[P-ED-09-1] 社会人基礎力及び実習中の学生・指導者の取り組みが学生の臨床実習達成度に及ぼす影響について
キーワード:臨床実習, 達成度, 社会人基礎力
【はじめに,目的】
理学療法教育ガイドラインの到達目標は,卒前教育では「理学療法の基本的な知識と技能を習得するとともに自ら学ぶ力を育てる」であり,臨床実習教育では「ある程度の助言・指導のもとに,基本的理学療法を遂行できる」とある。本校では卒業時及び臨床実習でこれらの到達目標を達成させるための取り組みとして,入学時から社会人基礎力の自己診断シートを用いて学生教育を実施している。先行研究によると,渡部ら(2010)は臨床実習において学生の有意義感には,学生の取り組みに関する要因の他に指導者の指導状況が影響していると報告している。仙波らは第45回大会報告にて,臨床実習における主観的達成度には臨床実習指導者との良好な関係が大きな影響を与え,それには社会人基礎力の要素が内包されていると考察している。しかしながら先行研究において学生の臨床実習達成度と社会人基礎力の関係を実際に検討した報告はない。本研究の目的は社会人基礎力及び実習中の学生・指導者の取り組みが学生の臨床実習達成度に及ぼす影響について検討することである。
【方法】
対象は本校理学療法学科3年生32名,学生は臨床実習(以下,実習)前に12項目の社会人基礎力の自己診断シートを記載し,8週間の実習終了後に自記式質問紙調査及び情意・認知・精神運動領域についての自己の振り返りを実施した。自記式質問紙は①実習目標の達成度(以下,実習達成度)②実習満足度③実習理解度④実習時の積極性⑤フィードバック(以下,FB)内容明確化のための働きかけ(以下,FB明確化)⑥FB理解度⑦FB改善度⑧1日の平均FB個数⑨平均FB時間⑩1日の平均課題数⑪実習症例数⑫自宅での平均学習時間⑬平均睡眠時間の13項目から成り,①から⑦は「よくあてはまる」から「全くあてはまらない」の4段階とし,⑧から⑬は実数を集計した。自己の振り返りは情意・認知・精神運動領域についてプラス面・課題面を列挙して各領域の項目数で検討した。統計的手法はSPSS.ver.16.0を使用し,Spearmanの相関行列表で多重共線性を確認した上で,共戦しない項目を独立変数,実習達成度を従属変数として変数増減法に従って重回帰分析を実施した。有意水準はP<0.05とした。
【結果】
項目間の多重共線性は見られなかった。実習達成度に影響を与える因子として重回帰分析で採択された項目は実習理解度,FB明確化,課題情意であった。(R2=0.487,回帰式=1.026+0.441×実習理解度+0.277×FB明確化-0.294×課題情意)
【結論】
実習達成度を高めるには学生の実習理解度の他に,学生自身がFB内容を明確化するための能動的な働きかけが必要であり,3領域の振り返りで情意面の課題を多く挙げる学生ほど実習達成度が低い傾向にあった。しかしR2<0.5であり,今後も検討が必要である。また今回は社会人基礎力が実習達成度の因子とはならず,今後は実施時期や学生の自己評価以外の運用方法も検討する必要性が示唆された。
理学療法教育ガイドラインの到達目標は,卒前教育では「理学療法の基本的な知識と技能を習得するとともに自ら学ぶ力を育てる」であり,臨床実習教育では「ある程度の助言・指導のもとに,基本的理学療法を遂行できる」とある。本校では卒業時及び臨床実習でこれらの到達目標を達成させるための取り組みとして,入学時から社会人基礎力の自己診断シートを用いて学生教育を実施している。先行研究によると,渡部ら(2010)は臨床実習において学生の有意義感には,学生の取り組みに関する要因の他に指導者の指導状況が影響していると報告している。仙波らは第45回大会報告にて,臨床実習における主観的達成度には臨床実習指導者との良好な関係が大きな影響を与え,それには社会人基礎力の要素が内包されていると考察している。しかしながら先行研究において学生の臨床実習達成度と社会人基礎力の関係を実際に検討した報告はない。本研究の目的は社会人基礎力及び実習中の学生・指導者の取り組みが学生の臨床実習達成度に及ぼす影響について検討することである。
【方法】
対象は本校理学療法学科3年生32名,学生は臨床実習(以下,実習)前に12項目の社会人基礎力の自己診断シートを記載し,8週間の実習終了後に自記式質問紙調査及び情意・認知・精神運動領域についての自己の振り返りを実施した。自記式質問紙は①実習目標の達成度(以下,実習達成度)②実習満足度③実習理解度④実習時の積極性⑤フィードバック(以下,FB)内容明確化のための働きかけ(以下,FB明確化)⑥FB理解度⑦FB改善度⑧1日の平均FB個数⑨平均FB時間⑩1日の平均課題数⑪実習症例数⑫自宅での平均学習時間⑬平均睡眠時間の13項目から成り,①から⑦は「よくあてはまる」から「全くあてはまらない」の4段階とし,⑧から⑬は実数を集計した。自己の振り返りは情意・認知・精神運動領域についてプラス面・課題面を列挙して各領域の項目数で検討した。統計的手法はSPSS.ver.16.0を使用し,Spearmanの相関行列表で多重共線性を確認した上で,共戦しない項目を独立変数,実習達成度を従属変数として変数増減法に従って重回帰分析を実施した。有意水準はP<0.05とした。
【結果】
項目間の多重共線性は見られなかった。実習達成度に影響を与える因子として重回帰分析で採択された項目は実習理解度,FB明確化,課題情意であった。(R2=0.487,回帰式=1.026+0.441×実習理解度+0.277×FB明確化-0.294×課題情意)
【結論】
実習達成度を高めるには学生の実習理解度の他に,学生自身がFB内容を明確化するための能動的な働きかけが必要であり,3領域の振り返りで情意面の課題を多く挙げる学生ほど実習達成度が低い傾向にあった。しかしR2<0.5であり,今後も検討が必要である。また今回は社会人基礎力が実習達成度の因子とはならず,今後は実施時期や学生の自己評価以外の運用方法も検討する必要性が示唆された。