[O-YB-10-3] 地域在住高齢者における睡眠時間と身体的フレイルの関連性
Keywords:地域在住高齢者, 睡眠時間, フレイル
【はじめに,目的】
高齢期においては,睡眠時間が短いことも長いことも認知機能や身体機能などの心身機能低下に対して悪影響を及ぼすことが報告されている。また,近年では高齢期での夜間覚醒や睡眠効率の低下などの睡眠障害と身体的なフレイルの発症との関連が報告されている。睡眠時間の観点からの報告もなされているものの,睡眠時間が短いことへの検討に留まり,睡眠時間が長いことによる影響も含めた検討がなされていない。本研究の目的は,睡眠時間の長さが身体的フレイルの各要素および判定に関連しているのかどうかを横断的に検討することである。
【方法】
National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromesに参加した65歳以上の地域在住高齢者10,885名のうち,アルツハイマー病,パーキンソン病の既往のある者,及びMini-Mental State Examinationが18点未満の者,欠損値がある者を除外した10,297名(女性5,323名,男性4,974名,平均年齢73.7±5.5歳)を対象とした。就寝時間と起床時間から睡眠時間を算出し,short(6時間以下),mid(6~9時間),long(9時間以上)の3群に群分けした。また,Friedらの基準に従い,体重減少(6か月間での2~3kgの減少),活力低下,握力低下(女性18kg未満,男性26kg未満),歩行速度の低下(1.0m/s未満),活動度の低下を判定の要素とし,1~2個該当する者をpre frailty,3個以上該当する者をfrailtyと判定した。共変量として,基本属性,病歴に加えて,うつ症状,服薬数,喫煙・飲酒習慣を聴取した。統計解析は,physical frailtyの各要素および判定を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
睡眠時間による身体的フレイルの有症率は,pre frailtyがshort:55.5%,mid:49.9%,long:53.7%,frailtyがshort:10.8%,mid:7.9%,long:18.8%であり,睡眠時間が長い群で高い身体的フレイルの有症率であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,midに比べてshort,longともにpre frailty(short:OR=1.34,long:OR=1.51),frailty(short:OR=1.58,long:OR=2.82)に対するオッズ比が有意に高かった。身体的なフレイルの各要素については,midに比べてshortは体重減少(OR=1.41),活力低下(OR=1.43),歩行速度低下(OR=1.28)において,longは体重減少(OR=1.25),活力低下(OR=1.25),活動低下(OR=1.68),握力低下(OR=1.71),歩行速度低下(OR=1.65)と全要素に対するオッズが有意に高かった。
【結論】
本研究より,睡眠時間が短い(6時間以下)ことおよび長い(9時間以上)ことが身体的フレイルの判定と関連しており,長時間睡眠がより高齢期におけるfrailtyとの関連が強かった。介護予防の観点において重要視されているフレイルと睡眠時間の関連性を示した本研究結果は,睡眠状況の把握,改善がフレイル発症の予防につながる可能性を示したと考える。
高齢期においては,睡眠時間が短いことも長いことも認知機能や身体機能などの心身機能低下に対して悪影響を及ぼすことが報告されている。また,近年では高齢期での夜間覚醒や睡眠効率の低下などの睡眠障害と身体的なフレイルの発症との関連が報告されている。睡眠時間の観点からの報告もなされているものの,睡眠時間が短いことへの検討に留まり,睡眠時間が長いことによる影響も含めた検討がなされていない。本研究の目的は,睡眠時間の長さが身体的フレイルの各要素および判定に関連しているのかどうかを横断的に検討することである。
【方法】
National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromesに参加した65歳以上の地域在住高齢者10,885名のうち,アルツハイマー病,パーキンソン病の既往のある者,及びMini-Mental State Examinationが18点未満の者,欠損値がある者を除外した10,297名(女性5,323名,男性4,974名,平均年齢73.7±5.5歳)を対象とした。就寝時間と起床時間から睡眠時間を算出し,short(6時間以下),mid(6~9時間),long(9時間以上)の3群に群分けした。また,Friedらの基準に従い,体重減少(6か月間での2~3kgの減少),活力低下,握力低下(女性18kg未満,男性26kg未満),歩行速度の低下(1.0m/s未満),活動度の低下を判定の要素とし,1~2個該当する者をpre frailty,3個以上該当する者をfrailtyと判定した。共変量として,基本属性,病歴に加えて,うつ症状,服薬数,喫煙・飲酒習慣を聴取した。統計解析は,physical frailtyの各要素および判定を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
睡眠時間による身体的フレイルの有症率は,pre frailtyがshort:55.5%,mid:49.9%,long:53.7%,frailtyがshort:10.8%,mid:7.9%,long:18.8%であり,睡眠時間が長い群で高い身体的フレイルの有症率であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,midに比べてshort,longともにpre frailty(short:OR=1.34,long:OR=1.51),frailty(short:OR=1.58,long:OR=2.82)に対するオッズ比が有意に高かった。身体的なフレイルの各要素については,midに比べてshortは体重減少(OR=1.41),活力低下(OR=1.43),歩行速度低下(OR=1.28)において,longは体重減少(OR=1.25),活力低下(OR=1.25),活動低下(OR=1.68),握力低下(OR=1.71),歩行速度低下(OR=1.65)と全要素に対するオッズが有意に高かった。
【結論】
本研究より,睡眠時間が短い(6時間以下)ことおよび長い(9時間以上)ことが身体的フレイルの判定と関連しており,長時間睡眠がより高齢期におけるfrailtyとの関連が強かった。介護予防の観点において重要視されているフレイルと睡眠時間の関連性を示した本研究結果は,睡眠状況の把握,改善がフレイル発症の予防につながる可能性を示したと考える。