[P-HT-01-3] 後期高齢者の運動機能の回復について 心臓血管外科術後に着目して
Keywords:後期高齢者, 運動機能, 心臓血管外科術後
【はじめに,目的】超高齢化社会を迎えた現在,心臓血管外科手術を受ける患者も高齢化している。ヒトは加齢によって筋力などの身体機能が低下する。本研究では,後期高齢者と言われる75歳以上の患者と75歳未満の患者の運動機能に着目し,心臓血管外科術前と術後の回復に差異が生じるかを検討することを目的とした。
【方法】2014年5月から2015年6月までに当院心臓血管外科にて心臓血管外科手術(冠動脈バイパス術,弁膜症手術,大血管手術,それらの合併手術,また,これらに分類されない開心術)を受けられ,周術期ICUに入室した患者360名を対象とした(死亡例,術中,術後合併症例は除外した)。そこから,術前,術後ともにShort Physical Performance Battery(以下SPPB)が施行できた患者83名を本研究の対象とした(75歳未満群:n=51,75歳以上群:n=32)。SPPBは閉脚,セミタンデム,タンデム立位保持時間,5 chair stand(以下5cs),4m歩行時間を測定する検査である。4m歩行は通常歩行速度と最大歩行速度の2通りを行った。また,握力(グリップ-D,竹井機器工業株式会社)と膝伸展筋力(Isoforce GT-330,オージー技研株式会社)も測定した。測定した膝伸展筋力と体重からBody Weight Index(BWI)を算出した。術前身体機能をt検定およびMann-Whitney U検定を用いて比較し,各群の術前後の身体機能を対応のあるt検定およびWilcoxon検定にて比較検討した。
【結果】75歳以上群は,術前の5cs時間(8.9±2.2 vs. 7.5±3.0秒,P<0.05)が有意に高値であり,最大歩行速度(1.4±0.4 vs. 1.6±0.4 m/s,P<0.05)と握力(25.6±8.6 vs. 30.4±9.2 kg,P<0.05),BWI(58.2±4.2 vs. 71.6±3.7%,P<0.05)は有意に低値を示した。また,前後比較においては,両群ともに最大歩行速度(75歳未満群:1.5±0.4 vs. 1.6±0.4 m/s,P<0.05,75歳以上群:1.3±0.4 vs. 1.4±0.4 m/s,P<0.05)と握力(75歳未満群:27.1±8.9 vs. 30.4±9.2 kg,P<0.01,75歳以上群:24.2±8.8 vs. 25.6±8.6 kg,P<0.01)が有意に低下していたが,その他の機能では有意差は認められなかった。在院日数に関して有意差は認められなかった。術前のBarthel Indexを見ると,全例ADL自立レベルであった。
【結論】加齢に伴い身体機能の低下が起こるため,本研究でも75歳以上群は75歳未満群に比較して運動機能は低下していたと考える。しかし,高齢においても回復に時間を要したり,術前ADLへの回復が困難ということは本研究の対象患者では確認されなかった。要因としては,術前のADLが影響していると考える。一方で,両群ともに最大歩行速度と握力が低下しているため,退院後のフォローアップ等が必要になると考える。今後はさらにデータを収集し,検討を重ねていきたいと考える。
【方法】2014年5月から2015年6月までに当院心臓血管外科にて心臓血管外科手術(冠動脈バイパス術,弁膜症手術,大血管手術,それらの合併手術,また,これらに分類されない開心術)を受けられ,周術期ICUに入室した患者360名を対象とした(死亡例,術中,術後合併症例は除外した)。そこから,術前,術後ともにShort Physical Performance Battery(以下SPPB)が施行できた患者83名を本研究の対象とした(75歳未満群:n=51,75歳以上群:n=32)。SPPBは閉脚,セミタンデム,タンデム立位保持時間,5 chair stand(以下5cs),4m歩行時間を測定する検査である。4m歩行は通常歩行速度と最大歩行速度の2通りを行った。また,握力(グリップ-D,竹井機器工業株式会社)と膝伸展筋力(Isoforce GT-330,オージー技研株式会社)も測定した。測定した膝伸展筋力と体重からBody Weight Index(BWI)を算出した。術前身体機能をt検定およびMann-Whitney U検定を用いて比較し,各群の術前後の身体機能を対応のあるt検定およびWilcoxon検定にて比較検討した。
【結果】75歳以上群は,術前の5cs時間(8.9±2.2 vs. 7.5±3.0秒,P<0.05)が有意に高値であり,最大歩行速度(1.4±0.4 vs. 1.6±0.4 m/s,P<0.05)と握力(25.6±8.6 vs. 30.4±9.2 kg,P<0.05),BWI(58.2±4.2 vs. 71.6±3.7%,P<0.05)は有意に低値を示した。また,前後比較においては,両群ともに最大歩行速度(75歳未満群:1.5±0.4 vs. 1.6±0.4 m/s,P<0.05,75歳以上群:1.3±0.4 vs. 1.4±0.4 m/s,P<0.05)と握力(75歳未満群:27.1±8.9 vs. 30.4±9.2 kg,P<0.01,75歳以上群:24.2±8.8 vs. 25.6±8.6 kg,P<0.01)が有意に低下していたが,その他の機能では有意差は認められなかった。在院日数に関して有意差は認められなかった。術前のBarthel Indexを見ると,全例ADL自立レベルであった。
【結論】加齢に伴い身体機能の低下が起こるため,本研究でも75歳以上群は75歳未満群に比較して運動機能は低下していたと考える。しかし,高齢においても回復に時間を要したり,術前ADLへの回復が困難ということは本研究の対象患者では確認されなかった。要因としては,術前のADLが影響していると考える。一方で,両群ともに最大歩行速度と握力が低下しているため,退院後のフォローアップ等が必要になると考える。今後はさらにデータを収集し,検討を重ねていきたいと考える。