[P-ED-04-4] 理学療法学生における臨床実習関連ストレスの対処方略の特徴とストレス度との関連性
Keywords:臨床実習, ストレス, 対処方略
【はじめに,目的】
臨床実習は理学療法学生に対する卒前教育の要であるとともに,理学療法学生にとっては養成校とはまったく異なる環境での学びとなるためストレスフルなものでもある。これまでに理学療法学生の臨床実習関連ストレスの対処方略について調査が重なられているものの,対処方略とストレス度との関連性については十分に明らかにされていない。そこで,本研究の目的を,臨床実習関連ストレスをかかえた理学療法学生に対する支援の方法を検討するための基礎的資料を得ることとし,対処方略の実態とともにストレス度との関連性を検証した。
【方法】
ある理学療法士養成校1校の3・4年生に対して臨床実習後1週以内に調査を行い実習当時のストレス対処方略およびストレス度について想起してもらった。ストレスの対処方略の調査には信頼性が確認されているTAC-24を用い,ストレス度の調査には0点を「まったくストレスを感じなかった」,10点を「最大限のストレスを感じていた」と定義した数値化スケールを用いた。なお,TAC-24は情報収集,放棄・諦め,肯定的解釈,計画立案,回避的思考,気晴らし,カタルシス,責任転嫁の8つの対処方略の使用頻度を問う質問紙であり,高得点であるほど使用頻度が高いことを表わす。各対処方略の得点分布を確認したのち,対処方略およびストレス度の間の効果量r(Spearmanの順位相関係数)を算出した。効果量の算出にあたっては性別と学年を制御変数として用いた。
【結果】
76人のうち66人(4年生31人,3年生35人;男性43人,女性23人;年齢の中央値22歳)から完全な回答が得られた(回答率86.8%)。情報収集,放棄・諦め,肯定的解釈,計画立案,回避的思考,気晴らし,カタルシス,責任転嫁の中央値はそれぞれ9点,5.5点,10点,10点,7点,8点,10点,4点であり,肯定的解釈および計画立案,カタルシスの使用頻度が比較的高かった。計画立案と情報収集および肯定的解釈との間の効果量はそれぞれ0.37(95%信頼区間0.14~0.57),0.28(同0.03~0.49)であった一方,放棄・諦めとの間の効果量は-0.27(同-0.48~-0.02)であった。放棄・諦めと責任転嫁との間の効果量は0.47(同0.25~0.64)であった。また,ストレス度と肯定的解釈との間の効果量は-0.27(同-0.48~-0.02)であった。
【結論】
ある養成校の理学療法学生は,臨床実習で課題に直面したとき,それを解決するために,粘り強く前向きに対処する傾向にあることが明らかとなった。また,肯定的解釈方略を頻繁に選択する学生ほどストレス度が低かった。以上より,臨床実習関連ストレスの低減のためには肯定的解釈方略に代表される適応的対処方略の使用を高めるように対応することが有効であるとの仮説が得られた。本研究は横断調査であり対処方略とストレス度との間の因果関係について言及することができないため,縦断的な調査を行うことで上記仮説の検討を行う必要がある。
臨床実習は理学療法学生に対する卒前教育の要であるとともに,理学療法学生にとっては養成校とはまったく異なる環境での学びとなるためストレスフルなものでもある。これまでに理学療法学生の臨床実習関連ストレスの対処方略について調査が重なられているものの,対処方略とストレス度との関連性については十分に明らかにされていない。そこで,本研究の目的を,臨床実習関連ストレスをかかえた理学療法学生に対する支援の方法を検討するための基礎的資料を得ることとし,対処方略の実態とともにストレス度との関連性を検証した。
【方法】
ある理学療法士養成校1校の3・4年生に対して臨床実習後1週以内に調査を行い実習当時のストレス対処方略およびストレス度について想起してもらった。ストレスの対処方略の調査には信頼性が確認されているTAC-24を用い,ストレス度の調査には0点を「まったくストレスを感じなかった」,10点を「最大限のストレスを感じていた」と定義した数値化スケールを用いた。なお,TAC-24は情報収集,放棄・諦め,肯定的解釈,計画立案,回避的思考,気晴らし,カタルシス,責任転嫁の8つの対処方略の使用頻度を問う質問紙であり,高得点であるほど使用頻度が高いことを表わす。各対処方略の得点分布を確認したのち,対処方略およびストレス度の間の効果量r(Spearmanの順位相関係数)を算出した。効果量の算出にあたっては性別と学年を制御変数として用いた。
【結果】
76人のうち66人(4年生31人,3年生35人;男性43人,女性23人;年齢の中央値22歳)から完全な回答が得られた(回答率86.8%)。情報収集,放棄・諦め,肯定的解釈,計画立案,回避的思考,気晴らし,カタルシス,責任転嫁の中央値はそれぞれ9点,5.5点,10点,10点,7点,8点,10点,4点であり,肯定的解釈および計画立案,カタルシスの使用頻度が比較的高かった。計画立案と情報収集および肯定的解釈との間の効果量はそれぞれ0.37(95%信頼区間0.14~0.57),0.28(同0.03~0.49)であった一方,放棄・諦めとの間の効果量は-0.27(同-0.48~-0.02)であった。放棄・諦めと責任転嫁との間の効果量は0.47(同0.25~0.64)であった。また,ストレス度と肯定的解釈との間の効果量は-0.27(同-0.48~-0.02)であった。
【結論】
ある養成校の理学療法学生は,臨床実習で課題に直面したとき,それを解決するために,粘り強く前向きに対処する傾向にあることが明らかとなった。また,肯定的解釈方略を頻繁に選択する学生ほどストレス度が低かった。以上より,臨床実習関連ストレスの低減のためには肯定的解釈方略に代表される適応的対処方略の使用を高めるように対応することが有効であるとの仮説が得られた。本研究は横断調査であり対処方略とストレス度との間の因果関係について言及することができないため,縦断的な調査を行うことで上記仮説の検討を行う必要がある。