第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P02

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-DM-02-1] 口腔・咽喉頭がん患者の手術前栄養状態と手術後早期の肩関節外転可動域の関係性

石井貴弥1, 原毅1, 出浦健太郎1, 西村晃典1, 四宮美穂1, 井川達也1, 草野修輔2, 三浦弘規3, 久保晃4 (1.国際医療福祉大学三田病院リハビリテーション室, 2.国際医療福祉大学三田病院リハビリテーション科, 3.国際医療福祉大学三田病院頭頸部腫瘍センター, 4.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科)

キーワード:口腔・咽喉頭がん患者, 手術前栄養状態, 肩関節外転可動域変化比

【はじめに,目的】

頸部リンパ節を切除する頸部郭清術は,頭頸部がん手術の中で必要不可欠であるが,手術中の操作で,胸鎖乳突筋を牽引し副神経の軸索損傷を呈し,肩関節外転可動域(以下,外転ROM)制限を生じることが問題点である。しかし,我々は手術後早期から外転ROMが改善すれば,退院後のQuality of Lifeが良好に維持できることを明らかしている。

消化器がん患者では,手術前の栄養状態が手術後合併症の発生率や身体機能に関係することが報告されている。また我々は,頭頸部がん患者において,両側郭清の有無が手術後早期の外転ROM改善に影響することを明らかとしている。よって,本研究の対象者でも栄養状態と外転ROMの関係性あり,さらに片側郭清と両側郭清の間では傾向が異なると仮説を立てた。

そこで本研究では,口腔・咽喉頭がん患者における手術前栄養状態の傾向と手術後早期の外転ROMの関係性を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は,副神経を温存した頸部郭清術施行後の口腔・咽喉頭がん患者44名54肢(男性31名,平均年齢58.4±10.3歳)とした。手術前より肩関節外転可動域制限を認めた肢は除外した。

方法は,手術前と手術後1か月の外転ROMを計測し,その変化比(以下,%外転ROM)を算出した。また,手術前栄養状態として,血清アルブミン値(以下,Alb)を収集し,同時期の身長と体重を用いてGeriatric Nutritional Risk Index(以下,GNRI)を算出した。さらに,先行研究の%外転ROMのカットオフ値57.6%と手術式によって,対象者を改善群と非改善群および片側郭清群と両側郭清群のそれぞれ2群に分類した。統計学的解析には,対応のないt検定とPearson積率相関分析を使用した(p<0.05)。


【結果】

Albは,改善群4.5±0.3g/dl,非改善群4.2±0.3g/dl,GNRIは改善群106.3±5.8,非改善群102.8±5.6となり,それぞれ有意差が認められた。また%外転ROMと相関係数は,対象者全体でAlb(r=0.43),GNRI(r=0.35)であり,有意な相関関係が認められた。さらに片側郭清群ではAlb(r=0.38),GNRI(r=0.17),両側郭清群ではAlb(r=0.55),GNRI(r=0.59)であり,両側郭清群のGNRIのみ有意な相関関係を認めた。


【結論】

%外転ROMによって手術前栄養状態に差があり,対象者全体の手術前栄養状態と%外転ROMとの間に中等度の相関関係を認められた。本研究の対象者は,口腔・咽喉頭といった摂食嚥下機能に関係する部位に腫瘍を呈しているため,手術前より食事量が減少し低栄養状態の可能性がある。このような背景から,手術後早期の筋力や神経回復を遅延させたと推察できる。以上より,%外転ROM改善困難例では,より詳細な手術前の食事量や体格などの栄養状態の把握が必要である。