第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P01

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-HT-01-1] 腹部大動脈瘤人工血管置換術例に対する手術翌日からの歩行練習開始の試み

早期歩行開始と合併症予防の後方視的検討

森田義満1, 吉村和代1, 岡真一郎3, 平田大勝1, 森田由佳4, 光武翼5, 瀬口龍太1, 西田佑児1, 金子秀雄3 (1.高木病院, 2.国際医療福祉大学大学院, 3.国際医療福祉大学福岡保健医療学部, 4.佐賀大学アグリ創生教育研究センター, 5.白石共立病院)

キーワード:腹部大動脈瘤人工血管置換術, 術後合併症予防, 早期歩行

【はじめに,目的】腹部大動脈瘤(AAA)人工血管置換術は,近年Fast Track Surgeryの有効性が提唱されており,術後早期から理学療法介入がなされる(Tatsunishi, et al., 2012)。ガイドライン(2012)では,リハビリテーション(リハ)プログラムが実例として挙げられているが,クリニカルパスの提示には至っておらず,本邦における理学療法のエビデンスは少ない。当院では,2011年より心臓血管外科の立ち上げに伴いリハプログラムを独自に作成し実施している。当院のリハプログラムは,歩行練習開始を手術翌日(術後1日目)としており,術後2日目とするガイドラインのリハプログラム例より1日早い。今回,当院におけるAAA人工血管置換術例に対する手術翌日からの歩行練習開始が,術後歩行自立日数,術後経口摂取開始日数,術後在院日数および合併症に及ぼす影響について後方視的に検討した。

【方法】対象者は,2011年7月から2015年7月の期間に当院心臓血管外科において,全身麻酔で正中開腹下にAAA人工血管置換術を施行された18例のうち,緊急手術2例,術前に著しい運動障害1例(ギランバレー症候群)を除外した15例(男性14例,女性1例,74.0±7.3歳)とした。当院のリハプログラムは,術前理学療法としてオリエンテーションおよび歩行能力評価を行い,術後理学療法として手術翌日より歩行車歩行を開始,術後3日目で70~140m歩行,術後6~7日目で490m歩行,術後8日目エルゴメータ開始で構成した。あわせて階段昇降,入浴またぎ動作,床上動作の評価を行い,退院に向けた運動および生活指導を行った。調査項目は,術後歩行練習開始日数,術後経口摂取開始日数,術後歩行自立日数,術後在院日数および合併症とした。当院の成績と先行研究を比較し,文献的考察を行った。

【結果】術後理学療法は,全例でICUにて手術翌日より実施可能であった。出血等の有害事象は認めなかった。術後歩行練習開始は1.1±0.4日で,2例(熱発1例,疼痛1例)は手術翌日を立位足踏み練習で終了したが,術後2日目には歩行練習可能であった。術後歩行自立日数は,3.9±1.2日であった。全例が,術後5日以内に歩行自立となった。術後経口摂取開始日数は2.9±2.6日,術後在院日数は16.1±5.4日であった。合併症は麻痺性イレウス1例で,術後経口摂取開始日数11日,術後在院日数25日であった。合併症例を除く14例は,術後経口摂取開始日数2.3±1.4日,術後在院日数15.5±5.0日であった。14例の術後は,順調に経過し術後在院日数10日程度で退院可能であったが,半数以上の症例で社会的要因から退院遅延がみられた。

【結論】当院における術後歩行自立日数,術後経口摂取開始日数および合併症は,先行研究と比較して良好な成績であった。AAA人工血管置換術例に対する手術翌日からの歩行練習開始は,歩行自立日数の短縮および合併症の予防に寄与し,早期自宅復帰に貢献する可能性がある。