[P-ED-03-3] 患者参加型の目標設定の効果と意思決定過程における満足度との関係性
Keywords:目標設定, 意思決定, 回復期
【はじめに,目的】
リハビリテーション(リハビリ)では患者の背景や希望などを考慮し,支援内容や治療方針を決定することが求められており,目標や治療の意思決定過程に患者を参加させることが重要とされている。患者の参加を促すために意思決定支援などを用いた目標設定の研究では,心理機能やリハビリ参加意欲,QOLへの効果が報告されている。一方,目標設定における患者の参加に関して,療法士と患者の間で認識に相違があるとされており,療法士は患者が参加したと思っている一方で,いくつかの患者は参加していないと認識していた。そのため,目標設定への患者の参加を促したとしても,全ての患者が満足のいく決定ができているとは限らず,意思決定過程の満足度の違いによっても効果が異なる可能性ある。そこで今回,回復期リハビリ病棟入院患者を対象に患者参加型の目標設定を実施し,意思決定過程の満足度がその効果に影響するのかを検討した。
【方法】
対象は回復期リハビリ病棟の入院患者20名(年齢77.6±8.9歳,男性7名,女性13名,運動器疾患13名,脳血管疾患6名,廃用症候群1名)。除外基準はMini Mental State Examinationが24点未満のもの,精神疾患の既往のあるもの,重度の視覚・聴覚障害のあるものとした。今回,患者参加型の目標設定としてライフゴール概念を用いた。この概念は患者の関心のある生活領域を評価しリハビリの目標や治療に応用するものである。評価は初期評価を入院時,最終評価を1ヶ月後に実施した。評価項目は不安と抑うつをHospital Anxiety and Depression Scale(HADS),精神的健康感をGeneral Health Questionnaire-12(GHQ),リハビリ参加意欲をPittsburgh Rehabilitation Participation Scale(PRPS),日常生活活動をFunctional Independence Measure(FIM)を用いた。また,最終評価時にアンケートを実施し,意思決定過程の満足度をMan Son Hing Scale(MSH),主観的な改善度をClinical Global Impression(CGI)で測定した。統計解析は,各評価項目の初期と最終の比較にWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。また,各評価項目の変化量と意思決定過程の満足度との関係性を検討するためにSpearmanの順位相関係数を求めた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
初期と最終評価の間で不安(6.2±4.7,4.2±3.1,P<0.05),GHQ(3.7±3.2,2.1±2.8,P<0.01),PRPS(4.9±0.5,5.3±0.4,P<0.01),FIM(89.8±17.7,104.2±14.1,P<0.01)に有意な改善を認めた。また,MSHと各評価項目の変化量との関係性はGHQ変化量(ρ=0.57,P<0.01),FIM変化量(ρ=-0.52,P<0.05),CGI(ρ=0.62,P<0.01)で有意な相関を認めた。
【結論】
患者参加型の目標設定を実施した中でも,意思決定過程の満足度の高いものの方がより心理機能やADLへの影響も大きく,意思決定過程における療法士のコミュニケーションスキルも重要である可能性が考えられた。
リハビリテーション(リハビリ)では患者の背景や希望などを考慮し,支援内容や治療方針を決定することが求められており,目標や治療の意思決定過程に患者を参加させることが重要とされている。患者の参加を促すために意思決定支援などを用いた目標設定の研究では,心理機能やリハビリ参加意欲,QOLへの効果が報告されている。一方,目標設定における患者の参加に関して,療法士と患者の間で認識に相違があるとされており,療法士は患者が参加したと思っている一方で,いくつかの患者は参加していないと認識していた。そのため,目標設定への患者の参加を促したとしても,全ての患者が満足のいく決定ができているとは限らず,意思決定過程の満足度の違いによっても効果が異なる可能性ある。そこで今回,回復期リハビリ病棟入院患者を対象に患者参加型の目標設定を実施し,意思決定過程の満足度がその効果に影響するのかを検討した。
【方法】
対象は回復期リハビリ病棟の入院患者20名(年齢77.6±8.9歳,男性7名,女性13名,運動器疾患13名,脳血管疾患6名,廃用症候群1名)。除外基準はMini Mental State Examinationが24点未満のもの,精神疾患の既往のあるもの,重度の視覚・聴覚障害のあるものとした。今回,患者参加型の目標設定としてライフゴール概念を用いた。この概念は患者の関心のある生活領域を評価しリハビリの目標や治療に応用するものである。評価は初期評価を入院時,最終評価を1ヶ月後に実施した。評価項目は不安と抑うつをHospital Anxiety and Depression Scale(HADS),精神的健康感をGeneral Health Questionnaire-12(GHQ),リハビリ参加意欲をPittsburgh Rehabilitation Participation Scale(PRPS),日常生活活動をFunctional Independence Measure(FIM)を用いた。また,最終評価時にアンケートを実施し,意思決定過程の満足度をMan Son Hing Scale(MSH),主観的な改善度をClinical Global Impression(CGI)で測定した。統計解析は,各評価項目の初期と最終の比較にWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。また,各評価項目の変化量と意思決定過程の満足度との関係性を検討するためにSpearmanの順位相関係数を求めた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
初期と最終評価の間で不安(6.2±4.7,4.2±3.1,P<0.05),GHQ(3.7±3.2,2.1±2.8,P<0.01),PRPS(4.9±0.5,5.3±0.4,P<0.01),FIM(89.8±17.7,104.2±14.1,P<0.01)に有意な改善を認めた。また,MSHと各評価項目の変化量との関係性はGHQ変化量(ρ=0.57,P<0.01),FIM変化量(ρ=-0.52,P<0.05),CGI(ρ=0.62,P<0.01)で有意な相関を認めた。
【結論】
患者参加型の目標設定を実施した中でも,意思決定過程の満足度の高いものの方がより心理機能やADLへの影響も大きく,意思決定過程における療法士のコミュニケーションスキルも重要である可能性が考えられた。