第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本予防理学療法学会 一般演題口述
(予防)09

Sat. May 28, 2016 1:40 PM - 2:40 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:山田実(筑波大学大学院人間総合科学研究科)

[O-YB-09-3] 地域在住高齢者おける介護認定ハイリスク者の身体的ならびに精神心理面の特徴

飯野朋彦1, 平瀬達哉2, 井口茂2 (1.介護老人保健施設にしきの里, 2.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学・作業療法学講座)

Keywords:地域在住高齢者, 要介護認定, 基本チェックリスト

【はじめに,目的】

厚生労働省の国民生活基礎調査では,後期高齢者となる75歳以降,老年症候群が原因で要介護状態に至る割合が増加しており,このことは早期に介護認定ハイリスク者を発見することの重要性を提示している。介護予防事業では,介護認定ハイリスク者を早期発見することを目的に,基本チェックリストによるスクリーニングが実施されている。先行研究では,基本チェックリストは高い感度と特異度で介護認定への移行を予測可能であることが示されており,その有用性が立証されている。しかし,介護認定ハイリスク者の身体的ならびに精神心理面の特徴は明らかとなっていない。介護予防事業では,介護認定ハイリスク者に適切な介入を実施する必要があり,これらの特徴を明らかにすることは重要である。本研究の目的は,基本チェックリストによる介護認定ハイリスク者の運動機能・心理面・Quality of life(QOL)の特徴を明らかにすることである。

【方法】

対象は,当施設が実施している一次ならびに二次予防事業に参加した高齢者290名(男性49名,女性241名,平均年齢75.6±5.7歳)とした。調査項目は,対象者の属性,運動機能,心理面,健康関連QOLとし,属性は家族構成(独居/同居),服薬状況(無/有),痛みなどの自覚症状(無/有)を問診により聴取した。運動機能は,握力,開眼片脚立位,椅子起立時間,Timed Up and Goを測定し,鈴木らの転倒アセスメントを用いて転倒リスク数を評価した。心理面はGDS-15を用いて評価し,健康関連QOLはSF-36を用いて身体的健康を表すサマリースコア(PCS)と精神的健康を表すサマリースコア(MCS)を算出した。そして,先行研究を参考に基本チェックリストの「うつ・予防支援」の5項目を除く20項目中,7項目以上に該当する者を介護認定高リスク者,7項目未満に該当する者を低リスク者に分類し,各評価項目を群間比較した。その後,介護認定高リスクとなる因子を特定するため,介護認定リスク(高/低)を目的変数,群間比較で有意差を認めた項目を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。なお,いずれの統計手法とも有意水準は5%未満とした。

【結果】

介護認定高リスク者は90名,低リスク者は200名であった。群間比較の結果,家族構成と服薬状況を除く全ての項目で有意差を認めた(p<0.05)。ロジスティック回帰分析の結果では,転倒リスク数とPCSのオッズ比が有意であった(p<0.001とp=0.001)。

【結論】

介護認定高リスク者では,男性や痛みなどの自覚症状を有する割合が高く,運動機能面や心理面ならびに健康関連QOLが低下しており,転倒リスクも高いことが明らかとなった。その中でも,介護認定高リスクに最も影響する因子としては,転倒リスク数とPCSが抽出された。以上のことより,地域在住高齢者に対する介護予防事業では,介護認定高リスク者に対し転倒リスクの軽減や身体的健康感を高める介入が重要であることが示唆された。