は,HSCT後早期における体幹筋断面積と運動耐容能の変化を検討することである。
【方法】
当院にてHSCTを施行しCR管理前後にCT検査を施行した17名(男性13名,女性4名,年齢52.32±12.11歳)を対象とした。対象者は全例移植前よりリハビリテーション介入を行っている。体幹筋断面積はCT(Aquilion64,東芝メディカルシステムズ社)にてL3椎体レベルのaxial断面で腹直筋,側腹筋群(外腹斜筋+内腹斜筋+腹横筋),脊柱起立筋,大腰筋の筋断面積を画像解析ソフト(AquariusNETver4.4.6)を用い算出した。運動耐容能の評価として,CR管理前後に6分間歩行(以下,6MWT)を測定した。統計学的処理は,同一被験者内でCR管理前後の各体幹筋断面積,6MWTの比較としてウィルコクソンの符号付順位検定を用い,各体幹筋断面積と6MWTの関連性の検討にはそれぞれの変化率〔(移植後-移植前)/移植前*100〕を算出し,スピアマン順位相関係数を用いた。統計学的有意基準はすべて5%未満とした。
【結果】
本研究の対象者のCR滞在日数は,40.4±14.7日,CR管理期間中の理学療法の実施率は70±17%であった。脊柱起立筋の筋断面積はCR管理前1857.6±428.2mm2,CR管理後1590.6±379.0mm2で,CR管理前と比較してCR管理後では有意に低い値を示した。腹直筋,側腹筋群,大腰筋ではCR管理前後で有意差を認めなかった。筋断面積の変化率は腹直筋(0%),側腹筋群(-4.9%),大腰筋(0%),脊柱起立筋(-14.4%)であり,脊柱起立筋の筋断面積の変化率が有意に低い値を示した。6MWTはCR管理前476.6±96.5m,CR管理後388.6±74.2m,変化率-18.5%と有意に低下していたが,脊柱起立筋の筋断面積と6MWTの間には有意な相関は認められなかった(r=0.2)。
【結論】
本研究よりHSCT患者のCR管理前後における体幹筋の筋断面積の変化は,筋によって異なる傾向を示し,脊柱起立筋においてのみ有意な減少を示した。脊柱起立筋は抗重力筋に分類され,臥床による影響を受けやすい筋であることが先行研究で報告されている。身体活動性の低下が脊柱起立筋の筋断面積の低下に影響している可能性があり,今後の検討課題にしていく必要がある。また,脊柱起立筋の筋断面積の低下がCR管理後の運動耐容能に影響しているのかを検討したが関連は認めず,他の因子が影響していることが示唆された。