第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P05

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-05-4] 当院における臨床評価実習の実践報告

現状の学生レベルに合わせた患者中心の診療参加型実習形態

佐藤亮, 南留美子, 神吉真実, 福田圭祐, 春山慎司, 木野彩夏 (医療法人社団恵生会勝久病院)

Keywords:臨床評価実習, クリニカル・クラークシップ, アンケート調査

【はじめに,目的】

当院は3週間の評価実習について1校の養成校より実習生(PTS)を受け入れている。実施要項には目的として,実際の対象者と人間関係を築きながら検査・測定を実施し,その結果を分析・統合し全体像をまとめ,理学療法プログラム立案へと身に付けた知識・技術の実用化を学び,長期臨床実習へ繋げることとなっている。当院では先行研究の結果より平成25年度より長期臨床実習に基本的評価等に関する認知領域の確認や実技演習を含む2週間のベーシックコース(BC)とクリニカルクラークシップ(CCS)を導入した。また平成26年度より評価実習においてもBCとCCSを導入し,特に評価実習では短期間で患者の全体像をまとめる方法として,1症例についてPTSが選択した検査測定項目のうち一部を学生が実施し,残りの項目は臨床実習教育者(CE)が実施している。今回は当院の評価実習形態に関しアンケート調査にて若干の知見を得たので報告する。


【方法】

対象は平成26年~27年度に当院で評価実習を実施したPTS:3名,養成校:1校。PTSには,①全体像を把握する症例の治療およびADL見学における説明,②選択した検査測定項目のうち一部のみ実施し,それ以外はCEが実施すること,③CCSについて,④評価実習後の学内で感じたこと,⑤長期臨床実習で感じたこと等の設問とし,5段階尺度(5点:非常に良い~1点:良くない)と自由記述とし,養成校には,評価実習後に感じた従来型評価実習を経験したPTSとの成長差について自由記述とした。


【結果】

PTS:①5点:結果の予測ができ落ち着いて検査できた。②4.7点:患者の負担が減り説明してもらえるので理解しやすい。③4.7点:たくさんの経験は長期臨床実習で役に立った。④5点:担当症例のみしか触っていない友人もいてCCSでよかった。⑤4.3点:症例レポートの書き方がわからなかった。養成校:症例報告会において従来型実習を経験したPTSとの差は感じなかった,検査測定に関しては自信に満ちており友達に方法を教える場面もみられた。


【考察】

中川は,CCSの概念を基に各施設で特色ある臨床実習を模索し展開する際の最も重要なこととして,学生に技術項目の単位で診療参加させ,技術指導を糸口に情意および認知の領域に教育を展開することとしている。しかし実習開始時における学生の到達水準も異なっており,特に短期間の評価実習では従来型の方法では患者の負担が大きく患者権利は守れないと思われ,PTSも養成校の目的を達成するために過剰なストレスがかかることが考えられる。今回の結果より,当院の実習形態は患者の負担が軽減でき,患者への直接的な関わりは一部であるがPTSにおいては従来型の評価実習と変わらない成果を得ることが可能であることが示唆された。


【理学療法学研究としての意義】

実習施設から診療参加型実習の具体的な実践報告を紹介することは,養成校ならびに臨床実習施設が臨床実習教育方法を再考する一つの材料になると思われる。