第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P04

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-DM-04-4] 中足骨頭下に頂点が位置するRocker Soleが歩行時の下肢関節運動に及ぼす影響

渡部祥輝, 河辺信秀 (茅ヶ崎リハビリテーション専門学校理学療法学科)

Keywords:Rocker Sole, 歩行, 糖尿病足病変

【はじめに,目的】

糖尿病足病変患者の治療及び予防を目的に,アウトソール加工であるRocker Sole(RS)が用いられる。RSは歩行時のロッカー機構を代償することで,前足部足底圧を減少させる効果が報告されている(brown, et al., 2004)。RSが歩行中の下肢関節運動に及ぼす影響に関して,足関節へ影響するといった報告や,足関節に変化はみられなかったとする報告があり,一定の見解が得られていない(sobhani, et al., 2013,demura, et al., 2012)。また,その他の下肢関節に対する影響は十分に検討されていない。そこで本研究の目的は歩行時のロッカー機構を代償するRSが,立脚期における下肢関節運動に与える影響を検討することとした。


【方法】

対象は健常若年男性7名(22.7±2.4歳,足長:25.1±0.2cm)とした。実験には三次元動作解析装置(MA-3000,アニマ社製),赤外線反射マーカー12個,post-operative shoe(DARCO社製),義肢装具士が作成したRocker Sole(足長25~25.5cm用,ロッカーの頂点は中足骨頭下に設定)を使用した。課題条件はpost-operative shoe装着での歩行(RS無)と,RS装着での歩行(RS有)の2条件とした。RSは右足に装着し,反対側には高さを合わせるため,補高をした。課題動作は8m(助走,終走1.5m)の歩行路での快適歩行とした。課題動作は各条件20回測定し,その平均値を代表値とした。歩行速度は事前に計測した速度の±10%とし,範囲を外れた場合は再測定した。測定項目は,踵離地,つま先離地時の股関節,膝関節,足関節の矢状面角度,足関節最大背屈角度とした。解析区間は歩行開始から1歩行周期後の右立脚期とした。統計解析はspss for windows 15.0Jを用い,2条件間の比較を,Wilcoxonの符号付き順位検定を実施した。統計学的有意水準は5%とした。


【結果】

結果は中央値(四分位範囲)で示す。足関節最大背屈角度では2条件間に有意な差を認めなかった(RS無:9.8°(7.8-13.2),RS有:9.9°(6.3-11.5),p=0.18)。踵離地,つま先離地時の股関節,膝関節,足関節角度においても有意な差は認められなかった。

【結論】

本研究の結果,RSの歩行立脚期における下肢関節角度に与える影響は小さいことが示唆された。ロッカーの頂点が中足骨頭下に位置するRSでは,正常に近いフォアフットロッカーが再現され,下肢関節運動に影響を及ぼさなかった可能性がある。RSは糖尿病足病変患者の前足部足底圧軽減を目的に用いる。糖尿病足病変患者の前足部足底圧上昇には足関節背屈制限が強く関与している。RSには足関節背屈運動の軽減効果も報告されているが,本研究では足関節最大背屈角度に差を認めなかった。このことから,中足骨頭下に頂点を設定したRSでは通常と同様の背屈角度が必要であり,糖尿病足病変患者の足関節背屈制限の代償,前足部足底圧減少の効果が小さい可能性が考えられる。本研究では対象が少数であり,対象を増やすことで違った結果が得られる可能があるため,さらなる検証が必要である。