第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P08

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-ED-08-4] リハ特化型デイサービスおよび有料老人ホームの職員に対する危険予知トレーニング(KYT)による安全管理意識の変化について

渡辺朝晴 (医療法人健佑会いちはら病院)

キーワード:安全管理, 危険予知トレーニング, 介護保健施設

【はじめに,目的】

介護施設でのケアには常に危険の可能性があり,様々なパターンの事故が発生しており,事故防止の取り組みは不可欠である。当施設では転倒・転落事故が多くヒヤリハット報告書や安全管理マニュアルの作成を行っているが事故は後を絶たない状況である。

民事上の責任において事故の予見義務と結果回避義務が定められており,「事故を起こさない,未然に防止する」ことは重要であり対策は急務である。その点において,理学療法士が持つ身体機能や生活環境を統合してリスクを評価する能力を,介護現場の他職種に浸透させることは非常に有用と考える。産業現場では早くから安全教育に取り組んでおり,危険感受性の育成の一環として危険予知トレーニング(KYT)が実施されている。昨今では医療現場においても多くの施設が取り入れ,効果が実証されてきている。しかし,介護分野におけるKYTの効果は散見される程度である。今回,当施設職員を対象にKYT実施前後での安全管理意識の変化を質問紙調査によって効果を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は当施設職員であり,安全管理意識に関する質問紙調査(留め置き法,5件法・自由記載混合)をKYT実施前後で実施した。回答が得られた12名(理学療法士1名,看護師3名,介護職5名,生活相談員3名:回収率100%)について解析した。KYTは4ラウンド法に基づいたワークシートを実施し,その後グループワークとしてポスター作成を行い検討会を行った。

【結果】

KYT実施前調査では「ケアスタッフは危険を予測して行動することが必要と思うか?」という質問に対し「非常にそう思う」と回答した職員は83%(10名)であった。実施後では100%となり向上がみられた。「実際にヒヤリハットやアクシデントが発生する前に具体的な防止策をとるべきだと思うか?」という質問に対し「非常にそう思う」と回答した職員は実施前で67%(8名)であったが,実施後は75%(9名)となり向上がみられた。自由記載では「入居者や利用者の生活スタイルやADL状態は事前の情報とは異なることがあるので,事故が起こる前に対策を練る必要があると感じた」などの意見が得られた。

実施後調査の「KYT後,安全に対する意識は高まったと思うか?」という質問に対して,83%(10名)の職員が「非常にそう思う」と回答した。自由記載では「具体的に考えられ良かった」などの意見が得られた。

【結論】

KYT実施前においても安全管理意識は高い状態であった。以前から啓蒙活動や事故報告会を行っていたこともあり,安全管理意識は高い水準となっていたと思われる。加えて,実施後には事故を未然に防ぐ必要性に関する意識の向上を図ることができた。KYTは理学療法士が持つリスク管理能力を介護現場で働く他職種に浸透させる手段として有用であり,今後の施設での事故を根本から減少させることに寄与すると考える。