[P-DM-04-1] 透析患者が有する拘束性換気障害および筋出力抑制について
Keywords:透析, 拘束性換気障害, 筋出力抑制
【はじめに，目的】
透析患者は，慢性的な活動量低下や多様な合併症の影響から運動耐容能が低下し，ADL制限，QOL低下，生命予後の悪化をきたす。透析患者に対する理学療法として一般に，運動耐容能の向上を目的に運動処方がなされるが，患者の状態に応じた個別の評価と客観的な効果判定が成されているか課題も残る。基礎疾患によらず慢性疼痛を訴える患者において筋出力抑制や胸郭可動域制限，肺活量低下などの身体機能の特徴が報告されているが，透析患者における検討は十分ではない。そこで本研究では，透析患者における運動機能および呼吸機能を明らかにし，透析理学療法戦略の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は，当院にて維持血液透析療法を受ける患者（以下，透析群）11名（年齢66.9±12.2歳，身長161.1±8.7 cm，男性8名，女性3名），および整形外科疾患患者（以下，対象群）18名（58.4±16.5歳，157.2±10.2 cm，男性4名，女性14名）とした。明らかな呼吸器疾患や中枢神経疾患の診断を受けている者や喫煙者は除外し，いずれも慢性疼痛を訴えて理学療法を受ける者から無作為に抽出した。
電子式診断用スパイロメータ
SP-370 COPD肺Per（フクダ電子）を用いて，対標準肺活量（%VC）および1秒率（FEV1.0%）を測定した。等速性運動機器Isoforce GT-360（OG技研）を用いて，体重支持指数（Weight Bearing Index；WBI）を測定した。WBIは，体重当たりの大腿四頭筋最大等尺性収縮筋力で算出され，重力に抗する全身の運動機能を反映する指標とされる。体成分分析装置Inbody 770（インボディ・ジャパン）を用いて，身体総タンパク量（% Muscle Volume；%MV）を測定した。
統計処理は，R version 3.0.2を用いて対応のないt検定により，各測定項目について透析群と対象群とで比較した。危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
透析群と対象群とで年齢，身長に有意差をみとめなかった。%VC（%）は，透析群72.0±18.0は，対象群98.5±9.1と比較して有意に低値を示した（P＜0.05）。FEV1.0%（%）は，透析群78.4±5.8と対象群79.0±6.9とで有意差をみとめなかった。%MV（%）は，透析群65.5±9.9と対象群65.4±10.7とで有意差をみとめなかった。WBIは，透析群36.8±13.5は，対象群57.3±18.0と比較して有意に低値を示した（P＜0.05）。
【結論】
透析群は，対象群と比較して%VCおよびWBIが低値を示し，拘束性換気障害および有する筋量に見合う筋力が発揮できていない筋出力抑制を呈することが示唆された。拘束性換気障害を呈した要因は，呼吸筋の筋緊張亢進による胸郭可動性低下の影響が仮説立てられる。透析患者では自律神経機能異常を合併することも多く，交感神経過剰活動による呼吸筋緊張亢進が推察されるため，今後の研究課題とする。運動処方に際して，従来のレジスタンストレーニングや有酸素性運動のみならず，胸郭可動性や筋出力の向上を意図した心身機能の評価と介入が必要である。
透析患者は，慢性的な活動量低下や多様な合併症の影響から運動耐容能が低下し，ADL制限，QOL低下，生命予後の悪化をきたす。透析患者に対する理学療法として一般に，運動耐容能の向上を目的に運動処方がなされるが，患者の状態に応じた個別の評価と客観的な効果判定が成されているか課題も残る。基礎疾患によらず慢性疼痛を訴える患者において筋出力抑制や胸郭可動域制限，肺活量低下などの身体機能の特徴が報告されているが，透析患者における検討は十分ではない。そこで本研究では，透析患者における運動機能および呼吸機能を明らかにし，透析理学療法戦略の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は，当院にて維持血液透析療法を受ける患者（以下，透析群）11名（年齢66.9±12.2歳，身長161.1±8.7 cm，男性8名，女性3名），および整形外科疾患患者（以下，対象群）18名（58.4±16.5歳，157.2±10.2 cm，男性4名，女性14名）とした。明らかな呼吸器疾患や中枢神経疾患の診断を受けている者や喫煙者は除外し，いずれも慢性疼痛を訴えて理学療法を受ける者から無作為に抽出した。
電子式診断用スパイロメータ
SP-370 COPD肺Per（フクダ電子）を用いて，対標準肺活量（%VC）および1秒率（FEV1.0%）を測定した。等速性運動機器Isoforce GT-360（OG技研）を用いて，体重支持指数（Weight Bearing Index；WBI）を測定した。WBIは，体重当たりの大腿四頭筋最大等尺性収縮筋力で算出され，重力に抗する全身の運動機能を反映する指標とされる。体成分分析装置Inbody 770（インボディ・ジャパン）を用いて，身体総タンパク量（% Muscle Volume；%MV）を測定した。
統計処理は，R version 3.0.2を用いて対応のないt検定により，各測定項目について透析群と対象群とで比較した。危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
透析群と対象群とで年齢，身長に有意差をみとめなかった。%VC（%）は，透析群72.0±18.0は，対象群98.5±9.1と比較して有意に低値を示した（P＜0.05）。FEV1.0%（%）は，透析群78.4±5.8と対象群79.0±6.9とで有意差をみとめなかった。%MV（%）は，透析群65.5±9.9と対象群65.4±10.7とで有意差をみとめなかった。WBIは，透析群36.8±13.5は，対象群57.3±18.0と比較して有意に低値を示した（P＜0.05）。
【結論】
透析群は，対象群と比較して%VCおよびWBIが低値を示し，拘束性換気障害および有する筋量に見合う筋力が発揮できていない筋出力抑制を呈することが示唆された。拘束性換気障害を呈した要因は，呼吸筋の筋緊張亢進による胸郭可動性低下の影響が仮説立てられる。透析患者では自律神経機能異常を合併することも多く，交感神経過剰活動による呼吸筋緊張亢進が推察されるため，今後の研究課題とする。運動処方に際して，従来のレジスタンストレーニングや有酸素性運動のみならず，胸郭可動性や筋出力の向上を意図した心身機能の評価と介入が必要である。