第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本予防理学療法学会 一般演題口述
(予防)08

Fri. May 27, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:杉本諭(東京医療学院大学)

[O-YB-08-5] 精神疾患分類別にみたBarthel Indexの改善度の検討

園田拓史, 武清孝弘, 岡村敏之, 永松健太郎, 村山芳博 (公益財団法人慈愛会今村病院分院リハビリテーションセンター)

Keywords:精神疾患, Barthel Index, 理学療法

【はじめに,目的】

近年,高齢化に伴い身体疾患の合併を有する精神科患者が増えており,身体障害に対するリハビリ(以下,身体リハ)のニーズが高まっている。当院精神科は身体合併症を有する精神科患者を受け入れ,専門診療科と連携して身体的治療を行っており,依頼に応じて身体リハを提供している。精神科患者に対する身体リハの効果についての報告は多く見られるが,ADL能力の改善を統計学的に検討した先行研究は少ない。今回,ICD-10の分類に基づきF0(認知症,器質性精神障害,せん妄等)F2(統合失調症,妄想性障害)F3(気分障害:うつ病,両極性感情障害)の3群においてBarthel Index(以下,BI)の点数の変化に着目して検討した。

【方法】

対象は平成25年1月~平成27年8月に当院精神科へ入院し退院時まで身体リハを継続して実施した患者のうち死亡退院,他科への転科,状態が悪化する前(以下,入院前)のBI合計点が0点の者を除外したF0 106名(78.4±13.6歳),F2 61名(60.5±16.6歳),F3 31名(66.1±14.0歳)の計198名。

各群の入院前,リハビリ開始時(以下,リハ開始時),退院時のBI合計点,BI項目ごとの点数の比較をフリードマン検定,多重比較(Scheffe法)にて検討し,有意水準を5%未満とした。

【結果】

BI合計点における平均値の変化としては,入院前-リハ開始時-退院時の順にF0:52.3-20.3-36.6点,F2:79.5-32.4-61.4点,F3:86.5-40.8-78.2点であり,経時変化に差を認めた(p<0.01)。3群全てにおいてリハ開始時から退院時に有意に改善を認めた(p<0.01)。入院前と退院時の比較ではF0,F2において有意に差を認め(p<0.01)入院前の能力より低下していたが,F3において有意差はなく(p=0.71),入院前の能力まで改善できていた。

BI項目別としてはリハ開始時から退院時まででF0では入浴,整容以外で改善がみられた。しかし,退院時において全ての項目で入院前の能力より低下していた。F2では退院時,入浴以外の項目で改善がみられたが,入院前の能力を獲得できたのは食事,整容,排便のみであった。F3では全ての項目で改善がみられ,入院前の能力を獲得できていた。

【結論】

ADL能力は,リハ介入により精神疾患分類に関わらずリハ開始時より改善していた。よって,身体リハの介入意義は大きいと考えられた。特にF3(気分障害)においては,退院時には入院前水準まで改善する可能性が示唆された。

BIの項目別では,特に入浴や整容は改善が得られにくい結果となり,他職種(OT・病棟スタッフ)と連携したアプローチの実践が重要であると思われた。