第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P04

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-04-2] 長期臨床実習における実習生の抑うつ度と意欲の変化について

クリニカルクラークシップの効果

串浦龍司, 阪本良太, 金澤壽久 (大野記念病院リハビリテーション科)

Keywords:クリニカルクラークシップ, 臨床実習, 心理テスト

【はじめに】長期臨床実習は在学中で最もストレスが強い時期の一つである。しかし,このような学生心理を無視した実習指導者のstudent abuseにより,臨床学習の機会を失ってしまうケースも少なくない。当院では平成25年度より臨床教育場面にクリニカルクラークシップ(以下CCS)を取り入れ,実習生に対する臨床教育場面での学習の機会を適切に提供できるようにしている。今回,CCSを実践することにより,実習生の心理的ストレスについて調査し,臨床場面での学習の場として適切かどうかについて検討したので報告する。

【方法】対象は平成25年6月から平成27年9月までの期間に当院にて長期臨床実習を実施した実習生14名(男性11名,女性3名,平均年齢21.1±0.5歳)とした。方法として,抑うつ度と意欲を評価し,実習前後で比較を行った。また実習期を初めての長期実習となるI期と2回目の長期実習となるII期に分けてそれぞれで比較を行った。抑うつ度の評価にはうつ病自己評価尺度(Self-rating Depression Scale;以下SDS)を用い,トータルスコアと下位項目として生理現象に該当する項目を抽出したスコア(生理スコア)で比較を行った。意欲の評価にはやる気スコアを用いて比較を行った。分析方法は全て対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした。

【結果】長期臨床実習におけるSDSのトータルスコアの変化は38.1±6.9点から35.5±7.2点,SDSの生理スコアの変化は12.2±2.7点から11.1±2.8点,やる気スコアの変化は12.2±4.5点から11.6±4.6点となり,改善傾向は認められたが有意差は無かった。I期のSDSのトータルスコアの変化は35.4±6.8点から35.8±8.1点,SDSの生理スコアの変化は10.8±3.3点から10.6±2.3点,やる気スコアの変化は10.4±3.6点から10.4±3.9点と有意差は無かった。II期のSDSのトータルスコアの変化は39.6±6.9点から35.3±7.2点,SDSの生理スコアの変化は13.0±2.2点から11.3±3.1点となり,それぞれ有意(p<0.05)な改善を認めた。やる気スコアについては14.1±5.7点から12.1±4.5点へと改善傾向は認めたが有意差は無かった。

【結論】今回の研究によりCCSが長期臨床実習における抑うつ度を減少させ,特に生理現象に好影響を与える事が示唆された。特にII期でそれが顕著であった事から,当院で長期臨床実習を行う前に別の施設で実習を受けてきた実習生においてその効果が大きい事が示された。その実習生の特徴としてSDSのトータルスコアがうつ状態と診断される基準である40点に近く,抑うつ度が高い状態で当院での長期臨床実習が開始された事が推察された。CCSは,認知的徒弟制,正統的周辺参加をベースとした診療参加型実習である。実習生を診療チームの一員として迎え入れ,支持的風土の中で臨床教育が進められる実習形態であり,実習生の心身に好影響を与え,適切な臨床実習教育を行える実習方法である事が確かめられた。