第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P12

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-12-3] 療法士卒後教育体制についての評価

~初期・中期・後期教育における相違とOJTの有用性~

松浦道子1, 吉川創1, 新田勉1, 大塚佳代子1,3,4, 錦見俊雄2 (1.社会医療法人若弘会わかくさ竜間リハビリテーション病院療法部, 2.社会医療法人若弘会わかくさ竜間リハビリテーション病院診療部, 3.大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科, 4.大和大学保健医療学部総合リハビリテーション学科言語聴覚学専攻)

キーワード:卒後教育, OJT, 満足度

【はじめに,目的】

近年,療法士数増加に伴う臨床現場の若年化に対して,初期教育は多くの施設で実施されている。一方,中後期教育体制は確立されていない。当院では,平成24年度からPT・OT・ST(以下,療法士)共通の段階別教育体制を構築した。教育段階を,初期(1~3年目),中期(4~5年目),後期(6年目以上)に分け,課題の設定や研修に加えて,全段階でOJTを重視した教育支援と,他職種および同職種での症例検討会(以下,症例検討)を行っている。OJTの方法としては,初期から中期を中心に全療法士を対象として,同じ患者を同職種の療法士が治療し,アドバイスを行う指導(以下,代行指導)や,同職種の課長が治療場面へ同行してその場で直接行う技術指導(以下,同行指導)と,中期から後期を中心に全療法士を対象として,リハ医師による個別回診と各専門領域の外部講師による個別指導(以下,外部指導)を行っている。今回,その教育体制を評価する目的で,職員を対象に,質問紙法による満足度調査を行ったため,報告する。


【方法】

対象は,当院常勤療法士80名(PT35名,OT24名,ST21名)。調査期間は,平成27年9月1日~9月6日。方法は,教育体制に関するアンケートを配布し,無記名で回収箱にて回収した。質問は4項目(代行指導,同行指導,症例検討,外部指導),回答は5段階の評定尺度法(5点:とても満足している,4点:やや満足している,3点:どちらともいえない,2点:あまり満足していない,1点:全く満足していない)を用いて,満足度を調査した。分析は,各教育段階(初期・中期・後期)別に,項目ごとの平均点を比較検討した。統計処理は一元配置分散分析と多重比較を用いて,有意水準は5%とした。


【結果】

73名の回答を得て,回収率は91.3%。内訳は男性34名,女性39名,平均年齢27.6±5.4歳。教育段階別では,初期40名,中期11名,後期22名であった。

項目ごとの平均点は,代行指導は,初期4.5±0.7,中期4.2±0.8,後期3.5±0.9。後期は中期より低かった。同行指導は,初期4.7±0.6,中期4.5±0.5,後期4.0±0.8。初期は後期より高かった。症例検討は,初期4.3±0.8,中期3.7±0.6,後期3.4±0.8。初期は中期より高く,また後期より高かった。外部指導は,初期3.8±1.0,中期4.0±0.8,後期4.0±0.8。各群間に差はなかった。


【結論】

代行指導は,後期と比べて初期と中期の満足度が高かった。同行指導は,後期と比べて初期の満足度が高かった。症例検討は,初期と比べて中期,後期の満足度が低かった。外部指導は,各段階で差はなかった。結果として,全段階において,治療場面で直接指導するOJTによる,自己スキル向上への満足度が高かった。これら経験年数の差により,OJTの有用性が若干異なることが示唆された。