[P-ED-07-2] 理学療法学科学生における認知症高齢者のイメージに関する調査研究
Keywords:認知症, イメージ, 理学療法学科学生
【はじめに,目的】
わが国の認知症患者は,高齢者人口の増加に伴って急速に増大しているため,理学療法士は認知症高齢者と関わりを持つことが多くなってきている。認知症高齢者に対する適切な対応をするために,学生のうちから各人が認知症高齢者について肯定的なイメージ,意識を持つことが重要であると考えられる。学生を対象とした先行研究では,作業療法学科学生や看護学科学生を対象とした研究において,それぞれの認知症高齢者のイメージは明らかにされているものの,理学療法学生の認知症イメージは明らかにされていない。そこで,本研究の目的は,Semantic Differential Method(SD法)を用いて理学療法学生の認知症のイメージの各学年間の違いおよび,臨床実習の前後での変化を明らかにすることとした。
【方法】
対象は理学療法学科の1年(69名),2年(70名),3年(62名),4年(22名)であった。全対象者に対して同時期にアンケート調査を実施した。4年のみ,臨床実習前後でアンケートを実施した。アンケート内容は,関心の有無,同居経験,知識情報源について6問,SD法による認知症のイメージについて17問の全23問で実施した。中野らのSD法におけるイメージスケールを採用した。これは17形容詞対からなり,否定的な極から肯定的な極へ順に1~5点が配点され,3点が中立点とした。この17形容詞対は「尊厳性」「俊敏性」「親密性」「活力生」の4つの因子に分類される。統計学的解析は,形容詞対ごとに学年間比較をするために多重比較(Steel.Dwass法)を行った。4年生は形容詞対ごとに臨床実習前後で比較するために多重比較(Steel.Dwass法)を行った。高齢者の同居経験の有無による違いを比較するためにMann-WhitneyのU検定を行った。
【結果】
学年間における認知症高齢者のイメージを形容詞対ごとに比較したところ,「親密性」に分類される「邪魔をする-手伝ってくれる」「話しにくい-話しやすい」の形容詞対で1年と4年間で有意差が認められた。「活力性」に分類される「悲しい-嬉しい」の形容詞で1年と4年間,2年と4年間で有意差が認められた。「活力性」に分類される「病気がち-元気な」の形容詞で1年と4年間,2年と4年間で有意差が認められた。「活力性」に分類される「弱い-強い」の形容詞で1年と4年,2年と4年,1年と3年,2年と4年間で有意差が認められた。いずれも上級学年の方が肯定的なイメージを有していた。4年の臨床実習前後,属性,生活環境,知識情報源の違いによって有意差を認めた形容詞対はなかった。
【結論】
理学療法学科の学生は,学年が上がるにつれ,認知症高齢者のイメージのうち,「親密性」「活力性」に分類されるイメージが肯定的に変化した。この要因として,臨床実習における実際の経験が考えられた。しかし,4年の臨床実習前後では変化は認められないため,2年時の見学実習や3年時の評価学実習の経験によるものであると考えられた。
わが国の認知症患者は,高齢者人口の増加に伴って急速に増大しているため,理学療法士は認知症高齢者と関わりを持つことが多くなってきている。認知症高齢者に対する適切な対応をするために,学生のうちから各人が認知症高齢者について肯定的なイメージ,意識を持つことが重要であると考えられる。学生を対象とした先行研究では,作業療法学科学生や看護学科学生を対象とした研究において,それぞれの認知症高齢者のイメージは明らかにされているものの,理学療法学生の認知症イメージは明らかにされていない。そこで,本研究の目的は,Semantic Differential Method(SD法)を用いて理学療法学生の認知症のイメージの各学年間の違いおよび,臨床実習の前後での変化を明らかにすることとした。
【方法】
対象は理学療法学科の1年(69名),2年(70名),3年(62名),4年(22名)であった。全対象者に対して同時期にアンケート調査を実施した。4年のみ,臨床実習前後でアンケートを実施した。アンケート内容は,関心の有無,同居経験,知識情報源について6問,SD法による認知症のイメージについて17問の全23問で実施した。中野らのSD法におけるイメージスケールを採用した。これは17形容詞対からなり,否定的な極から肯定的な極へ順に1~5点が配点され,3点が中立点とした。この17形容詞対は「尊厳性」「俊敏性」「親密性」「活力生」の4つの因子に分類される。統計学的解析は,形容詞対ごとに学年間比較をするために多重比較(Steel.Dwass法)を行った。4年生は形容詞対ごとに臨床実習前後で比較するために多重比較(Steel.Dwass法)を行った。高齢者の同居経験の有無による違いを比較するためにMann-WhitneyのU検定を行った。
【結果】
学年間における認知症高齢者のイメージを形容詞対ごとに比較したところ,「親密性」に分類される「邪魔をする-手伝ってくれる」「話しにくい-話しやすい」の形容詞対で1年と4年間で有意差が認められた。「活力性」に分類される「悲しい-嬉しい」の形容詞で1年と4年間,2年と4年間で有意差が認められた。「活力性」に分類される「病気がち-元気な」の形容詞で1年と4年間,2年と4年間で有意差が認められた。「活力性」に分類される「弱い-強い」の形容詞で1年と4年,2年と4年,1年と3年,2年と4年間で有意差が認められた。いずれも上級学年の方が肯定的なイメージを有していた。4年の臨床実習前後,属性,生活環境,知識情報源の違いによって有意差を認めた形容詞対はなかった。
【結論】
理学療法学科の学生は,学年が上がるにつれ,認知症高齢者のイメージのうち,「親密性」「活力性」に分類されるイメージが肯定的に変化した。この要因として,臨床実習における実際の経験が考えられた。しかし,4年の臨床実習前後では変化は認められないため,2年時の見学実習や3年時の評価学実習の経験によるものであると考えられた。