第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P04

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-DM-04-3] 回復期リハビリテーション病棟における透析患者のADL改善度と在宅復帰率の特徴

非透析患者との比較での検討

伊藤良太 (医療法人偕行会偕行会リハビリテーション病院リハビリテーション部)

Keywords:透析患者, 回復期リハビリテーション病棟, ADL改善度

【はじめに,目的】2012年4月の診療報酬改定により,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)でも人工透析(以下,透析)が出来高算定可能となった。透析クリニックを併設する当院回復期病棟でも透析患者の入院数が増加しているが,透析患者は非透析患者と比べてADLの自立や在宅復帰に難渋することが多い印象を受ける。先行研究では,透析患者は身体機能の低下が著しく,ひとたび脳血管障害などを発症するとADLが著明に低下すると報告されている。しかし,その後にADL改善を図る回復期病棟に入院中の透析患者のADL改善度や在宅復帰率の特徴についての報告は,我々が知る限り少ない。そこで,当院入院歴のある透析患者のFIMと在宅復帰率を調査し,非透析患者と比較検討した。

【方法】対象は2012年10月~2015年6月に当院回復期病棟に入院し,一度も急性転化することなく退院した1237名とし,カルテより後方視的に調査した。対象を透析群63名(平均透析期間9年2ヶ月)と非透析患者1174名の2群に分け,ADL改善度(FIM効率/FIM利得),在宅復帰率,基本情報(年齢/入院疾患/待機日数/在院日数/入院時・退院時FIM点数)を調査した。統計学的分析はR2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。2群間の比較にはMann-Whitney U検定またはχ2検定を用い,結果は平均値(透析群/非透析群)で示した。

【結果】FIM効率(点/日)は運動項目0.16/0.20(p<0.05);認知項目0.02/0.02,FIM利得(点)は運動項目11.9/14.2;認知項目1.4/1.9でFIM運動項目効率にのみ有意差がみられた。在宅復帰率(%)は82.5/84.6で有意差はみられなかった。年齢(歳)は71.7/74.5(p<0.01),待機日数(日)は31.9/28.0(p<0.01)でいずれも有意差がみられた。入院疾患(%)は脳血管疾患41.3/49.2;運動器疾患47.6/43.2;廃用症候群11.1/7.3,在院日数(日)は74.6/73.5,入院時FIM(点)は運動項目50.3/53.2;認知項目24.3/24.4で有意差はみられなかった。退院時FIM(点)は運動項目62.3/67.4(p<0.05);認知項目25.7/26.2で運動項目にのみ有意差がみられた。

【結論】両群間で入院時FIM点数・在院日数・在宅復帰率に有意差はみられなかったが,透析群のFIM運動項目効率と退院時FIM運動項目点数は有意に低値であったことから,透析患者は非透析患者と比べて回復期病棟入院中に運動を伴うADLの効率的な改善が困難で,ADL自立が不十分のまま在宅復帰する者が多い特徴がみられた。これは我々の臨床上の印象と一致する結果となった。透析患者の運動を伴うADL改善度が低い理由として,先行研究で報告されている,病前から活動量が少ないこと,透析後の倦怠感などにより効果的な運動療法が困難なこと,低栄養や骨格筋変化により運動療法の効果が得られにくいことなどが考えられる。さらに要因分析を行い,透析患者への有効な介入方法を検討したい。