[P-ED-05-1] 認知スキルルーブリックのもつ可能性
キーワード:認知スキル, ルーブリック, コード分類
【はじめに,目的】
日本の理学療法教育の歴史は半世紀を過ぎ,臨床実習における教育方法の見直しと新たな教育方法の確立が喫緊の課題となっている。当学院では平成25年度よりクリニカル・クラークシップ(以下,CCS)を一部の実習施設で導入しており,その効果や問題点について検討を重ねている。CCSでは,学生はチェックリストを手掛かりに技術的な指導を繰り返し受けることで臨床経験を多く積み,意欲の向上に繋がっていたが,臨床実習指導者(以下,指導者)は認知的な指導が行き届かず,臨床思考の形成まで至るのか懸念を抱いていた。
そこで認知スキルのルーブリックを作成し,平成26年度の評価実習において一部の施設で導入した。使用は限定的であったが,学生は臨床の思考過程を俯瞰することができ,省察や自己を客観視する手掛かりとなっていた。
【方法】
対象は当学院理学療法学科2年生60名のうち,評価実習においてルーブリックを使用した学生5名(男性2名,女性3名,年齢21.4±1.9歳)である。方法は評価実習終了後に半構造化面接法でルーブリックの使用の有無,使用感等について調査した。その後,逐語記録を作成し,語られた質的データから有意味な文書セグメントを抽出し,定性的にコード分類した。
【結果】
面接時間は11.8分±4.4分,発語数は29.6±18.1文であった。文書セグメントは17.2±9.3文節であった。文書セグメントを12のコードに分類した。ルーブリックについてポジティブな意見として「学生の印象」「自分を客観視するツール」「気づきのツール」「共通認識のツール」「実際の使用方法」「学生からの提案」「管理方法」の7つのコードが,ネガティブな意見として「学生の問題」「指導者の理解不足」「ルーブリックの問題」「活用方法の問題」と4つのコードが挙げられた。
【結論】
ルーブリックは,目標達成状況の目安を数段階に分けて記述し,到達度を判断する基準を示すものである。今回はルーブリックの本来の目的である到達度の評価として活用するには至らなかったが,到達目標の明確化による効果が確認できた。ルーブリックが,学生の視点の拡大や新たな視点の獲得あるいは自己を客観視する気づきのツールとして機能する可能性が確認できた。更に学生と指導者との共通認識の形成にも役立つと考えられる。また見学時の使用で指導者との討論が増え,見学の質を向上させる点も期待できる。
課題として,指導者が自分の思考過程を意識化しておらず,試行の可視化に消極的な面が認められた。加えて学生がルーブリックに囚われてしまい,ルーブリックを埋めることが実習の目的になってしまう危険性など活用方法の問題も浮かんだ。今後は指導者に臨床推論の言語化を促し,ルーブリックの活用と指導方略の確立を図りたい。
日本の理学療法教育の歴史は半世紀を過ぎ,臨床実習における教育方法の見直しと新たな教育方法の確立が喫緊の課題となっている。当学院では平成25年度よりクリニカル・クラークシップ(以下,CCS)を一部の実習施設で導入しており,その効果や問題点について検討を重ねている。CCSでは,学生はチェックリストを手掛かりに技術的な指導を繰り返し受けることで臨床経験を多く積み,意欲の向上に繋がっていたが,臨床実習指導者(以下,指導者)は認知的な指導が行き届かず,臨床思考の形成まで至るのか懸念を抱いていた。
そこで認知スキルのルーブリックを作成し,平成26年度の評価実習において一部の施設で導入した。使用は限定的であったが,学生は臨床の思考過程を俯瞰することができ,省察や自己を客観視する手掛かりとなっていた。
【方法】
対象は当学院理学療法学科2年生60名のうち,評価実習においてルーブリックを使用した学生5名(男性2名,女性3名,年齢21.4±1.9歳)である。方法は評価実習終了後に半構造化面接法でルーブリックの使用の有無,使用感等について調査した。その後,逐語記録を作成し,語られた質的データから有意味な文書セグメントを抽出し,定性的にコード分類した。
【結果】
面接時間は11.8分±4.4分,発語数は29.6±18.1文であった。文書セグメントは17.2±9.3文節であった。文書セグメントを12のコードに分類した。ルーブリックについてポジティブな意見として「学生の印象」「自分を客観視するツール」「気づきのツール」「共通認識のツール」「実際の使用方法」「学生からの提案」「管理方法」の7つのコードが,ネガティブな意見として「学生の問題」「指導者の理解不足」「ルーブリックの問題」「活用方法の問題」と4つのコードが挙げられた。
【結論】
ルーブリックは,目標達成状況の目安を数段階に分けて記述し,到達度を判断する基準を示すものである。今回はルーブリックの本来の目的である到達度の評価として活用するには至らなかったが,到達目標の明確化による効果が確認できた。ルーブリックが,学生の視点の拡大や新たな視点の獲得あるいは自己を客観視する気づきのツールとして機能する可能性が確認できた。更に学生と指導者との共通認識の形成にも役立つと考えられる。また見学時の使用で指導者との討論が増え,見学の質を向上させる点も期待できる。
課題として,指導者が自分の思考過程を意識化しておらず,試行の可視化に消極的な面が認められた。加えて学生がルーブリックに囚われてしまい,ルーブリックを埋めることが実習の目的になってしまう危険性など活用方法の問題も浮かんだ。今後は指導者に臨床推論の言語化を促し,ルーブリックの活用と指導方略の確立を図りたい。