第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P04

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-04-1] 臨床実習における不安と意欲低下について

臨床実習で生じる人間関係に着目して

松井奈穂子, 越智久雄, 中平剛志, 笠原弘樹, 宗野寿恵, 安藤卓, 西村朋浩, 大川真司 (大阪リハビリテーション専門学校)

キーワード:臨床実習, 人間関係, 意欲低下

【はじめに,目的】

理学療法士養成課程における臨床実習(以下,実習)は,患者や指導者と直接的な関わりを通じて,理学療法士に必要な臨床的知識・技術・態度の理解を深めることである。我々は,第50回日本理学療法学術大会で報告した実習中の意欲低下と向上に影響を及ぼす因子の中で人間関係が重要な要因となる結果を得た。そこで,実習前の人間関係における不安が実習中の意欲低下と関係性があるかどうかについて着目し,考察したので報告する。

【方法】

本校理学療法学科(3年生課程・夜間部)の過去3年間の学生99名(平均年齢29.4±5.5歳)を対象とした。調査方法は独自に作成したアンケート用紙を用いて行った。調査内容は23項目(実習前の不安11項目,実習中の意欲低下12項目)に対し,「強く思う」,「思う」,「そう思わない」,「強く思わない」の4件法を用いて回答を得た。不安11項目のうち人間関係に関わる3項目(指導者との人間関係,患者との人間関係,訪問教員との人間関係)の「強く思う」と回答した割合と意欲低下12項目(症例数が多くなる,課題が多くなる,叱責される,認めてもらえない,指導内容が理解できない,見学ばかりの時,課題が重なった時,治療が上手くいかなかったとき,指導者とのコミュニケーションが取りにくい時,指導やフィードバックが少ない時,指導者の患者に対する態度が悪い時,患者と上手く関わりが持てない時)に対して,「強く思う」,「思う」を「思う群」とし,「そう思わない」,「強く思わない」を「思わない群」の2群化し,分析した。調査時期は最終学年(3年次)の,8週間の最終長期実習前後に行い,実習前に回答した不安と実習後に回答した意欲低下とした。分析方法は,χ2乗検定を利用し,有意水準5%未満とした。

【結果】

実習前の不安と実習中の意欲低下において,関係性はみられなかった。しかし,実習前の不安において「強く思う」と回答した割合は「指導者との人間関係」58.6%,「患者との人間関係」39.4%,「訪問教員との人間関係」18.2%であった。また,実習中の意欲低下において「思う群」で回答した割合が高かった5項目は「指導者の患者に対する態度が悪い時」97.0%,「指導内容が理解できない」94.9%,「指導者とのコミュニケーションが取りにくい時」88.9%,「患者と上手く関わりが持てない」88.9%,「認めてもらえない」86.9%であった。

【結論】

今回,実習前の不安と実習後の意欲低下に関係性はみられなかったが,学生は実習に臨む上で指導者との人間関係に不安を感じており,実習中は「指導者の患者に対する態度」が学生の意欲を抑制する一因になると考えられる。この事は,臨床現場で意欲を持って,臨床的知識・技術・態度の理解を深めようとする学生の行動に大きく影響を及ぼす因子に成り得るので,今後の学生指導を行う上で留意していきたい。