第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-DM-01-3] 回復期リハビリテーション病棟における糖尿病合併患者の,獲得移動様式の違いによる血糖コントロールと,退院後の血糖コントロールについての調査

照井和史 (南東北第二病院リハビリテーション科)

Keywords:糖尿病, ヘモグロビンA1c, 獲得移動様式

【はじめに,目的】回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)における糖尿病合併脳血管疾患患者の血糖コントロールに関し,入院経過中,有意に血糖コントロールが改善されるが,獲得移動様式(以下様式)の違いによる影響はないと第50回日本理学療法学術大会で報告した。今回,脳血管疾患患者以外も対象に入れ,回復期病棟入院中の糖尿病合併患者の様式の違いによる入院中の血糖コントロールと,退院後の血糖コントロールへの影響について後方視的に調査した。

【方法】2013年7月から2015年10月までに当院回復期病棟を入退院した患者のうち,糖尿病合併例は113例。その中で入院および退院日に近い時期にヘモグロビンA1c(以下HbA1c)を測定していた102例を入院中の血糖コントロール調査対象(以下A対象)とし,さらに退院後5または6か月後のHbA1cが追跡調査可能であった30例を退院後の血糖コントロール調査対象(以下B対象)とした。A対象を様式別に歩行群(以下G群),車椅子群(以下W群)の2群に分け,全体と群ごとで入退院時のHbA1cを対応のあるT検定で,群間でHbA1c変化量(以下変化量)を対応のないT検定,B対象も2群に分け,全体と群ごとでの退院時と5または6か月後のHbA1cを対応のあるT検定で,群間で変化量を対応のないT検定で検定を行った。なお有意水準はいずれも5%未満とした。A対象はG群83例,W群19例。入院時HbA1c(7.1±1.3%),退院時HbA1c(6.5±0.9%),全体の変化量は-6.5±1.4%,G群-0.6±1.3%,W群-0.6±1.75。B対象はG群25例,W群5例。退院時HbA1c(6.4±0.9%),5または6か月後のHbA1c(6.8±1.1%),全体の変化量は0.4±0.9%,G群0.44±1.0%,W群0.16±0.6%であった。



【結果】A対象はHbA1cが全体で(p<0.01),G群,W群の入退院時(p<0.05)で有意な改善を認めたが,様式の違いによる変化量には差がなかった。B対象はHbA1cが全体,G群で有意な上昇(p<0.05)を認めたが,様式の違いによる変化量には差がなかった。



【結論】前回の報告では入院中G群のみ血糖コントロールに優位な改善が認めたが,今回の調査ではW群でも優位に血糖コントロールの改善が認められた。これは,脳卒中ガイドライン2015でも下肢麻痺筋の再教育に有効であるとしているペダリング運動を,脳血管疾患患者に限らず運動器疾患等の歩行不能群にも積極的に取り入れてきたことによる運動の効果であると考えられる。しかし,退院後はHbA1cの上昇が認められている。糖尿病治療の三本柱の一つである運動療法は食事療法,薬物療法に比べ,アドヒアランスが低いとされており,退院後の運動療法が不十分であったことがHbA1c上昇の要因の一つではないかと考えられる。糖尿病治療において運動療法は,食事療法と組み合わせることでさらに高い効果が得られるとされており,今後,退院後の運動療法についての意識付け,習慣化を十分に考慮していく必要がある。