第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P04

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-04-3] 臨床総合実習において理学療法学生に生じるストレス反応の継時変化

角田晃啓1,2, 澤田優子1,2, 木内隆裕1,2, 中正美1,2, 金尾顕郎1,2 (1.森ノ宮医療大学, 2.森ノ宮医療大学大学院)

Keywords:臨床実習, ストレス, 唾液アミラーゼ

【はじめに,目的】理学療法士養成課程における学外臨床実習は,指定規則により810時間以上行われることが義務付けられており,これは多くの養成校において全カリキュラムのおよそ20%を占めるものである。その間,学生は学外の実習指導者(以下,SV)の指導を受けるが,実習を通して患者との関係や療法士としての役割,SVとの人間関係など非常に多くのストレッサーに曝されることが知られている。これまでに行われた先行調査の多くは,実習開始前・終了後の2時点での観察に基づいた学生の主観的な振り返りの要素を含むものが多い。そこで本研究は実習期間を通じて継続的・客観的なストレス評価を行い,実習期間中に生じるストレス反応を明らかにすることで,学生指導への一助とすることを目的として実施した。

【方法】平成27年度に開講された4年次「臨床総合実習」(8週間)を受講し,A病院にて実習を行った14名(男性12名,女性2名,平均年齢21.7±0.5歳)の学生を対象に調査を実施した。実習期間中のストレス反応について,唾液アミラーゼモニター(NIPRO社製)により唾液中に含まれるα-アミラーゼ含有量(KIU/L)を測定した。ストレス反応の評価は実習開始5週目以降,週に2,3回の頻度で実施した。また,この間に課された学生への課題を記録した。ストレス反応の経時変化についてKruskal-Wallis検定を行った。また,各対象におけるストレス反応について等分散性の検定を行った。

【結果】実習期間中に学生全体に課された課題と各週におけるストレス反応(mean±SD)は次の通りであった。すなわち,5週目:治療実施(14.4±12.4),6週目:症例報告レポート作成(10.3±5.5),7週目:症例報告会実施(12.0±7.3),8週目:文献抄読(12.6±7.9)であった。これに伴うストレス反応に有意差はみられなかった(p=0.833)。また,各学生におけるストレス反応について等分散性を認めなかった。

【結論】実習期間,すなわち実習課題によってストレス反応の差は認められなかった。特に,臨床実習における症例報告レポートは実習中における重大なストレッサーであると報告されている(本多ら. 2013)が,本研究においてはこれと反する結果がみられた。一方で,学生毎にみられたストレス反応の推移に等分散性を認めなかったことから,実習中に受けるストレスについては学生個人の特性によるものが大きいと推察される。今後,さらに検討を重ねることで,ストレッサーへの動揺性に影響を与える個人因子についての検討を行っていく必要があるものと考える。また,唾液アミラーゼによるストレス評価は急性ストレス反応への感受性が高いと報告されているものの,慢性ストレス反応の評価については課題が残る。そこで,今回,測定時間を限定し,測定条件を同時刻・同条件とすることでできる限り統一した。今後,交感神経活性など,唾液アミラーゼ以外の指標を用いて日内補正を行う必要があると考えられる。