[O-YB-08-6] 大腿骨近位部骨折患者の在院日数は入院関連機能障害既往の有無が関与する
Keywords:入院関連機能障害, 大腿骨近位部骨折, 在院日数
【はじめに・目的】
近年,高齢者の大腿骨近位部骨折患者の栄養不良は,術後の機能回復や在院日数,死亡率に影響を及ぼすという報告が多い。しかし,術前栄養状態が良好な患者においても,機能回復の遅延や在院日数が延長する症例を多く経験する。我々は,それらの症例の多くに入院歴があり,その際に,入院関連機能障害(Hospitalization Associated Disability:以下HAD)を生じていたと推察した。今回,当院に入院した大腿骨近位部骨折患者の入院歴と栄養状態,および過去のHAD危険因子の有無を調査し,術後機能回復との関連を検討した。
【方法】
対象は,2014年9月から2015年8月までに当院で手術を施行された65歳以上の大腿骨近位部骨折患者のうち,術前Alb値が3.5g/dL以上の46例(82.1歳,男性/女性 4/42例)とし,大腿骨近位部骨折受傷前の1年以内の入院歴の有無で,入院歴有群と入院歴無群の2群に分類し,後方視的に調査した。
調査項目は,1)患者背景:年齢,性別,Body Mass Index(以下BMI),既往歴・合併症,2)大腿骨近位部骨折受傷前の1年以内の入院情報:原疾患,過去入院時のHAD危険因子の有無,在院日数,3)大腿骨近位部骨折受傷時の情報:術前後Hb値・Alb値・CRP値,在院日数,手術までの日数,リハビリテーション(以下リハビリ)開始から退院までの日数,転帰先とした。HAD危険因子は,①80歳以上,②著明なるい痩(BMI17.5以下),③入院時歩行困難,④認知症,⑤入院前の活動範囲低下として,1つでも有するものを高リスクとした。
統計解析は,入院歴有群と入院歴無群について対応のないt検定とχ2検定により比較検討を行い,入院歴の有無と各項目,および入院歴有群のみHAD危険因子の有無と各項目をSpearmanの順位相関係数にて相関関係を調査し,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者46例のうち,入院歴有群は9例であり,そのうちHAD危険因子を有する患者は6例であった。入院歴有群の大腿骨近位部骨折受傷時の在院日数は47±4日,リハビリ開始から退院までの日数は37±4日であり,入院歴無群と比べて有意 に高値であった(P<0.01)。
また,入院歴有群のHAD危険因子の有無と各項目の相関関係は,循環器疾患の有無(r=0.8:P<0.05)と大腿骨近位部骨折受傷時の在院日数(r=0.7:P<0.05),リハビリ開始から退院までの日数(r=0.7:P<0.05)で相関が認められた。
【結論】
栄養状態良好の大腿骨近位部骨折患者のうち,過去の入院時にHAD危険因子を有している患者は,術後の機能回復が遅延し,在院日数が延長していることが示唆された。これは,前回の退院後に身体虚弱状態が遷延,もしくは進行していることにより,術後の環境調整やサービス調整に多くの時間を要するためと考えた。以上より,高齢入院患者にHAD危険因子の評価を実施し,リハビリ介入を行うことで,今後のQOL改善に繋がることが期待できると思われる。
近年,高齢者の大腿骨近位部骨折患者の栄養不良は,術後の機能回復や在院日数,死亡率に影響を及ぼすという報告が多い。しかし,術前栄養状態が良好な患者においても,機能回復の遅延や在院日数が延長する症例を多く経験する。我々は,それらの症例の多くに入院歴があり,その際に,入院関連機能障害(Hospitalization Associated Disability:以下HAD)を生じていたと推察した。今回,当院に入院した大腿骨近位部骨折患者の入院歴と栄養状態,および過去のHAD危険因子の有無を調査し,術後機能回復との関連を検討した。
【方法】
対象は,2014年9月から2015年8月までに当院で手術を施行された65歳以上の大腿骨近位部骨折患者のうち,術前Alb値が3.5g/dL以上の46例(82.1歳,男性/女性 4/42例)とし,大腿骨近位部骨折受傷前の1年以内の入院歴の有無で,入院歴有群と入院歴無群の2群に分類し,後方視的に調査した。
調査項目は,1)患者背景:年齢,性別,Body Mass Index(以下BMI),既往歴・合併症,2)大腿骨近位部骨折受傷前の1年以内の入院情報:原疾患,過去入院時のHAD危険因子の有無,在院日数,3)大腿骨近位部骨折受傷時の情報:術前後Hb値・Alb値・CRP値,在院日数,手術までの日数,リハビリテーション(以下リハビリ)開始から退院までの日数,転帰先とした。HAD危険因子は,①80歳以上,②著明なるい痩(BMI17.5以下),③入院時歩行困難,④認知症,⑤入院前の活動範囲低下として,1つでも有するものを高リスクとした。
統計解析は,入院歴有群と入院歴無群について対応のないt検定とχ2検定により比較検討を行い,入院歴の有無と各項目,および入院歴有群のみHAD危険因子の有無と各項目をSpearmanの順位相関係数にて相関関係を調査し,統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者46例のうち,入院歴有群は9例であり,そのうちHAD危険因子を有する患者は6例であった。入院歴有群の大腿骨近位部骨折受傷時の在院日数は47±4日,リハビリ開始から退院までの日数は37±4日であり,入院歴無群と比べて有意 に高値であった(P<0.01)。
また,入院歴有群のHAD危険因子の有無と各項目の相関関係は,循環器疾患の有無(r=0.8:P<0.05)と大腿骨近位部骨折受傷時の在院日数(r=0.7:P<0.05),リハビリ開始から退院までの日数(r=0.7:P<0.05)で相関が認められた。
【結論】
栄養状態良好の大腿骨近位部骨折患者のうち,過去の入院時にHAD危険因子を有している患者は,術後の機能回復が遅延し,在院日数が延長していることが示唆された。これは,前回の退院後に身体虚弱状態が遷延,もしくは進行していることにより,術後の環境調整やサービス調整に多くの時間を要するためと考えた。以上より,高齢入院患者にHAD危険因子の評価を実施し,リハビリ介入を行うことで,今後のQOL改善に繋がることが期待できると思われる。