[O-YB-08-3] 急性リンパ性白血病完全寛解後の再発に対する同種造血幹細胞移植患者の理学療法介入により運動機能向上が得られた1症例
キーワード:同種造血幹細胞移植, 運動機能, 理学療法
【はじめに,目的】
造血幹細胞移植患者は,原疾患に起因する身体活動量の低下,前治療による体力低下や有害事象,移植前処置に伴う安静臥床,全身倦怠感や消化器症状,感染症,移植片対宿主病などの移植後合併症により,身体活動が著しく制限される。さらに無菌室内での長期間の隔離・安静により,重度の廃用症候群が生じる危険性が高いとされており,移植前からの理学療法介入が廃用症候群の予防に重要である。今回造血幹細胞移植前から理学療法介入し,運動機能の向上が得られ家庭復帰した症例を経験したので報告する。
【方法】
本症例は平成24年7月急性リンパ性白血病と診断され,入院加療により完全寛解し維持療法施行したが,平成27年4月第1再発と診断され,化学療法により第2寛解期の63歳女性である。評価項目は,最大10m歩行速度,バランス評価としてTimed Up and Go Test(TUG),重心動揺検査,筋力は握力と膝伸展筋力(アニマ社製μTas F-100),Barthel Index(BI),Performance Status Scale(PS)を測定し,移植前(第16病日),生着後(準無菌室退室後:第66病日),退院前(第98病日)に評価した。理学療法は,入院後3病日目より開始し,治療内容はストレッチ,筋力増強練習,バランス練習,歩行練習や自転車エルゴメーターなどの有酸素運動を全身状態に応じて準無菌室とリハビリ室にて適宜実施し,自主練習の指導も行い実施してもらった。移植は同種移植で末梢血管細胞移植を骨髄非破壊的移植にて入院後第38病日に実施され,移植前や退院前に多職種によるカンファレンスを実施した。
【結果】
結果の記載は移植前→生着後→退院前の順に記載する。最大10m歩行速度は,57.5m/分→60.0m/分→68.2m/分,TUGは12.6秒→13.2秒→11.2秒,重心動揺検査では動揺面積は開眼2.50cm2→1.93cm2→2.07cm2,閉眼7.53cm2→7.50cm2→2.94cm2,総軌跡長は開眼65.66cm→56.33cm→51.32cm,閉眼184.99cm→172.93cm→103.66cm,握力は右16kg,左15kg→右16kg,左16kg→右16kg,左15kg,下肢伸展筋力は右0.21kgf,左0.20kgf/kg→右0.21kgf/kg,左0.23kgf/kg→右0.26kgf/kg,左0.30kgf/kg,BIは95点→80点→100点,PSは1点→2点→1点であった。
【結論】
移植前からの理学療法介入や多職種カンファレンスにより,治療計画や問題点,有害事象の共有化が図れ,移植後も運動機能と歩行能力の維持・向上が得られた。準無菌室での活動制限を認める時期に抗重力下でのバランス練習を中心に実施したことがバランス能力向上に繋がり,退院時には移植前以上の運動機能と歩行能力の獲得が得られ,家庭復帰へと繋がった。
造血幹細胞移植には移植前より原疾患や前処置に起因する身体活動量の低下,移植後に合併症のリスクが生じる為,多職種との連携を密に取り,全身状態の把握と状態に応じた適切な理学療法を実施する事で運動機能の低下を予防し,家庭復帰へと繋げる事ができると考える。
造血幹細胞移植患者は,原疾患に起因する身体活動量の低下,前治療による体力低下や有害事象,移植前処置に伴う安静臥床,全身倦怠感や消化器症状,感染症,移植片対宿主病などの移植後合併症により,身体活動が著しく制限される。さらに無菌室内での長期間の隔離・安静により,重度の廃用症候群が生じる危険性が高いとされており,移植前からの理学療法介入が廃用症候群の予防に重要である。今回造血幹細胞移植前から理学療法介入し,運動機能の向上が得られ家庭復帰した症例を経験したので報告する。
【方法】
本症例は平成24年7月急性リンパ性白血病と診断され,入院加療により完全寛解し維持療法施行したが,平成27年4月第1再発と診断され,化学療法により第2寛解期の63歳女性である。評価項目は,最大10m歩行速度,バランス評価としてTimed Up and Go Test(TUG),重心動揺検査,筋力は握力と膝伸展筋力(アニマ社製μTas F-100),Barthel Index(BI),Performance Status Scale(PS)を測定し,移植前(第16病日),生着後(準無菌室退室後:第66病日),退院前(第98病日)に評価した。理学療法は,入院後3病日目より開始し,治療内容はストレッチ,筋力増強練習,バランス練習,歩行練習や自転車エルゴメーターなどの有酸素運動を全身状態に応じて準無菌室とリハビリ室にて適宜実施し,自主練習の指導も行い実施してもらった。移植は同種移植で末梢血管細胞移植を骨髄非破壊的移植にて入院後第38病日に実施され,移植前や退院前に多職種によるカンファレンスを実施した。
【結果】
結果の記載は移植前→生着後→退院前の順に記載する。最大10m歩行速度は,57.5m/分→60.0m/分→68.2m/分,TUGは12.6秒→13.2秒→11.2秒,重心動揺検査では動揺面積は開眼2.50cm2→1.93cm2→2.07cm2,閉眼7.53cm2→7.50cm2→2.94cm2,総軌跡長は開眼65.66cm→56.33cm→51.32cm,閉眼184.99cm→172.93cm→103.66cm,握力は右16kg,左15kg→右16kg,左16kg→右16kg,左15kg,下肢伸展筋力は右0.21kgf,左0.20kgf/kg→右0.21kgf/kg,左0.23kgf/kg→右0.26kgf/kg,左0.30kgf/kg,BIは95点→80点→100点,PSは1点→2点→1点であった。
【結論】
移植前からの理学療法介入や多職種カンファレンスにより,治療計画や問題点,有害事象の共有化が図れ,移植後も運動機能と歩行能力の維持・向上が得られた。準無菌室での活動制限を認める時期に抗重力下でのバランス練習を中心に実施したことがバランス能力向上に繋がり,退院時には移植前以上の運動機能と歩行能力の獲得が得られ,家庭復帰へと繋がった。
造血幹細胞移植には移植前より原疾患や前処置に起因する身体活動量の低下,移植後に合併症のリスクが生じる為,多職種との連携を密に取り,全身状態の把握と状態に応じた適切な理学療法を実施する事で運動機能の低下を予防し,家庭復帰へと繋げる事ができると考える。