第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P05

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-DM-05-4] 糖尿病性多発神経障害の有無における身体機能・身体組成についての検討

甘利貴志1,2, 藤田博曉2, 大久保栄造3, 堀内俊樹1, 坂本祐太1, 大森舞子1, 渡邉浩文1 (1.笛吹中央病院リハビリテーション科, 2.埼玉医科大学大学院医科学専攻理学療法学分野, 3.笛吹中央病院内科)

キーワード:糖尿病性神経障害, 身体機能, 身体組成

【はじめに,目的】

糖尿病患者における合併症は患者のQOLが著しく損なわれるだけでなく,患者の生命予後に重大な影響を及ぼす。その中でもDPN(Diabetic Polyneuropathy:糖尿病性多発神経障害)は比較的早期に出現する。近年ではDPNと転倒の関連性が報告されており,糖尿病患者のバランス能力低下が報告されている。教育入院患者を対象とした報告が多い一方,外来患者を対象とした報告は少ない。外来患者では,糖尿病教室において運動指導をする機会があるが,DPNに気づいていないことが多く,早期から身体機能が低下している可能性がある。そこで本研究では外来通院患者に対してDPNの有無で身体機能,身体組成の比較を行なった。


【方法】

対象は当院の内科外来を受診している患者32名(男性22名,女性10名,平均年齢62.5±7.3歳,体重68.4±16.9kg,BMI25.0±4.8,HbA1c7.0±1.0)である。

身体機能測定は,膝伸展筋力,握力,開眼片脚立位,Functional Reach Test(以下,FRT),6m歩行テストを行った。身体組成評価は,体成分分析装置In Body720(バイオスペース社製)を使用し,補正四肢筋肉量,下肢筋量,体脂肪率,BMIを測定した。アンケートでは運動習慣の有無,身体活動量の指標にて国際標準化身体活動量質問票short version,QOL評価にてEuro QOL-5Dimension(以下EQ-5D)を調査した。なお,DPNの有無は糖尿病性末梢神経障害の簡易診断基準に準じて糖尿病専門医が診断した。

統計学的解析は,対象者をDPN群と非DPN群に分類し,身体機能,身体組成,アンケートの各項目の測定値の群間比較はt検定を用いて検討した。また,DPN群,非DPN群と性別,運動習慣の有無,身体活動量についてはカイ二乗検定を用いて分析を行った。解析はJMP ver11を用いた。統計学的有意水準は5%とした。


【結果】

DPN群,非DPN群の身体機能の比較では,FRTでDPN群において有意な低下を認めた(p<0.05)。膝伸展筋力,握力,片脚立位時間,6mの歩行速度,歩幅では有意差は認めなかった。また,身体組成,アンケートの各項目では有意差は認めなかった。


【結論】

本研究において,DPN群でFRTが有意に低下した。本研究の対象者は,比較的血糖コントロール良好な患者であるがDPN群はバランス能力がより低下していることが示された。DPNの症状は感覚障害が早期に出現するとされている。DPN群において,重心を前方に移動し,より末梢の感覚情報が必要となるFRTにおいて低値を示したと考える。高齢者において,バランス能力の低下は転倒に深く関与する。本研究の結果,外来糖尿病教室では,既存の血糖コントロール指導に加え,DPNの評価を行い,バランス能力の改善を図ることや,転倒予防を含めた生活指導を行うことが必要と考えられる。