第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P01

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-ED-01-5] キャリア教育と協同学習を取り入れた情報リテラシー教育の試み

入学初年度における能動的学習態度とキャリア意識の形成に向けて

門馬博, 八並光信 (杏林大学保健学部理学療法学科)

Keywords:キャリア教育, 協同学習, アクティブラーニング

【はじめに,目的】近年,入学定員の増加などの要因により,理学療法士卒前教育は入学動機の多様化,学生の受動的学習態度など,様々な教育的課題を抱えているといえる。特に近年の臨床実習に関する報告から,理学療法に関する知識だけでなく,能動的な学習態度,専門職としてのキャリア意識の形成が卒前教育において非常に重要な要素であると考えられる。そこで今回,本学初年度前期に開講されている「情報処理論」を通じ,能動的学習態度とキャリア意識の形成を目的として協同学習の形式を取り入れた情報リテラシー教育の講義を行った。「情報処理論」の講義目標は,その後の大学教育において必要となるコンピュータスキルの修得と,文献資料の検索を含めた総合的情報リテラシーの習得である。今回,これらの取り組みをふまえ「情報処理論」の講義内容に関するアンケート調査を行ったので報告する。


【方法】対象は「情報処理論」を受講した理学療法学科1学年52名。講義の内容は「理学療法士の働くフィールド」「2025年問題と理学療法士に求められること」といった理学療法に関するテーマのレポート作成,医療施設における職種別従事者数の推移など医療に関わる内容を通じた表計算とグラフ作成,興味のある疾患についてのポスター作成とプレゼンテーションを15回の講義にて行った。学生には講義時間中は周囲の同級生とコミュニケーションを取りながら課題を行うよう促し,教員はファシリテーターとして巡回する形式で講義を行った。アンケート調査は全講義終了後に受講者を対象として5件法の質問紙を用い,無記名にて行った。アンケートの内容は講義受講前後のコンピュータスキルの自己評価(インターネットの活用,Microsoft Word,Excel,PowerPoint),講義内で課した課題量と難易度,講義が理学療法士としての目標設定に役立ったかどうか,講義のための自主学習時間,講義の満足度について聴取した。


【結果】コンピュータスキルの自己評価は「5:できる~1:できない」とし,Word(受講前平均4.38,受講後平均4.62),Excel(前2.96,後3.76),PowerPoint(前3.60,後4.27)と有意な改善が認められた。一方でインターネットの活用に変化は認められなかった(前4.64,後4.73)。理学療法士としての目標設定に役立ったかについては5点満点中の4.07点,講義の満足度は4.44点であった。自由記載欄にはコンピュータスキルの修得だけでなく,理学療法の様々な側面を知ることができて有意義であったという記載がみられた。


【結論】理学療法士の卒前教育において早期臨床暴露(Early Exposure)はその後の学習に有益であるとされている。入学生の動機,知識にばらつきのある初年度の講義として,本講義の形式は理学療法の様々な情報に対するEarly Exposureを促す機会になったと考える。