第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P08

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-ED-08-1] 当院リハビリテーション科におけるインシデントレポートの分析

経験年数による傾向と今後の課題

岩瀬浩一1, 横谷浩士1, 岡野寛1, 三浦秀之1, 境優希1, 加瀬菜穂1, 山﨑法子1, 藤本幹雄2 (1.総合病院国保旭中央病院診療技術部リハビリテーション科, 2.総合病院国保旭中央病院診療部リハビリテーション科)

キーワード:インシデントレポート, リスクマネージメント, 経験年数

【はじめに,目的】

当院は989床の急性期総合病院であり,急性期リハビリテーション(以下リハ)のニーズに応えるため数年前から年間10名程度スタッフを増員している。病態の安定していない患者も多く,多岐にわたる疾患の患者に対して可能な限り早期から積極的に介入しているため,リハスタッフのリスクマネージメント能力が求められている。今回,リスクマネージメントの一助とすることを目的に,リハ科に提出されたインシデントレポートを分析したので報告する。

【方法】

2014年4月~2015年3月までの1年間にリハ科に提出されたインシデントレポートについて,危険レベル,発生内容,発生原因,疾患,経験年数とそれぞれの発生割合を調査した。スタッフ数83名(1~4年目38名,5~10年目29名,11年目以上16名)。

【結果】

報告件数は86件であり,レベル1が45件(52%),レベル2が14件(16%),レベル3aが26件(30%),レベルA1が1件(1%)であった。発生内容は皮膚損傷が25件(29%),チューブトラブルが17件(20%),転倒・転落が16件(19%),リハ新患確認漏れが16件(19%),指示確認ミスが9件(10%),患者誤認,クレーム,その他が各1件(1%)であった。発生要因(複数回答含む)は確認を怠ったが82件(95%),知識不足・技術が未熟だったが59件(69%)であった。疾患は脳血管疾患が50件(58%),心大血管疾患が12件(14%),運動器疾患が9件(10%),その他(廃用症候群等)が15件(17%)であった。経験年数は1~4年目が49件(57%),5~10年目が21件(24%),11年目以上が16件(19%)であった。経験年数別人数構成と経験年数別インシデント発生割合は1~4年目が129%,5~10年目が72%,11年目以上が100%であり,皮膚損傷,チューブトラブル,転倒・転落の発生割合では1~4年目が92%,5~10年目が52%,11年目以上が50%であった。

【結論】

経験年数別人数構成と経験年数別インシデント発生割合では1~4年目が最も高く,次いで11年目以上,5~10年目の順であった。皮膚損傷,チューブトラブル,転倒・転落の発生割合をみると1~4年目が最も多いが,5~10年目と11年目以上では同等の割合であった。1~4年目のインシデントの多くが皮膚損傷,チューブトラブル,転倒・転落であり,発生要因は確認不足や知識不足が大半を占め,経験不足によるリスク管理の不徹底が原因と思われる。一方,11年目以上にみられるインシデントの多くはリハ新患確認漏れであり,これは管理業務が不慣れであることやリハ科としての管理体制が整っていないことが原因と思われる。今後の課題として,経験年数の少ないスタッフに対しては教育体制をさらに充実させ,個々のリスクマネージメント能力を高めていく必要性があり,管理業務を担うスタッフに対しては管理者教育研修への参加やリハ科の管理体制を整えていくことが重要であると考えた。