[P-DM-05-6] 糖尿病性末梢神経障害患者に対するリズミカルな音刺激を用いた運動療法が歩行時の下腿筋同時収縮ならびに歩行の動揺性に与える効果
―Randomized Controlled Trialによる検討―
キーワード:糖尿病性末梢神経障害, 音刺激, 歩行機能
【はじめに,目的】
糖尿病(以下DM)患者が患う合併症のうち最も多く,早期に起きるものに糖尿病性末梢神経障害(以下DPN)がある。DPN患者の歩行機能はDM患者と比較して低下しており,転倒や身体活動量低下の要因であるため,理学療法士の介入意義は大きい。しかしDPN患者の歩行機能の低下に対して,下腿筋同時収縮(以下CC)の関与は明らかになっているが,効果的な介入方法については明らかになっていない。そこで本研究ではリズミカルな音刺激(以下RAS)に着目した。RAS歩行はメトロノームの音に合わせて歩行を行う介入方法であり,様々な疾患で効果が示されている。本研究の目的はDPN患者の歩行機能を改善させる介入方法を明らかにすることとし,RASを用いた運動療法の効果について検討を行った。
【方法】
対象は当院に教育入院したDPN患者40名とし,無作為にRAS群20名,対照群20名に振り分けた。介入期間は1週間とし両群に標準的な運動指導を行い,RAS群は自己選択した電子メトロノームのテンポに合わせた歩行を実施した。歩行運動は毎日毎食後20分間とした。評価は介入前後に自己快適速度による10m歩行テストを実施し,CCの指標としてCo-contraction Index(以下CCI)と歩行の動揺性の指標としてRoot Mean Square(以下RMS)を用いた。CCIの測定には表面筋電計を用い,対象筋は前脛骨筋とヒラメ筋とした。RMSの測定には3軸加速度計を用い,第3腰椎棘突起部に貼付し,速度の2乗値で除した値を用いた。統計学的解析は各群の介入前後の比較に対応のあるt検定を用い,群間の比較は介入前後の変化量に対して年齢,性別,介入中の歩数を共変量とした共分散分析を実施した。統計処理はIBM SPSS version 22を用いて行い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
RAS群のCCIは介入前49.31±11.82%,介入後42.70±11.55%,RMSは介入前21.41±3.93 m/sec2,介入後18.35±3.05 m/sec2となり,CCI,RMSともに介入後で有意に低下した(p<0.05)。対照群のCCIは介入前48.31±11.43%,介入後47.09±10.05%,RMSは介入前22.08±4.44 m/sec2,介入後20.71±3.98 m/sec2であり,RMSは有意に低下したが(p<0.05),CCIに有意差は認められなかった(p=0.42)。また,共分散分析による介入前後の変化量に対する群間比較では,CCI,RMSともにRAS群にて有意に低値を示した(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果より,DPN患者に対するRASを用いた運動療法は歩行時のCCと動揺性を低下させることが明らかとなった。RASは側頭葉のリズム中枢を刺激し,歩行中の筋活動のタイミングを改善させることが報告されている。また,歩行時の主動作筋と拮抗筋の適切な活動は関節運動を滑らかにし,歩行機能を向上させる。本研究においてもRASによってCCが低下し,歩行の動揺性が低下したと考えられる。本研究はDPN患者の歩行機能に対するRASの効果を示した最初の研究であり,DPNの歩行治療の発展に寄与できたと考える。
糖尿病(以下DM)患者が患う合併症のうち最も多く,早期に起きるものに糖尿病性末梢神経障害(以下DPN)がある。DPN患者の歩行機能はDM患者と比較して低下しており,転倒や身体活動量低下の要因であるため,理学療法士の介入意義は大きい。しかしDPN患者の歩行機能の低下に対して,下腿筋同時収縮(以下CC)の関与は明らかになっているが,効果的な介入方法については明らかになっていない。そこで本研究ではリズミカルな音刺激(以下RAS)に着目した。RAS歩行はメトロノームの音に合わせて歩行を行う介入方法であり,様々な疾患で効果が示されている。本研究の目的はDPN患者の歩行機能を改善させる介入方法を明らかにすることとし,RASを用いた運動療法の効果について検討を行った。
【方法】
対象は当院に教育入院したDPN患者40名とし,無作為にRAS群20名,対照群20名に振り分けた。介入期間は1週間とし両群に標準的な運動指導を行い,RAS群は自己選択した電子メトロノームのテンポに合わせた歩行を実施した。歩行運動は毎日毎食後20分間とした。評価は介入前後に自己快適速度による10m歩行テストを実施し,CCの指標としてCo-contraction Index(以下CCI)と歩行の動揺性の指標としてRoot Mean Square(以下RMS)を用いた。CCIの測定には表面筋電計を用い,対象筋は前脛骨筋とヒラメ筋とした。RMSの測定には3軸加速度計を用い,第3腰椎棘突起部に貼付し,速度の2乗値で除した値を用いた。統計学的解析は各群の介入前後の比較に対応のあるt検定を用い,群間の比較は介入前後の変化量に対して年齢,性別,介入中の歩数を共変量とした共分散分析を実施した。統計処理はIBM SPSS version 22を用いて行い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
RAS群のCCIは介入前49.31±11.82%,介入後42.70±11.55%,RMSは介入前21.41±3.93 m/sec2,介入後18.35±3.05 m/sec2となり,CCI,RMSともに介入後で有意に低下した(p<0.05)。対照群のCCIは介入前48.31±11.43%,介入後47.09±10.05%,RMSは介入前22.08±4.44 m/sec2,介入後20.71±3.98 m/sec2であり,RMSは有意に低下したが(p<0.05),CCIに有意差は認められなかった(p=0.42)。また,共分散分析による介入前後の変化量に対する群間比較では,CCI,RMSともにRAS群にて有意に低値を示した(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果より,DPN患者に対するRASを用いた運動療法は歩行時のCCと動揺性を低下させることが明らかとなった。RASは側頭葉のリズム中枢を刺激し,歩行中の筋活動のタイミングを改善させることが報告されている。また,歩行時の主動作筋と拮抗筋の適切な活動は関節運動を滑らかにし,歩行機能を向上させる。本研究においてもRASによってCCが低下し,歩行の動揺性が低下したと考えられる。本研究はDPN患者の歩行機能に対するRASの効果を示した最初の研究であり,DPNの歩行治療の発展に寄与できたと考える。