第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P11

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-11-4] 本学在校生のインターネットリテラシーに関する実態調査

山際清貴, 小野晋, 佐野純平, 小関博久 (東都リハビリテーション学院)

キーワード:ILAS, インターネットリテラシー, 実態調査

【はじめに,目的】

近年,多くの人々がインターネットによって様々な恩恵を受けている一方で,青少年によるソーシャルメディアにおける不適切な内容の投稿,生活時間の大半をインターネットに費やすといった種々の問題が顕在化しており,青少年のインターネットリテラシー(IL)教育の重要性が高まっている。今回我々は,IL教育を構築する際の一助とする目的で,学生のIL能力を調査したので報告する。

【方法】

対象は,本学昼間部の学生268名とした。方法は,総務省より公表されている「青少年がインターネットを安全に安心して活用するためのリテラシー指標(Internet Literacy Assessment indicator for Students:ILAS)を用い,各パラメータの得点を学年間で比較した。ILASとは,1日の利用時間,利用歴,インターネットモラルに関する啓発経験の有無,適切に利用できているか否かの自覚などの基礎的情報に加え,違法あるいは有害コンテンツに対処できる能力,インターネット上で適切にコミュニケーションできる能力,プライバシー保護や適切なセキュリティ対策ができる能力を指標化することを目的として作成された質問紙である。分析には一元配置分散分析を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

268名中,回答に欠損や不備のない248名のデータを用いた(男性172名,女性76名,平均年齢20.0±1.5歳,有効回答率93.0%)。ILASの正答率は,全体(92.0%),1年生(91.3%),2年生(92.1%),3年生(91.9%),4年生(93.0%)であり,学年間で有意な差は認められなかった(p=0.54)。また,啓発経験のある学生の方が有意に正答率が高かった(p=0.02)。なお,カテゴリー別の正答率は,適切なコミュニケーション(97.2%),適切な商取引(95.6%),適切なプライバシー保護(94.2%),適切なセキュリティ対策(91.9%),料金や時間の浪費への配慮(91.5%),有害情報への対応(89.7%),違法情報への対応(83.6%)だった。インターネットを適切に利用できているか否かの自覚に関する結果は,できている(18.1%),どちらかと言えばできている(43.1%),あまりできていない(33.1%),できていない(5.6%)だった。

【結論】

正答率は,総務省の高校生を対象とした報告(83.1%)と比較すると良好な結果を得ており,その保護者(93.1%)と近似した値を示した。しかし,カテゴリー別では有害情報や違法情報への対応力が低く,特に出会い系サイト規制法や歌詞の著作権に関する知識の乏しさが明らかとなった。また,インターネットを適切に利用できているか否かの自覚に関しても,38.7%の学生が否定的な回答を示した。実際の教育現場においても,提出課題をコピー&ペーストで作成する,重要な伝達事項をLINEで済ませるといった事態が増加している。このような現状を踏まえ,加えて理学療法士は多くの個人情報に触れる機会を持つ職業である以上,専門教育の一環としてIL教育を積極的に導入すべきではなかろうか。