第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-DM-01-5] 著明な筋力低下を呈した神経性食欲不振症患者が他職種連携によりADL自立に至った1症例

荒木聡子 (NTT東日本関東病院リハビリテーション科)

Keywords:神経性食欲不振症, 筋力低下, 連携

【はじめに,目的】神経性食欲不振症(以下AN)は,主に10~20代の女性に多く,最近では,30~40代の女性が増加してきているとの報告がある。また,AN患者の約7%に身体的合併症として歩行困難や起き上がれないなどの運動障害が認められ,死亡率は6~20%と高く緊急入院が必要な場合もあり,カウンセリングなどによる治療よりも全身状態の改善が最優先されることがある。今回,全身状態の悪化により著明な筋力低下を生じADL低下を併発したAN患者に対し他部署との連携を図りながら,ADLが自立となった症例を経験したのでここに報告する。


【方法】症例は,40代女性。診断名:AN(制限型)。入院時身長158cm,体重27.3kg,BMI10.9,TP5.9g/dl,Alb3.4g/dl。入院の1週間前より日常生活が要介助となり,全身衰弱・脱水・肝機能異常にて緊急入院となる。入院後,Refeeding syndromeにならないように食事療法を開始。リエゾンチーム介入となるが,全身状態の改善を最優先とし経過観察となる。第12病日に運動機能改善のためにリハ開始。栄養状態を検討しながら,離床を促し,基本動作練習より実施した。


【結果】リハ開始時,体重30.7kg,BMI12.3,TP3.8g/dl,Alb2.0g/dl。両下肢の浮腫および関節拘縮,仙骨部の褥瘡,足部の潰瘍あり。四肢の筋力低下は著明で体動困難,握力計測は不可。低血糖,低血圧による意識消失などが出現。36病日,体重37.4kg,BMI15.1,TP4.3g/dl,Alb2.3g/dl。汎血球減少症,敗血症にてICU管理。傾眠傾向,頻脈,全身の著明な浮腫が出現し,筋力低下は進行。また,病棟内での患者の要求や不安等の訴えが強くなり,依存的で自発性が低下してため,主治医,病棟看護師,心療内科医師,看護師,臨床心理士,リハ科理学療法士,作業療法士,言語聴覚士にてカンファレンスを実施。患者への対応方法を統一化し,自発性を促す方針となった。その後,カンファレンスを契機に意欲の向上が徐々にみられ,筋力増強が図られた。69病日,一般病棟へ転棟。体重27.5kg,BMI11.0,TP5.1g/dl,Alb2.4g/dl。握力は右4.0kgW/左4.8kgW。ADLは協力みられるが全介助。141病日,体重28.6kg,BMI11.5,TP5.9g/dl,Alb3.7g/dl。四肢の浮腫,褥瘡は改善。握力は右13.9kgW/左14.0kgW,大腿四頭筋筋力は右16.05Nm/左17.60Nm。6分間歩行(独歩)396.44m。ADLは自立し,依存傾向はみられず,自発的に動かれている。過活動傾向あるため適宜抑制。142病日にAN治療のために専門病院へ転院。


【考察】AN患者のほとんどが再発を繰り返し,身体症状が重症化すると言われている。今回は,汎血球減少症,敗血症などの合併症を引き起こし,精神状態が一層不安定になり,身体機能が重症化したが,他部門との連携により自発的な活動を誘導し,栄養状態と運動量を検討し,筋力増強と共にADL改善を図ることができた。他部署との連携をしながらの運動療法はAN患者のADL改善の一助となったと考えられる。